ドリトル先生と二本尻尾の猫
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第九幕その一
第九幕 日笠さんとは
お静さんは動きはじめました、ですが。
二日程静かでした、それで。
ジップが研究室で先生にこう言いました。
「何かね」
「うん、お静さんだね」
「どうなったのかな」
こう尋ねるのでした。
「今のところは」
「多分ね」
「多分?」
「今はまだね」
「動いていないのかな」
「いや、囁いていてもね」
それでもというのです。
「お二人がね」
「まだ、なんだ」
「動いていないのだと思うよ」
先生はこう読んでいるのでした。
「とりあえずはね」
「そうなんだ」
「うん、囁いてもね」
「すぐに動くかっていうと」
「そうである人とそうでない人がいるから」
「あの子達はなんだ」
「動かない人達なんだろうね」
それで、というのです。
「まだね」
「動きがないんだ」
「お静さんにしてもね」
「必死かな」
「そう思うよ、今は多分」
先生は本棚の本を整理しつつお話します、ジップ以外にも皆揃っています。
「囁き続けているよ」
「そうなんだね」
「だから僕達はね」
「今はだね」
「待とう」
これが先生のお考えでした。
「お静さんからの報告をね」
「それからなんだ」
「うん、僕達はお静さんからお話を聞いて」
そのうえでというのです。
「動こう」
「それじゃあね」
「今は本を読んでね」
「そしてだね」
「お茶を飲んでね」
先生の大好きなこれもなのでした。
「楽しもうね」
「そうするんだね」
「どちらにしても待つしかないのなら」
「イライラするよりは」
「気楽にした方がいいよ」
そうして、というのです。
「それで待てばいいからね」
「そこは先生らしいね」
ジップは笑って先生にこう返しました。
「とても」
「そう言ってくれるんだ」
「実際にそうだから」
それで、というのです。
「言うよ」
「そうなんだね、じゃあ」
「今はだね」
「気楽にね」
「お静さんを待って」
「この本を読もうかな」
こう言って先生が本棚から出した本はといいますと。
ポリネシアは先生の左肩にとまってそのうえでその本のタイトルを見てでした、こう先生に言いました。
「ああ、その本は」
「うん、芥川龍之介だよ」
「日本の作家よね」
「羅生門だよ」
タイトルにはっきりと書かれていました。
「最近この人の本も読んでいてね」
「それでなのね」
「この作品もね」
「買ってそして」
「読むんだ」
そうしているというのです。
ページ上へ戻る