束縛の口紅
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第一章
束縛の口紅
久木友香梨は学校の先輩の藤木由梨と久しぶりに会い一緒に喫茶店でお互いの話をしている時にこうしたことを聞かれた。
「もう友香梨ちゃん結婚してるわよね」
「はい」
友香梨は由梨の優しげな小さい垂れ目が印象的な顔を見つつ答えた、黒い髪をウェーブさせていて肩のところで切り揃えている。
「もう三年です」
「そう、結構経つわね」
「そうですね」
こう由梨に答えた、そのアーモンド型の目が目立つ顔で。黒髪を奇麗に伸ばしていて大きめの口に紅のルージュを塗っている。二人共胸が目立つが由梨の背が一五二に対して友香梨は一六〇だ。友香梨の方が背は高い。
そして由梨の声は澄んでいて気品があり友香梨の声には艷がある。その艷のある声でこう由梨に答えたのだ。
「ただ、何か」
「何か?」
「三年経ちますと」
結婚して、というのだ。
「少し気になることがありまして」
「何かしら」
「旦那が、です」
ここで小声になる友香梨だった。無意識のうちに。
「そろそろ浮気とかを」
「ああ、男の人はね」
「女の人よりもですよね」
「そうしたことがね」
「多いですよね」
「うちの旦那もね」
ここで苦笑いになって言う由梨だった。
「浮気自体はないけれど」
「それでもですか」
「結構アイドルの娘とか好きで」
「そっちの娘達がテレビとかに出ると」
「コンサートにも行ってるのよ」
テレビを観ての応援どころかというのだ。
「そこまで入れ込んでるから」
「そうなんですか」
「浮気じゃないからいいけれど」
「それでもですよね」
「ほら、結婚してもね」
それでもとも言う由梨だった。
「女っていつも自分を見て欲しいじゃない」
「そうですよね、私も」
「だからそれがね」
由梨は紅茶の白いカップを右手に持ちつつ苦笑いのまま友香梨に言う。それがどうにもという口調になって。
「嫌なのよ」
「浮気でなくても」
「アイドルの応援位は許容範囲だけれどね」
そrでもとだ、まだ言う由梨だった。
「何かね」
「本当にそこが、ですね」
「どうしたものかってなるわよ」
「じゃあ私のところも」
「三年経つとね」
「そろそろ、ですね」
「うちの旦那も三年経ってからだったのよ」
まさにその三年から、というのだ。
「結婚するまでは我慢していて三年そうだったらしいけれど」
「アイドルの応援を、ですか」
「コンサートも出て写真集やDVDも買って」
「水着の」
写真集、DVDと聞いて言う友香梨だった。
「そちらも」
「そうなのよ、私と寝る時もね」
その時に何をするかは言うまでもなかった。
「何かその前に写真集とか観てる感じだから」
「じゃあ先輩とそのアイドルの娘を」
「重ねてる感じよ」
「それは嫌ですね」
「そうでしょ、だから友香梨ちゃんもね」
結婚三年目に入ったからこそ、というのだ。
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