食事をしながら
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
4部分:第四章
第四章
「結果が伴わなければ同じだ」
「結果か」
「貴殿もそうではないか」
フーシェはまた反撃に出た。
平然としているタレーランに対してだ。こう言ってみせたのである。
「これまでどうした謀略を使った」
「謀略?」
「多くの者を陥れてきたのではないのか?」
このことをだ。タレーランに言うのである。
「違うのか?それは」
「さてな。何のことか」
「他国だけでなくフランスの中にも大勢いるな」
フーシェはタレーランのその謀略のことを指摘してみせた。ただし己の謀略のことはここでは言わない。自分のことはなのだ。
「貴殿が陥れた者は」
「具体的に挙げられるか、誰なのか」
「挙げるにはあまりにも多い」
これも事実だった。タレーランは稀代の謀略家として知られているのだ。
「何人ギロチン台に行ったのか。それにだ」
「それに?」
「あの男も騙したな」
タレーランのその平然とした顔を見据えての言葉だった。
「あのコルシカ生まれの男も」
「彼のことか」
「忘れたとは言わせないぞ」
「安心するのだ。覚えている」
タレーランは眉一つ動かさず言ってみせた。
「それはな」
「そうだな。何度も裏切り騙してきたな」
「目的があったからだ」
「目的か」
「私は外交官だった」
ついでに言えば政治家でもある。
「ならばだ」
「フランスの為にだというのか?」
「そうだ。私は私の全てをフランスに捧げている」
そうだというのである。
「この国にだ」
「それでいて賄賂を取るのか」
「依頼されるからだ」
様々な仕事をだ。その内容はあえて言わない。
「だから受けるのだ」
「賄賂をか」
「仕事に失敗すれば返す」
その賄賂をだというのだ。
「それに何か不都合があるのか?」
「色々な賄賂を受け取っていたな」
フーシェはタレーランに負けずに返す。
「どれだけの額がわからないな」
「それを知っているのか」
「色々と調べさせてもらった」
フーシェの得意技だ。彼は他者、とりわけ政敵の情報を手に入れそれを活用することが得意なのだ。それは芸術の域にまで達していた。
「随分な額だし汚いことをしていたな」
「さてな」
「あの男の話に戻すが」
二人の頭の中にその男の顔が浮かんだ。英雄と呼ばれた男だ。
「あの男を売る様なことをしてきたな、他国に」
「私は彼を評価しているのだが、今も」
「評価している相手を売るのか」
「フランスの為ならばな」
それならばだというのである。
「そうするだけだ」
「フランス皇帝であってもか」
「彼の為にフランスがあるのではない」
あまりにもだ。冷徹な言葉だった。それを平然として言うのである。
「フランスの為にだ。彼があるのだ」
「だから必要ならばか」
「彼に役に立ってもらっただけだ」
「役にか」
「そうだ。それにだ」
ここでタレーランから話した。
ページ上へ戻る