カラミティ=ジェーン
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7部分:第七章
第七章
「盗賊だのゴロツキだのもいなくなって」
「もう昔の無法な場所じゃなくなったな」
「それでジェーンが死んだか」
「何かが終わったよな」
「そうだな。何かがな」
「終わったな」
このことがだ。自然に噛み締められていった。
そしてだ。あらためてだった。彼等は話すのだった。
「ジェーンの葬式。出るか」
「ああ、そうするか」
「あの人に別れを言いに行くか」
「そうするか」
「折角だからな」
自然とだ。そうした考えに至る彼等だった。そうしてだった。
彼等も葬式に出るのだった。その参列者は何とだ。
数百人に上った。それを見てだ。
参列者達はそれぞれだ。驚きを隠せずに話すのだった。
「こんなに来るか?」
「何だよ、将軍か知事でも死んだのかよ」
「カラミティ=ジェーンが死んだだけだろ」
「それでこんなに人が集まるのかよ」
「凄いな、こりゃ」
こうだ。誰もが驚きを隠せなかった。
しかしだ。それと同時にだ。彼等は納得した表情も見せてだ。こんなことも言うのだった。
「けれどな」
「ああ、そうだな」
「それでもな」
「何か。当然って思えるよな」
「全くだな」
こんな話もするのだった。
「あの人が死んだからな」
「カラミティ=ジェーンな」
「生きている時はとんでもない女だって思ったりしたけれどな」
「いざ。いなくなるとな」
「寂しいな」
こうだ。彼等はそれぞれ言うのだった。
「あの人がいなくなるとな」
「もう。二度と会えないと思うとな」
「酒場であの何処まで法螺か何処まで本当かわからない話を聞けないと思うとな」
「ちょっとな」
「寂しいよな」
「いなくなるって思うとな」
寂寥をだ。感じずにはいられなかった。
それでだ。彼等はだ。
ジェーンの棺を見てだ。こんなことも言った。
「とんでもない時のとんでもない場所でな」
「とんでもない生き方してた人だけれどな」
「悪い人じゃなかったな」
「ああ、あれで義理とか人情があってな」
「そんな人だったからな」
「いなくなって寂しいよ」
またこう言われるのだった。
「今日でお別れか」
「もう二度と会えないんだな」
「これで。終わりだな」
「本当にな」
ジェーンの棺が送られていく。穴の中にだ。
誰もがその棺を見送る。そして。
穴の中に入れられた棺をだ。最後はだ。
一人の男が閉めた。彼はそのうえで言うのだった。
「あの時。助けてくれて有り難う」
ジェーンにだ。こう告げたのだ。そのうえで棺を閉めたのだ。
彼は後にだ。こう人に話すのだった。
「俺はあの人に助けてもらったんだよ」
「カラミティ=ジェーンにか」
「助けてもらったのか」
「俺が子供の頃の話だよ」
話はだ。その頃に遡るというのだ。
それを話してだ。彼はさらに言うのである。
「俺のいる村はな。天然痘が流行ってな」
「ああ、そういえば御前の顔な」
「それだよな」
見ればだ。あばただらけである。天然痘にかかった後でできるものだ。彼の顔はそれで一杯だった。皆その顔を見て彼に話すのだった。
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