エターナルトラベラー
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第二十七話
さて、海鳴まで戻ってきた俺達。
今回、俺の異常さが際立ってしまったわけで、海鳴に帰ってきて直ぐに追求されました。
三歳の子供がいくら自分が地下研究室への出入りを許可したと言っても地球では未知の技術である魔法を操れるのはおかしい事なのだろう。
根掘り葉掘り聞かれました。
何とか誤魔化そうと最初は魔道書を読み漁ったと言い。
「あーちゃんはいつの間にこんな難しい本が読めるようになったのかな?」
と言われ、咄嗟に今度は魔法はソルに教えてもらったと言って、改めて自分の相棒であるソル達を紹介。
一応そういった知識は父親から聞いていたらしく、喋る事には驚かなかったけれど。
「ねえ、あーちゃん。お母さんに隠し事をするのは良くないと思うよ?」
と、母さんには俺が嘘をついているのはバレバレだったらしい。
いやまあ、俺のあの誤魔化しが通用する人の方が稀だと言われればそれまでなんだけど。
大体俺の行動がいくら早熟だと誤魔化そうとも三歳児のそれと大きく異なる事にいくらんでも気づいてるはずである。
まあ、それは仕方ない。
三歳児の体だけど生きた年月だけで言えば母親を大きく上回っているのだから。
「だいたいあーちゃんは手のかからない子だったけれど、私が教えなくても日常生活に必要な事を最初から知ってるかのごとく覚えていったわよね。トイレや歯磨き、箸の使い方とか」
うっ…今まで見ていなかったようでしっかり見ていたのですね。
「今考えればあれは異常よね」
おっしゃるとおりで…
「それに御神流も。あーちゃんは一度見ただけでその型の本質を理解していた。ねえ、あーちゃんは何をどこまで知っているの?」
俺の内部を見透かすかのような質問。
…これは最早ごまかしは聞かないかな。
俺は総てを話す決意をするまでにしばらく時間が掛かったが、母さんに打ち明ける事にした。
「母さんは転生って信じる?」
「転生って、生まれ変わる事よね?」
「そう、その転生。俺はね母さん、既に三回転生しているんだよ」
「え?」
それから俺は今までの人生を母さんに語って聞かせた。
既に一番最初の人生は記憶が殆ど覚えていないけれど、現代と同じような世界で生きていた事。
それから全くの別の世界に転生してしまっていた事。
更に時空の狭間を越えて別世界へ、更にそこからの転生。
一緒に転生してきているはずのソラをずっと探している事も。
「そう、そんなことが有ったの」
「うん、だから母さんが俺のことを気持ち悪いと言うのならば、俺は今すぐ出ていk…」
俺が言い終える前に母さんは俺の言葉を遮るように俺をギュッと抱きしめた。
「バカな事を言わないで。いくら前世の記憶があるといっても、あなたは私がお腹を痛めて生んだ子供に違いはないわ、だからそんな寂しい事は言わないで」
優しく総てを包み込んでくれる母さんの抱擁。
「いいのかな?俺は普通の子供のような成長は出来ないと思う。それで母さんには寂しい思いをさせてしまうと思うよ?」
「いいのよ」
「いっぱい迷惑をかける事になるかもしれない」
「子供に迷惑を掛けられるのは親の努めよ」
「ありがとう、母さん」
俺はそう言って母さんをギュッと抱き返した。
しばらくすると互いに落ち着きを取り戻したところで母さんから質問があった。
「そういえば、あーちゃんの前世って忍者だったって言ったけれど」
「うん」
「母さん凄く疑問だったんだけど、分身の術とか、よくテレビアニメとかであるじゃない?やっぱり分身の術って高速移動の残像なの?」
「ええっと…分身の術にも色々あって、一概に間違いだとは言えないけれど」
と、そう前置きをしてから俺は印を組む。
「先ず自分の幻影を生み出す普通の分身の術」
そう言うと俺の横に現れる俺の幻影。
母さんと、近くに居た久遠が眼を丸くしている。
母さんは俺の分身に近づくとおもむろに分身に手を突っ込んだ。
するとその手は俺の幻影を突き抜けて背中から両手が飛び出している。
「これは魔法なの?」
自分が思っていたものとは全く違う分身の術に母さんは魔法ではないのかと聞いてきた。
「ううん。これは忍術と言われている物、魔法とはまた別の理の力。それにこれはただの幻影、ホログラフのような物だね」
俺は分身を消すと台所に近づき蛇口を捻り水を垂れ流し始めた。
「そして次が」
そう言ってまた印を組む。
「水分身の術」
すると蛇口から垂れ流されていた水が浮き上がり俺の隣りに来て俺とそっくりな姿になる。
するとまたも母さんは俺の分身に手を伸ばした。
「冷たいわ。これは水よね?」
「うん。水や砂などをを自分そっくりに化けさせて操るタイプ。物質操作系の術だね」
俺は分身を台所に向わせると蛇口を捻り水を止め、分身をシンクの上まで移動させると術を解く。
すると制御を離れた水分身は母さん達の目の前でただの水に戻り排水溝に吸い込まれた。
「後はこれ」
そして俺は最後に十字に印を組む。
「影分身の術」
ボワンと現れる俺の分身。
「これは最初のよね?」
「ううん。違うよ」
「喋ったわ!?」
分身の俺が喋り出した事に驚く母さん。
そして俺の分身が母さんに抱きつく。
「暖かいし、ちゃんと呼吸や心臓の音も聞こえる」
「そう、自分のオーラ(チャクラ)を使って自分そっくりな影を作り出す禁術」
「え?」
「その分身はほぼ自分と同等の肉体的戦闘能力を持つ上に忍術の行使も可能と来ている。オーラを均等に割り振ってしまう(解除されると使用されなかったオーラが経験値を伴って自身の体に帰って来るとこの作品ではしています)ことや、過度の衝撃には耐えられないというデメリットも在るけれど、それを補って余りある、もし敵に使われたら物凄く厄介な術の一つだね」
「へえ、色々あるのね」
心底驚いたといった感じの母さん。
久遠については既に失神している。
俺は影分身を消して母さんに向き直る。
「魔法はあの人にそれを扱う資質が無いと言われていたけれど、その忍術は母さんも習得出来るものなの?」
「あー、えーっと」
「どうなの?」
母さんが期待を込めた瞳で俺を見つめる。
「結論から言えば出来る」
「本当に?」
「うん。体を流れるエネルギー、つまりオーラを自由に操る事が出来れば。これは生物だったら誰でも持っている命の力だから」
「へえ」
「ただ、オーラは長い時間をかけて少しずつ自分の体にあるオーラの巡廻路にあるしこりを押し流して通りを良くしないと使えないから」
前の世界の忍者は外側ではなく内部への働きかけは人種的に誰でも(一部例外もあるが)出来たようだが、そういった認識のないこの世界では念を習得する他ないだろう。
「長い時間ってどれくらい?あーちゃんは使えているようだけれど」
「解らない。1年か…10年か。俺は昔事故で体にある精孔…オーラを生み出して放出する穴のようなものかな?それが開いてしまって、以来転生を繰り返しても最初から使えているからね」
「無理やり開く事は出来ないの?」
「念能力者、えっと、つまりオーラを使うことが出来る人たちの事だけど。その人が普通の人間に対して念(オーラ)をぶつけると、ぶつけられた相手の体はビックリして精孔が開いてしまう事があるらしい。ただ未熟な念能力者だと相手を傷つけてしまうから危険な行為ではあるね」
「あーちゃんは?」
「俺は念応力を覚えておよそ10年。中堅の能力者って所かな。まあ、念能力は覚えてしまえば身体能力の強化、疲労回復力の上昇、老化の遅延など凄く便利だけどね」
すると行き成り母さんは俺の肩を掴んで真剣な表情で聞き返してきた。
「あーちゃん、最後の何だって?」
ミシッっと俺の肩に母さんの手が食い込む。
「ろ、ろ、ろ…老化の遅延ですうっ」
「あーちゃんなら母さんの精孔?開ける事が出来るわよね?」
「はっはい!」
母さんからの凄まじいプレッシャーに俺は咄嗟に了承の言葉を発していた。
「そう、じゃあ早速お願いね」
母さんは満面の笑みを浮かべようやく俺の肩から手を離した。
「でも!危険があ「おねがいね」…わかりました…」
俺は母さんから放たれる凄まじいプレッシャーについに負けてしまった。
その後俺は母さんに対して威力を調整した「発」を行使して母さんの精孔をこじ開ける事に成功した。
しかし、俺はなんとしてもこの時止めるべきだったのかも知れない。
何故なら、その後影分身を覚えた母さんとの地獄の特訓の日々が始まったのだから。
勿論母さんは俺から念を教わっているのだが、それ以上に御神流の修行に当てる割合が多い。
ついでに家事なんかも影分身の一体にやらせているので、日々一日修行が可能になってしまい、俺は毎日修行で血反吐を吐く日々。
正直言ってたまりませんよ…
しかしその甲斐あって御神流の習得スピードは格段に上がったけれど…
そう言えば念修行を見学していた久遠が自力で精孔をこじ開け、『纏』を習得していた事には驚いた。
いつの間にかなんとなく出来るようになったらしい。
まあ、野生動物の上に妖狐だからね、念を習得できてもなんら不思議じゃないか。
母さんは短時間の間に自分の念能力を作り上げていた。
『水見式』の結果具現化系だった母さんは深く考えずに二振りの日本刀を具現化していた。
ツーヘッドドラゴン(二刀竜)
左右一対の日本刀。
銘を水竜刀と風竜刀と言う。
水竜刀は水を操る。空気中に存在する水分を凝結させる事も可能。かなり応用が利くようだ。
風竜刀は空気を操る。斬撃にあわせてカマイタチを飛ばしたり、周りの空気を操って短時間なら飛行可能。
具現化した刀に付加した能力にしては具現化系というより操作系のような気がするけれど…問題なく使用で来ている母さんは凄い。
偶に母さんとツーヘッドドラゴンを使用してガチバトルとかもやったりしている。
まだ念能力者としてや忍者としての年月の分俺に分があるのだが、母さんは未だに成長過程なのか念能力を得てドンドンその実力は高みへと上っていく。
そうそう、俺の母さん実は今20歳なのですよ…
17で俺を産んだというから驚きだ。
と言うか死んでしまった父よ、少し犯罪臭がするぞ。
まあ、俺達に贅沢しなければ一生暮らしていけるだけの財産を残してくれた事だけは感謝している。
しかし母さんも未だ若い、もしもいい人が現れるなら俺は反対しない。是非とも母さんには幸せになってもらいたいものだ。
そして数ヶ月。
俺がいつものように朝起きると、俺は何者かに抱きしめられていて身動きを封じられていた。
母さんが俺をがっちりホールドしているのかと思ったらそこには金髪に改造巫女服を着た見知らぬ少女が。
…
…
…
「うぇぇぇえええええええぇええ!?」
俺は驚き絶叫を上げる。
俺の大声での絶叫に母さんが駆けつける。
「あーちゃん!何があったの?」
「いや!あの!その!?」
俺がテンパって居ると俺を抱きしめる少女がもぞもぞ動き眼を開ける。
「あーちゃん!まさかあなた!ヤってしまったの?」
「なにをだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
更なる俺の絶叫に少女は俺を話して起き上がり、眼をこすりながら「くぅん?」と鳴いた。
「え?」
「まさか」
その鳴き声に俺と母さんははっとなってその少女の正体に想い至った。
「「久遠?」」
「…ん、おはよう。アオ、ユカリ」
小さくあくびをしながら久遠は挨拶をする。
眼をこすっている所をみると、どうやら未だ眠い所を起こしてしまった様だ。
…そうだった。
久遠は人間に変化できるのだ。
更に今の久遠は俺の使い魔。
であるならば、尚更変化出来ても不思議は無い。
ただ、久遠と暮らし始めて数ヶ月、今まで変身していなかったから頭の中から抜け落ちてしまっていたのだ。
その後、母さんに事の次第を説明。
納得した母さんは嬉々として久遠に構っている。
「娘も欲しかったの」とはある意味テンプレ的な展開か?
久遠は今まで特に変身する機会も無かったために変身する事をしなかったらしい。
今日は寝ぼけて偶々変化してしまったようだ。
久遠が人型を取れる事を知った母さんは、最近では久遠を交えて3人で御神流の修行をしている。
改造巫女服に竹刀を持たせ、素振りをしている久遠。
…ぶっちゃけかわいい…
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