黄色い帽子
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3部分:第三章
第三章
「この国は自由がない」
「しかもあの戦争で悪事を重ねた」
「悪はこの国だったんだ」
「この国が何かを言う資格があるのか」
露骨にだ。異論への脅しもしてきた。
「あの国は違う」
「寛容なあのイデオロギーには何の問題もない」
「人民は正義だ」
「絶対の正義だ」
こう言ってだ。あくまで韜晦に務めてだ。そのイデオロギーへの疑念を打ち消したのだった。そうしてそのまま進んでいくのだった。
だが、だ。やはり世界は事実を見せていく。それこそ三十年はこうした知識人達の無意味な韜晦、しかも有害極まるそれは続いた。
だが、だ。その大国自体がだった。
その窮乏とだ。経済破綻が明らかになった。それからは早かった。
国家自体が解体していく。それと共にだ。
イデオロギーの欠陥自体がだ。その大国に認められたのだ。
これに対してだ。多くの者がわかった。
「人民が主役とか嘘だったんだな」
「党員である官僚や秘密警察が支配する国か」
「言論の自由は一切ない」
「強制収容所の国か」
「言論弾圧に異民族の弾圧」
「誰もが平和で幸せな国じゃなかった」
「しかもその平和も」
『平和勢力』という看板にもだ。バツがつけられた。
「必要とあらば戦争をしてたじゃないか」
「ああ、野心から他国に攻め込んでたな」
「あの砂漠の国で失敗してたな」
「何だ?学者連中の言っていたことは全部嘘だったのか」
「奴等は嘘吐きだったのかよ」
「新聞もテレビも」
「全部嘘を言っていたのか」
この国のメディアや知識人達の実態もここでわかったのだった。
そうしてだ。大国の崩壊は実際に起こりだ。黄色い帽子は。
脱ぎ捨てられた。そうして黄色い旗とと共に燃やされた。これで全てははっきりした。
大国実態もわかりだ。止めになった。これでこのイデオロギーは終わったとだ。殆んどの者が確信した。いや、全てと言ってよかった。
だが、だ。大国を支持、いや媚び諂い賛美してあわよくば彼等のお零れを狙っていた者達は生き残った。その彼等はというと。
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