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ドリトル先生と二本尻尾の猫

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第九幕その二

「他の作品も読んできたけれど」
「その羅生門も」
「一回読んだけれどね」
「また読むのね」
「そう、一回読んだだけじゃわからないところもあるから」
 それで、というのです。
「また読むよ」
「成程ね、先生は生まれついての学者ね」
「学者かな、僕は」
「本物のね」
「そう言ってくれると嬉しいよ」 
 その本を手にしてです、先生はお静さんにお礼を言いました。
「僕もね」
「だって日本はね」
 お静さんは曇ったお顔で言いました。
「本当の意味での学者さんが少ないから」
「僕もそのことはね」
「わかるわね」
「どうしてか日本の学者さんはね」
「あまり質がよくないでしょ」
「酷い人が多いね」
 先生はお静さんにもこのことを言いました。
「あんまりにもね」
「前の戦争が終わってからね」
 それこそというのです。
「急に悪くなったのよ」
「僕もそう思うよ」
「嘘を言っても何も思わない人がね」
「多いね」
「日本の困ったところよ」
 非常にとも言うのです、そうしたお話をしてです。
 そうしてでした、先生達はそうしたことをお話してです。
 そのうえで、です。ご自身の席に座ってこんなことを言いました。
「けれどこの人はね」
「芥川さんね」
「そうした人達とは違って」
「誠実なのよね」
「うん、心にもない嘘を言い回ったりしないね」
 今の日本の学者の人達の様に、というのです。
「自分の良心に忠実だよ」
「そこがその人のいいところなのよ」
「最後の方は可哀想だけれどね」
「自殺したからね」
 お静さんもそのことは悲しそうに言いました。
「この人も」
「うん、自殺した作家さんは他にもいるね」
 先生はお静さんにこうもお話しました。
「日本には」
「そう、太宰治さんとかね」
「その人と芥川さんが似てるかな」
 ここでこう言った先生でした。
「そう思ったけれど」
「自殺したから?」
「そのこともあるけれど」 
 先生は首を少し傾げさせつつ述べました。
「作風、いや作風の変化の流れとかが一脈通じるというか」
「そんな風に思うのね、先生は」
「そう思うけれど」
「そうね、それはね」
「お静さんもそう思うかな」
「二人共お顔もいいし」
 芥川さんも太宰さんもというのです。
「写真見たら美男子でしょ」
「あっ、二人共ね」
「芥川さんも太宰さんもね」
「確かに整った顔立ちをしてるね」
「私はまずお二人のお顔に惚れたのよ」
 そうなったというのです。
「奇麗だって思って」
「どちらの人もお静さん好みなんだ」
「かなりね、今で言うとイケメンね」
 現代の言葉も出すお静さんでした。
「二人共ね」
「ふうん、お静さんって結構」
「そうよね」
 動物の皆も少しのろけた感じになっているおしずさんを見て言いました。 
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