英雄は誰がために立つ
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Life3,5 買い物と言う名のデート
前書き
これ前にも言いましたっけ?
今更ですが、眼光を押さえる理由から、士郎は基本的にFate/EXTRAの髪をかき上げていないで黒縁の伊達眼鏡をかけている状態です。
戦闘時では、アーチャースタイルですが。
此処は、東京都内にあり駒王町からそれ程離れていない、人が行きかいショッピングにもよく使われる町の駅前だ。
そこに、2人の美少女――――ソーナと椿姫が約束の時間まで待っていた。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
ほぼ――――いや、まったく会話をしない2人。
別に仲が悪いワケでは無い。
互いの事を知り過ぎている為、2人きりになると、たまの近況報告或いは生徒会の作業などが主な会話内容になるのだ。
しかも2人ともクール美少女と来ている。これでは会話は弾まないだろう。
そんな美少女2人を、矢張りと言うべきか、今から遊びに行くなどの男たちが遠巻きに見ていた。
「おい、あの2人、めっちゃ可愛くね?」
「おー、マジだっ!けど2人して何もしてないって事は、誰待ちだ?」
ソーナと椿姫を話題内容に、勝手気ままに盛り上がる男ども。
しかも、その男達とは別に、無謀にもチャラ男っぽい男が大胆にも声を掛けた。
「ねぇー君たち?俺とお茶しn――――」
「結構です」
「そんな事言わずn――――」
「興味ないです」
チャラ男のセリフを、最後まで言わせない――――いや、聞かない2人。
しかも、眼中にないと言わんばかりに全く視線を合わせない。
当然、そんな対応をされれば、黙っていられないのが最近のナンパ共だ。
「図に乗るなよっ!このクソ女どもがっ!!」
舐められた態度に、短い気を切れらたチャラ男は、殴ろうと手を振りかぶった。
駅前と言うのだから、当然近くに交番があると言うのに、ずいぶんと無謀な事だ。
がしっ。
「!?」
しかし、ソーナと椿姫に暴力が出されることは無く、誰かに腕を掴まれるチャラ男。
「誰だっ!?」
後ろを振り向くと、長身の銀髪の男――――藤村士郎がそこに居た。
「・・・・・・・・・」
「・・・ぁ・・・っ・・・・・・・ひぃ・・・・・」
一言も喋らずの無言の圧力により、あまりに気圧されたのか、へなへなと尻もちを付いてしまったチャラ男。
「事前の約束だったとはいえ、遅れてすまなかったな。2人とも」
「いえ、問題ありません」
「ええ、何も無かったので」
「そうか・・・」
3人とも、最早眼中に非ずなのか、先程までのチャラ男の件を無かった事と処理した。
無論、黙殺されたチャラ男は、悔しげに唇を噛みながら睨み付けていたが、服の上からでも判る位の18と言う歳には不釣り合いなほどの鍛えられた体に、先程の眼光を思い出して、負け犬の如くその場から逃げて行った。
そんな男にも目もくれず、ギャラリーは、2人の美少女の待ち合わせ相手に注目した。
「やっばっ!あの外国人、超カッコよくない!?」
「超って・・・・・、いつの死語よ。でも確かにいい男ね!」
士郎の容姿では、初見で日本人と見切るのは難しいだろう。
兎も角、女性たちは浮かれ、男性陣の感想と言えば・・・。
「なんだ!?あの如何にもイケメン野郎はっっ!!?」
「し・か・も!2人とも、アイツのもんだとっ!!?」
「もげればいいのに、もげればいいのに、もげればいいのに、もげればいいのに――――」
嫉妬と憎悪を士郎の背中へ向けて送っていた。
彼らがもし、魔力発生器官を持ち、陰陽術か黒魔術を習得していれば呪殺出来ていたかもしれない。
そんな呪殺級の嫉妬を向けられている当の士郎は、チリチリと、背中越しに嫌な汗を流しながら感じ取っていた。
士郎からすれば何時もの事だが、内心では溜息をつく。
「どうかしましたか?」
「・・・・・・いや、何でもないさ」
ソーナと椿姫とも、士郎の後方から来る感情に気付いていたが、士郎自身の気づかいを素直に受け取り、気付かないふりをしデートに出発した。
しかし、先程の呪殺級の嫉妬を、そこらの男どもだけで出せるモノだろうか?
少なくとも今回の答えは否だ。
何故なら、先程の呪殺級の嫉妬の確たる感情は、同方向かつ、さらに後方の路地の陰から放たれていた。
ある2人の人物によって・・・。
「ウフフフフ♪――――もう!士郎ったら、私の許可なく(と言うか、しない)女の子――――しかも両手の花状態でデートするなんていけない子ね♪撲殺しちゃうわよ☆」
「狡い、許せない、憎い、狡い、許せない、憎い、狡い、許せない、憎い、狡い、許せない、憎い、狡い、許せない、憎い――――・・・クククククッ!月夜だけだと思うなよっっ!!」
矢張りと言うべきか、イリヤとゼノヴィアだった。
イリヤは、美しい銀髪をなびかせながら、満面の笑みの中に常闇を孕ませていた。
ゼノヴィアは、狂気に堕ちながらも、自分から士郎を奪おう(誰のモノでもない)としている標的を、冷静かつ冷徹にロックオンしていた。
そんなこんなで、前途多難?夏休み2日目が始まった。
-Interlude-
士郎は今まで、様々な困難にも挫けず、多くの修羅場をくぐって来た。
そして、今も困難と言う大きな壁に挑んでいたが・・・。
(正直・・・・・・挫けそうだ)
士郎は今、女性の水着コーナーまで連れていかれただけでは無く、自分たちにどれを着て欲しいか選べと言われたので、勘弁してくれと言う士郎の懇願を聞き入れた。
だがしかし、だったら自分たちが選ぶ水着を試着するので、どれか選んで欲しいと言う、たいして変わっていない難題を突き付けられていた。
ついでに、ソーナと椿姫とも、現在3着目だ。
「どう・・・・・・ですか?士郎君?」
「私のもちゃんと、見て下さい」
「・・・・・・・・・・・・・・・っ」
ちゃんと批評しろと言う事は、爪先から頭の天辺まで冷静にガン見しろと言う事に他ならない。
その様な事、『衛宮士郎』だった頃には、何十人もの女性との出会いで、無意識に誑かしては押し倒し、押し倒されて女性の扱いが上手くなったかと思いきや、未だに初心さを抜け出せない士郎にとっては、修羅場そのものだった。
「・・・・・・ああ、椿姫は一見、黒地の方が似合うように思えて、白地のビキニも大和撫子のような美しい髪に良く栄って似合ってると思うぞ?」
「っ・・・・・・・・・ありがとう・・・・・・ございます」
士郎本人は思った事を口にしたまでだが、椿姫からすれば、あまりに直球だったので恥じらいながらお礼を言う。
「士郎君、私は如何でしょう!」
椿姫に対する評価に嫉妬したのか、ソーナは語尾を強くしながら評価を求めた。
「えっ・・・・・・ソーナは、真面目な雰囲気とは一転して、ずいぶん冒険したなと思えるけれど、その唇を斑上に散りばめられたピンクい色を基調としたビキニは、正直似合いすぎ・・・・・・だと思う。反則だな」
「そ、そうですか!?その、士郎君がそんなに褒めて下さるのでしたら、これにします」
士郎のドストレートな感想に、椿姫と同じような反応をするソーナ。
そんな試着室前の3人に、言うまでもないが、尾行していたイリヤとゼノヴィアは買い物客を装いながら、以下略。
「まっ~たく、士郎ったら♪あんな歯に着せぬ言葉で褒めちゃって!こんなの事に成るなら、小さいころから計画的に教い――――調教しておくんだったわ☆」
「酷い!狡い!?差別だ!!私の風呂上がりの時は、全く反応しないくせにぃいいいい!!」
この2人、誰にも聞こえない様なボリュームで憤慨すると言う、実に器用な事をしていた。
結局士郎はこの後、ソーナと椿姫の水着を10着以上に批評をさせられていた。
-Interlude-
時刻は昼の2時頃、士郎の地獄は別の場所で未だ続いていた。
「はい、士郎君。ア~~~ン・・・・・・」
「・・・・・・ア~ン」
「士郎君。私のも、ア~~~ン・・・」
「・・・ア~~ン・・・」
フルーツパフェを食べさせ合うと言う名の地獄だった。
他の男どもからすれば、天国だろうが、士郎からすれば針の筵状態だ。
(なんでこうなった?)
別に嫌なワケでは無い。
しかし、恋人関係でもないのに、何故このようなイベントに遭遇しなければならないのかと、士郎は本気で頭を抱えたくなっていた。
そもそも、士郎視点で言うのであれば、買い物に付き合う=荷物持ちだと思っていたのに現状は、付き合いはじめのバカップルの様だった。
勿論、士郎達がいちゃつけばいちゃつくだけ、周りのモテナイ男たちは血涙を流さんばかりに憎悪の視線を遠慮なく送り、イリヤとゼノヴィアは嫉妬と狂気の末に、呪言を呟くという悪循環を完成させていた。
「では士郎君」
「次は私達にも食べさせてください」
「・・・・・・・・・わかった」
ロッキー山脈の絶壁から飛び降りる程の覚悟を決めて、士郎はこの行為を続ける事を決意した。
しかし、そんな一日の中で、誰も気づかなかったであろう。
彼らとは別に、何の感情も孕ませることない、見るモノが居た――――いや在った事に。
-Interlude-
夜。
漸く解放された士郎は、風呂から上がり、今日はもう寝ようと自室に向かっている処で、ある客室から突如として現れた4つの腕に掴まれた。
「ウフフ、し・ろ・う☆」
「今日は寝かせませんよ?」
イリヤとゼノヴィアは、目が座っている状態のまま士郎を部屋に引き込んだ。
「な、なんでs――――。
その後、士郎は朝になってようやく解放されたようだが、藤村家の男衆たちに如何したんだと心配される位に、やつれていたそうだ。
-Interlude-
冥界のある屋敷で、現魔王を任されている1人が、人間界で盗撮のために飛ばした特別性の超小型オートマトンの記録映像に、目を通していた。
「ウフフフ☆士郎君ってば、あれだけ忠告したのにソーナちゃんに手を出すなんて、駄目な子ね☆」
暗がりの一室で、小心者もしその場に居れば、一瞬で気絶するのではないかと予想出来る位の殺気に満ちたオーラを纏わせながら、現魔王の1人は記録映像を確認していた。
「明後日には冥界にも来るって、サーゼクスちゃんも言ってたし。これは相応の拷問と調教をしてあげなきゃね☆まぁ、必要だったらだけどね☆」
訂正、気絶では無く、消滅するかもしれない。
何にせよ。士郎の死亡フラグが、本人の知らぬ間に何本も立っていた事は、最早如何にもならない事実――――いや、現実だろう。
後書き
夜のイベントで、士郎が受けたのは、決して性的なモノではありません。少なくとも、今回はまだ。
次回、漸く冥界に行けます。
それにしても、アニメ版見ていないんですので今日知った事なんですが、『ホーリー』と『ラグナロク』の順番が逆なんですね?原作と違って。
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