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エターナルトラベラー

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第二十八話

最近、不破士郎がしばらくこの海鳴市で仕事があり滞在すると、我が家を訪ねて挨拶をしにやって来た。

生まれてから3年ちょっと、初めて見る不破親子。

その日は挨拶だけで帰ったのだが、母さんが士郎さんに俺に一度だけでも訓練を付けてくれるように頼み、仕事が終り暇を見て俺に稽古を付けてくれるそうだ。

しかしぶっちゃけ思うに今の母さんの方が士郎さんよりも強いと思うよ?と母さんに言ったら。

「私が教えれるのは『御神正統』だけ。どうせならば士郎さんから『御神不破』も盗んじゃいなさい」

との事…

母さん自身は裏である不破流を詳しくは知らないとの事。

それならば仕方ないと思い、俺はそれを承諾するのだった。


さて、そうした日々を過ごしていたのだが、最近不破士郎が高町桃子と結婚するらしいと言う情報が母親からもたらされた。

ああそうそう、御神不破流の稽古は母さんが士郎さんに頼んで一回全部技を見せてもらったので総てコピーしました。

コピーした技を母さんと久遠とで反復練習して段々物にしていっている最中だ。

そんな話はさて置き。結婚式は高町家の親族だけで行ってもらい、俺達親子は出席を拒否する方向で話がまとまった。

結婚式にはいい思い出が無い為に出席しない事に決めたらしい。

しかし取り合えずは良かった。

俺がここに居るというバタフライ効果でもしかしたら結婚フラグが発生しないことも有り得た。

そういった場合「高町なのは」は生まれない。

いや、すでに原作とはかけ離れているのだ。無事に妊娠したとしてもそれが原作の「高町なのは」と同一人物なのかどうかなど誰にも保障できない。

しかし歴史の修正力なのか士郎さんたちは原作通りこの海鳴に居を構える事になった。

更に新居はどういう訳か丁度家の隣りに空いていた古民家を改装して移住するらしい。

士郎さんも「不破」の苗字は捨て「高町」になるとの事。

このまま行けば俺は原作キャラの幼馴染と言うテンプレな状況に…

後は無事に「高町なのは」さえ生まれてくれれば…

俺の御神流の修行に関しては、士郎さんも自分が師事すると申し出てくれたが俺は母さんから習うと言い張り丁寧に断った。

いやぶっちゃけ念を使わないのならば母さんよりも士郎さんの方が強いのだけれども、念で強化された状態では確実に母さんの方が数倍上だ、それに俺達の修行は裏技(影分身や写輪眼など)を使いまくっているので見られるわけにも行かないのも理由だ。

そんな日々が過ぎて俺が生まれて5年経った3月の事。

妊娠していた桃子さんが女児を出産した。

新しく生まれたその子供の名前は「高町なのは」と言うらしい。

どうやら無事に主人公は誕生したようだ。

それからしばらくして、士郎さんが護衛の仕事中に大怪我をして意識不明の重体で病院に運び込まれるといった事件が発生する。

桃子さんは未だ軌道に乗っていない始めたばかりの喫茶店で手一杯。

美由希さんは入院中の士郎さんの看病。

恭也さんは士郎さんが倒れた事で暴走、家族のことなど考えずに不破流の稽古に打ち込むようになり、結果母さんが提案して日中は家でなのはを預かる事になりました。

余り主人公と接触したくは無かったんですけどね…遠い血縁だし、お隣な時点で無理な話だったのかもしれません。

母さんは普通の子供を育てた事が無かった(俺は最初から教えられずともこなしてしまっていた)のでそれこそ実の娘のように可愛がっていた。

…いつの間にか家になのはの部屋が出来ているという現実。

まあ、部屋は余ってるからいいんだけれどね。

言葉を覚え始めると何処で覚えたのかなのはは俺の母さんのことを「まーま」俺のことを「にーに」と呼ぶようになった。

これに慌てた俺達は何とか修正しようと頑張ったのだけれど…結局治りませんでした…

大きくなった今でも内の母さんの事を「ママ」と呼び、桃子さんの事を「お母さん」と呼び分けています。

なのはにとっては「ママ」は内の母さんのあだ名みたいなもののようです。

小さい頃から言いなれてしまって変更は出来ないようだ。

さらに単純に「お兄ちゃん」と言うと恭也さんのことではなくて俺の事を指す言葉だったりもします。

恭也さんの事は「恭お兄ちゃん」などと呼んでいる所を見るとかなり原作とのズレが…



後で解ったことだが日中はほぼ内に預けられていて実の家族よりも俺達家族と一緒にいる時間が長かったなのはは物心が付くまで自分の家は夜になると朝まで何故か預けられてしまって俺達から離されてしまう寂しい場所と言う認識だったらしい。

まあ実際今でも週に何回か家に泊まっていくほどだ。

さて、子供は親の背中を見て育つと言うけれど小さい頃から俺達家族と一緒にいたなのははと言うと…

いつの間にか俺と母さんの修行に混じって竹刀を振っていましたorz

赤ちゃんの時など意識は無いだろうと思い影分身などを平気で使っていた母さん。

まあ、俺や久遠もそれに釣られて少し緩んでいたのかもしれない所もあった。

久遠もなのはの前で平気で人化と獣化を繰り返してたしね。

なのはの中では狐は人に化ける事が出来る生き物で固定されてしまったようだ。

幼稚園とかで将来何になりたいの?という先生の質問に大真面目に「にんじゃっ!」と答えた豪の者だ…

先生達は女の子らしくない夢に「あらあらっ」と若干困惑しながらもスルーしていたのだけれど、うん、アレは絶対マジだ…

今度忍者は本当はいないと言い聞かせなければ…

って問題はそこじゃなくて、剣術なんて覚えさせて未来の魔法技術習得に支障がでないか!?



さて、なのはが無事に生まれてから3年と少し。

変わり映えの無い日々を送っていた俺達に一本の訃報が届く。

御神一族の中で俺達と一緒に生き残った不破大地さんが交通事故で亡くなってしまったと言う連絡を士郎さん経由で受けた。

あのテロ以来会ったことは無い人に俺自身は何の感慨も浮かばなかったが、問題は大地さんの子供。

死因は交通事故だったらしいが、夫婦で出かけていた所トラックに突っ込まれたようだった。

日中の出来事だったので保育園に預けられていた女の子が一人だけになってしまった。

しかし、母方の親類縁者には連絡が取れず、大地さんの両親などはこの前のテロでこの世を去っている。

そこに来てようやく不破家つながりで士郎さんに連絡があり大地さんの訃報を知る事となった。


その話を聞いた母さんが士郎さんと話し合い、自分が引き取る事になった。

年齢はなのはと一緒らしい。


そして顔合わせの日。

つまり女の子が家に来る日。

母さんが連れてきた女の子は…

「ソラ!?」

「アオ!」

一直線に俺へと抱きついてきた女の子を抱きとめる。

「ソラなのか?」

「うん」

ソラは泣きながら俺の胸にうずくまる。

「よかったよ。無事に出会えた」

「うん」

それから俺達はしばらくの間抱き合っていた。

そして空気を読んだのか声を出さずに待機していたルナをソラに手渡す。

「ルナ!」

『お久しぶりです。マスター』

「気が付いて辺りを探しても見つからなかったから凄く心配したよ」

自分の相棒が手元に帰ってきた事に安心するソラ。

「あの~、あーちゃん。説明して欲しいんだけど」

「くぅん」

母さんと久遠が状況が掴めないとばかりに固まってしまっていた。


どうやら不破大地さんの子供と言うのがソラだったらしい。

今生の名前を『不破(ふわ) 穹(そら)』と言うそうだ。


困惑していた母さん達に事情を説明。

母さんには以前に話してあった俺の探し人だと告げた。

すこし戸惑っていたけれど母さんはソラを受け入れてくれた。

なのははまだ小さく、行き成り現れた同年代の存在に最初こそ戸惑っていたが、数日もしたら何事も無かったかのように馴染んでいた。

子供の適応能力はすごい。



その後はわりと平和な時間が流れる。

とは言っても御神流の修行にソラも加わる事になり賑やかさが増したりもしたが。

そうそう。

やはりと言うか何と言うか、ソラにもリンカーコアがある模様。

魔力量は俺と同じか少し多いくらい。

それにより魔導師としての訓練もなのはに見つからない様にしたりもした。

その途中、日本刀で有ったルナに大幅な改修が施される事となる。

やはり使い慣れた斧の形体が一番体に馴染むらしい。

なのでソラの言葉で俺がルナを改造。

以前の斧に加え、長剣、槍と二刀、4つの形態変化をつけたデバイスに改造を施した。

それと父親のラボ内で面白いものを発見。

身に着けるだけで魔力負荷が掛けられる特製のリストバンド。

資料によると身に着けていると日常的動作に魔力を消費するように付加が掛けられ、その結果魔力量が上昇するらしい。

なるほどなのはもやっていた魔力負荷の補助具か。

これはいい。

今からつければ十年後はニアSには届くかもしれない。


さて、この世界に生れ落ちてなるべく主人公サイドに関わらないようにしようと思っていたけれど…俺が生まれたことによるバタフライ効果が凄まじい…

なのはがいつの間にか「念」を習得していましたorz

なのはの目の前で、どうせ見えないのだからと念を使った摸擬戦などをやっていたのだが、念と念がぶつかり合い散らされた空間に長く居たのが原因か、または他の事が原因か、いつの間にか自然となのはの精孔が開いちゃってました…

なのはが自分の両手を自分の目の前に出して不思議そうな顔で、

「このピンクのもやもやしたのなあに?」

なんて聞いてきたときは正直対応に困ったが、母さんが普通に、

「凄いわなのはちゃん!」

と言って嬉々として念を教えてました…

さらに順調にレベルアップする剣技…

原作の運動神経が切れている「高町なのは」は既にいません…

やはりいずれは魔王様になるお方、確実に不破の血ですね、わかります。

と言うか…俺が母さんに最初に教えた忍術が影分身だった事が災いしたのか一応あれは禁術なのですが…全く無視して、一番最初になのはに覚えこませてしまった母さん。

四苦八苦しながらもちゃんと影分身を覚えたなのはが凄いのか、解りやすいように噛み砕いて教えた母さんが凄いのか…

いや…便利なんだよ?凄く。体力のアップには向かないけれど技術や知識のレベルアップにはね。


そう言えば、ソラって最初の人生で結局小学校には通えず終いだったんだよな。

その所為か、実際生きた年月ならとっくに三十路を超えているのだが、何処か嬉しそうだった。


さて問題の魔法についてだが…

結果から言うと隠し通せませんでした…

そう、アレはなのはが小学校に上がったころの事。

あ、ついでに言っておくとソラもなのはと一緒に聖祥に通っています。

その日、久遠と母さんが珍しく両方家にいなかった日。

俺とソラは買い物に出ていて少し家を空けいた俺が帰ってきて見たのは手に魔法の杖を持ちバリアジャケットに身を纏ったなのは。

はい?どゆこと?

「なのは!?」

「あ、お兄ちゃんお帰り」

「あ、うん」

ってそうじゃなくて!

「ど…どうしたの?それ」

「えっとね…」

少し眉根を下げて言いよどむなのは。

「あの…その」

と、しどろもどろになっている所に別の所から声がかかった。

『すみません、説明は私が』

と、なのはのもっている杖のクリスタルコアの部分がピコピコ光ながら会話に混ざってくる。

「えっと?君は?」

『レイジングハートと申します』

な!?なんだってーーーーー!?

俺はその展開に数秒意識が涅槃に旅立つ寸前まで逝ってしまった。

何とか戻ってきたけれど…

さて、レイジングハートの話をまとめると、自分は俺の父さんに作られて、出荷される寸前に父さんがルナの製作に没頭してしまったために出荷されずに忘れされれたまま父さんは死亡、そのままずっとラボでホコリを被っていたらしい。

まじっすか!?

まあラボは生前の父親が散らかし放題で物が乱雑に積み重なっているような所だ、俺もデバイスの理論書などを引っ張り出してはその辺に積んだりして整理整頓などとは無縁の状態だったからね…出荷先はスクライア一族だったようだ。

って!レイジングハート造ったのって父さんだったの!?

本来ならこれがめぐりめぐってユーノの所に行きなのはの手に渡ったと?

製作されてから使われる事も無く十数年、このまま埋もれてしまう事に恐怖を抱いたレイジングハートは初期起動用にと込められていた微々たる魔力を最後の望みと誰かとコンタクトを取ろうとしたようだ。

普段は決して立ち入り禁止と書いてある部屋(ラボ)へは侵入しないなのはも何かもの悲しい声に惹かれるように入室しレイジングハートを発見、自分は魔導師の杖で使ってくれる相棒が欲しいとリンカーコアを持っているなのはに懇願、試しにセットアップした所に俺が帰宅して今に至る。

まあ、まとめるとそんな感じ。

『お願いします私をなのはの杖にして下さい。杖として生まれたからにはちゃんと魔導師に使って欲しいのです』

「お兄ちゃん、わたしからもお願い。レイジングハートを取り上げないで」

いや取り上げるも何も元からレイジングハートはなのなのデバイスな訳で…







その日の夜、俺は部屋で黙考していた。

どうしようかね、なのはが別物になって久しい。

「アオ、入るよ」

「ソラか」

とことこと俺の部屋に入り俺のベッドへと腰掛ける。

「考え事?」

「まあね」

「また原作が~とか?」

「ソラ?」

「わかるよ。ずっと一緒に居たんだもの。アオの考えている事くらい」

いつもそばに居たソラにはお見通しだったようだ。

「私は自分の行動に責任がもてるのならば、この世界で何をしたって良いと思っている。じゃないと私たちはここに生きていない事になっちゃう」

「そうなのかな?」

「アオは難しく考えすぎ。もっと単純に生きても良いと思う」

それだけ言うとソラは俺の部屋を出て行った。

確かに俺は今までトリステインのこともあってか原作に拘りすぎていたのかもしれない。

ソラの言葉は俺の胸に大きく響いた。
 
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