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リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
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第百六十四話 外道

 
前書き
奴が復活。 

 
及川を逃してしまった大輔達は初等部の生徒会室に集まり、深刻な表情で席についていた。

大輔「まずいな…及川を逃しちまった…」

なのは「あの人、デジタルワールドに行くって言ってたよね?一体どうやってデジタルワールドに行くつもりなのかな?」

フェイト「分からない…一体どうやってデジヴァイスも持たない…パートナーデジモンもいない人間がどうやって…」

賢「どうやって行くかは分からないけれど、念の為、日本各地のデジタルワールドにロックをかけておいた方がいいかもね」

スバル「ロックを?」

首を傾げるスバルに賢の考えを理解したルカがスバルに説明する。

ルカ「成る程、デジタルワールドに通じるゲートポイントにロックをかけることで、万が一ゲートが開いたとしてもそこにはデジタルワールドではなく別世界か電脳世界に通じていると言うわけですね」

ティアナ「でも、何か騙してる気分になるな…」

少し罪悪感が沸くティアナにルカは苦笑した。

はやて「なら、パスワード式にしたらどうや?万が一デジタルワールドに来られた時の用意が必要やろ」

すずか「うん、更に念の為に聖竜学園の皆にもパスワードを教えて、現実世界とデジタルワールドの警備もしてもらおう」

ギンガ「ノーヴェ達はデジタルワールドの警備に回そう」

ユーノ「そうだね。それがいいかもしれない、警備を手薄にするわけにはいかないからね」

ユーノもはやて達の考えに賛同するように頷いた。

賢「ならパスワードは…20020824にしよう」

一輝「何だ、この数字は?」

大輔「この数字は俺達が次元漂流した日だな。」

賢「当たり。僕達の運命が大きく変わった日。」

この日は自分達の運命を大きく変えた日。
この運命の日がなければ、これだけの成長はなかっただろう。

遼「(何か、及川が哀れに見えてくる作戦だな)」

最早完璧過ぎる警備体勢にデジタルワールドに行くために四苦八苦している及川が哀れに思えてくる。

アリシア「じゃあ、ゲンナイさんに頼んで早速やってみようよ。パスワードを教えてさ」

賢「そうだね、みんな。このパスワードは絶対忘れないでね」

全員【了解】

パスワードを頭に叩き込むと今日はこれで解散となった。































ヴィータ「ええ?あたしがデジタルワールドの警備に?」

賢「そうだ、聖竜学園の生徒達は現実世界の警備に回す。守護騎士とリイン等はデジタルワールドの警備だ」

ヴィータ「分かった。」

ノーヴェ「じゃあ私はどこに行けば?」

賢「君達もヴィータ達と行動してくれ」

チンク「了解」

ルカ「頼みましたよ」

聖竜学園の全員にデジタルワールドと現実世界の警備を頼み、いよいよ明日に備える子供達であった。










































賢「ところでヴィータ」

なのは「少しいいかな?」

ヴィータ「な、何だよ賢、それになのはまで…2人共、目がマジなんですけど…」

賢「リインがおやつが無くなったって泣いてたんだけど?」

なのは「ヴィヴィオがブイモンお手製のキャラメルミルクが無いって泣いてたんだけど?」

ヴィータ「え?それで…?」

冷や汗をダラダラとかきながら、賢となのはを見つめるヴィータ。

賢、なのは「「ヴィータ(ちゃん)が食べた(飲んだ)んでしょう?」」

ヴィータ「ええ!!?ち、違う!!あたしじゃなーい!!」

賢「嘘を吐くな嘘を!!」

なのは「こんなことするのはヴィータちゃんくらいしかいないでしょ!!」

ヴィータ「痛い痛い!耳引っ張んないで!痛い痛い痛い痛い痛い!!耳が取れるから止め、あ、取れた!!い、嫌だーーーーっ!!!!あたし何もしてねえのに!!嫌だーーーーーーっ!!!!!!!!!!」

ズドオオオオオオオン!!!!!!

凄まじい轟音が聖竜学園に響き渡った。

一輝「日頃の信用は大事だな……」

カリム「ですね…」

チビモン[美味しい~♪]←犯人

フェイト「チビモン、それリインのおやつとヴィヴィオのキャラメルミルクじゃない…?」

濡れ衣を着せられたヴィータ、哀れである。
































しばらくして。

賢「全く、リイン達のおやつを食べちゃ駄目じゃないかチビモン。」

チビモン[ごめんね~、お昼ご飯食べ損ねちゃったからお腹空いてたんだ]

なのは「次からはやっちゃ駄目だよ?」

チビモン[うん、ごめんねリイン、ヴィヴィオ]

ヴィヴィオ「ううん」

リイン「謝ってくれたからいいです」

ヴィータ「…犯人扱いされたあたしにはごめんなさいとかの謝罪も無しかよ……」

ユーノ「本当に日頃の信用は大事だよね…ねえヴィータ?」←とてつもなく哀れな物を見る目。

ヴィータ「あたしを可哀想な物を見るような目で見るんじゃねえええええええええ!!!!!!」

聖竜学園に彼女の悲痛な叫び声が響き渡った。




































大輔達は現在光が丘にいた。
及川…正確には及川を操る存在が動き出したのを察知したからだ。
光が丘のゲート…というより、現実世界のゲートは万が一に備えて封印した。

スバル「ねえ、ルカ兄。ヒカリさん達は?」

ルカ「え?さあ…僕も知りませんが…」

一応この世界の危機なのにヒカリ達がいないことに気づいたスバルがルカに尋ねる。
ルカも知らないらしく、首を傾げる。

大輔「ヒカリちゃん達は置いてきた。はっきり言って、あいつらはこの戦いについていけない…それにあの子達の見張りも兼ねているからただ置いてきたってわけじゃねえよ。」

フェイト「それにしても…」

フェイトが前に視線を向けると子供達が1人ずつ増えていく。

ユーノ「それにしても何だか事態がますます悪化しているような気がしてなりませんね。黒幕の正体は奴なんでしょうが、奴は一体何を…?」

賢「十中八九、復活して彼らへの復讐…だろうな」

はやて「あの子達の親は心配してるんやないか?」

ルカ「それに関しては大丈夫だと思いますよ。太一さん達のお母さん達がご両親の元を尋ねているらしいです」

アリサ「親が来てどうにかなる問題かしら…?」

賢「大丈夫。親が来て、どうにかなる問題かもしれない。」

すずか「どうして?」

賢「あれは多分、物質的なものじゃなくて、精神的なものなんだと思う。多分、暗黒の種そのものが、データと言えど人の闇に巣食うのだとしたら…」

ユーノ「人の闇も精神的なものだから、見えないと言う事ですか?」

賢「そう」

ティアナ「じゃあ、賢さんの種は…?」

賢「僕のは成長が止まっているはずだ。僕達にも大切な物があるからね。」

だからあの子供達も、親の愛情に気付く事が出来れば、種は成長を止めるはず。

ギンガ「皆!あれを見て!」

ギンガはそう言って指を指す。
その緊迫したような声色に、子供達も慌ててギンガが示す方向に目を向けた。
そこにはいつの間にか及川が来ていた。

大輔「とうとう現れやがったな…」

子供達が茂みから飛び出す。

アルケニモン[邪魔はさせないわ]

賢「お前達に用はない。引っ込んでいろ!!」

大輔達の登場にも構わず、及川はノートパソコンを取り出して、弄り始める。

スバル「何してるの!?」

及川「デジタルワールドに行くのさ。ああ、最後だから質問に答えてあげるよ」

賢「なら…これだけは聞いておきたい。ダークタワーとは何なんだ?どこからあんな物を知ったんだ?」

及川「元はダゴモンの海にあったやつだ。色々な使い道があるが、その最大の効果はデジタルワールドの環境を変えてしまうことだ。だがお前達が壊しちまったが……だから計画を変え、デジタルワールドでバリアの役割を果たすという暗黒の種を、子供達に植え付けたというわけさ。そして今日、俺は生まれて初めてデジタルワールドのゲートを潜るんだ。この日を、どんなに待ち侘びたことか…!!」

及川はそこまで言うと俯いて肩を震わせる。
そして次の瞬間には声を上げてわんわんと泣き始めたのだ。

ギンガ「…泣いてる?」

アルケニモン[どうしましたボス!?]

及川「だって夢が叶うんだよ?浩樹君、君が生きていたら誘ったのにごめんよおお…!!」

本当に及川は涙を流している。
そのことに驚いていると、及川はコロッと泣き止んで子供達の方を振り返った。

及川「さあみんな!一緒に歌おう!行こう♪行こう♪デジタルワールドに♪」

及川が突然そう歌いだせば、子供達も真似をするように同じ歌を歌いだす。
大輔達が身構えた瞬間、ゲートが開いた。
そして及川達がゲートを潜っていく。

なのは「追い掛けよう!!」

大輔達も及川達を追いかけるためにゲートを潜った。
































ゲートを潜った場所はまるで玩具箱をひっくり返したような世界だった。
及川達の元に辿り着くと、辺りを見回す。

なのは「ここどこ?」

プロットモン[デジタルワールドじゃないわ]

ブイモン[大輔、ここ…]

大輔「ここは“想いを具現化する世界”だ。」

及川「何だと!?じゃあここはデジタルワールドじゃないのか!!?」

大輔「デジタルワールドに近い世界ではあるけど、厳密には違う世界だ。」

及川の問いに大輔は答える。
“想いを具現化する世界”はデジタルワールドの根底にある世界ではあるが、デジタルワールドではない。

及川「~っ!俺はデジタルワールドに来たかったのにいいいいいいい!!!」

及川が頭を抱えてそう叫ぶ。

『忘れろよ、デジタルワールドなんか』

その直後、突然頭上に大きな口が現れた。
その口は紫色の唇で、鋭利な牙も持っている。

『もっといい世界がある。ここさ。偶然辿り着いた場所だが、こここそ俺が願っていた世界』

及川だけに見えている訳ではなさそうで、固まった子供達は恐怖に震え、大輔達は鋭く睨み据えた。

『怖いか、そうか。この世界に迷い込んだ者は、仲間が生きながら闇に食われる事に恐怖し、自分も逃げられない事を知り絶望する……』

及川「……俺の声みたいに聞こえるが、空耳か?」

大量の汗をかいた及川が、瞳に恐怖の色を映して言った。
すると口は口角を吊り上げた。

『空耳じゃない、俺はお前だ』

及川「どういう事だ!!?」

『3年前、俺は探していた。データとなった俺が生き残るための宿主をな。そんな時お前に出会った』

「3年前……友達の浩樹が死んで、悲しみに暮れていた時か」

『いや、お前は友達の死を悲しんではいなかった。むしろ憎んでいたじゃないか、一緒にデジタルワールドに行くと約束したのに、どうして先に死んでしまったのかと』

途端、及川に動揺が走った。

及川「まさか!!俺が浩樹を憎むなんて!!」

唇はガバリと文字通り大きく口を開く。その奥に見えるものは、3年前、東京湾を一望していた及川自身の姿だった。
































東京の空に浮かぶデジタルワールド。
これはあの時の…。
太一達がヴァンデモンを倒した日の光景だった。

及川『ああ!あれは…!!見えるか?浩樹!デジタルワールドだ!!他の人間に分からなくても、俺には分かる…!!あれはデジタルワールドだ…!!でも浩樹、酷いよ…先に死ぬなんて…!俺1人残して…!!酷いよ…!!!』

今よりも若い及川が、1枚の写真を握って泣き崩れる。
その時虹色の光が空に浮かぶデジタルワールドに向かって伸びた。
あれは、太一達だ。
それに縋るように及川が手を伸ばす。

及川『俺もっ、連れてってくれ!!頼む!頼むから!!』

及川の言葉が太一達に届くはずもない。
虹色の光は太一達をデジタルワールドへ届けるとすぐに消えてしまった。
それに及川が肩を落とす。
その時、だった。

『デジタルワールドに行きたいか?』

及川『ぁ…!行きたい!行けるものなら行きたい!!』

『お前が心の中の良心を捨てる気があるのなら、連れて行ってやる。どうだ?』

及川『何でもする!!行けるんなら何だって!!』

『分かった。』

及川の耳に白い靄が入って行く。
映像はそこで終わった。






























及川「あ、あれは……あれは俺の心の声だと思っていたが、そうじゃなかったのか!!?」

『その後の事も、全て俺が教えてやったぞ』

大輔「成る程、3年前に太一さん達が現実世界で倒した敵…それはあいつしかいない。てめえ、ヴァンデモンだな?」

3年前。
生き残るため。
そのキーワードが当てはまるのは、ヴァンデモンしかいない。

ヴァンデモン『ほう?随分といい勘をしているな。じゃあついでに教えておいてやる、イービルリングはコピーしておいたテイルモンのホーリーリングのデータを逆転させ作ったのだ』

大輔「屑が!!だが、お前もここまでだ。ここで完全に息の根を止めてやるぜ」

『無理だな、俺は昔の俺じゃない』

ヴァンデモンの口はそう言うと解けるように消えていった。
途端に及川が苦しそうな声をあげる。
体を縮こまらせて苦しんでいると思っていたら、次の瞬間口から青い光が飛び出した。
その光は地面に落ちる。
床に着地した途端姿を及川と瓜二つに変える。
派手に咳き込む本体の及川とは対照的に、偽物は余裕の笑みさえ浮かべて宿主を振り返った。

ヴァンデモン[ここまでご苦労だったな]

まさしくドッペルゲンガーでも見たかのように愕然とする及川に、及川の形をしたヴァンデモンは冥土の土産とばかりにペラペラと語った。

ヴァンデモン[ああそう言えば、暗黒の種、あれがバリアの働きをすると言うのは嘘だ。本当は俺の餌だ、俺が生まれ変わるためのな]

及川「何…!?っう、ぁ…!」

及川は呻き声を上げて地面に倒れこむ。
ヴァンデモンはその姿を一瞥すると、今度は子供達に向かって歩き出した。

ヴァンデモン[心配するな、殺しはしない。先に暗黒の花を貰ってから…。]

賢「そうはさせないぞ!!」

ヴァンデモン[ほら、何をしている!!]

アルケニモン[は、はい!!]

中身は別人にも関わらず、ヴァンデモンに指図されて慌ててアルケニモンとマミーモンが彼らを迎え撃った。
パートナーを進化させていなかった大輔達は咄嗟に回避。
アルケニモン達の攻撃は続き、ヴァンデモンは花を刈る。

ブイモン[邪魔だああああああ!!]

ブイモンが力を解放してアルケニモンとマミーモンを吹き飛ばす。
そしてヴァンデモンを向いたが遅かった。

ヴァンデモン[もう済んだよ。さてと、食後の運動といくか]

前かがみになった偽物の及川の背中が、突如として不自然に膨らんだ。

ティアナ「ヴァンデモン?それともヴェノムヴァンデモン?」

ベリアルヴァンデモン[そのどちらでもない!!ベリアルヴァンデモンと呼んでもらおうか!!]

何かと思えば、ベリアルヴァンデモンである。
大輔達の視線は極度に冷えていた。
最早、大輔達にとってヴェノムヴァンデモンもベリアルヴァンデモンも簡単に手に負える相手である。
しかも暗黒の種の力に頼り切った姿に更に視線が冷えていく。

ベリアルヴァンデモンは視線を巡らし、いきなり棒立ちのアルケニモンを手のようなもので掴み上げた。

アルケニモン[な、何をなさるんです!!?私はあなたの僕!!]

ベリアルヴァンデモン[俺が何をすると思うか、考えてみろ]

恐怖と混乱でぐちゃぐちゃになったアルケニモンの思考を読み取る。

ベリアルヴァンデモン[なるほど、それも楽しいな]

ベリアルヴァンデモンの表情を見て、ブイモンは何を仕出かすかを悟り、どこか憎めない馬鹿2人を助けるために動いた。

ブイモン[ブイモンワープ進化!マグナモン!!]

進化と同時に手刀をベリアルヴァンデモンのアルケニモンを掴んだ手に叩き込み、アルケニモンを助けると、ベリアルヴァンデモンを軽く蹴り飛ばした。
マグナモンからしてみれば本来の半分以下の威力。
しかしベリアルヴァンデモンからすれば凄まじい破壊力で、数回バウンドしてようやく止まった。

ベリアルヴァンデモン[ぐっ…貴様…]

邪魔をされ、攻撃を喰らったことでベリアルヴァンデモンは殺意を秘めた視線をマグナモンに遣るが、マグナモンは涼しい顔でどこまでも余裕があった。

クロアグモン[貴様ら、死にたくないならこちらに来い]

一応生みの親であるアルケニモンとマミーモンを庇うクロアグモン。
最近、聖竜学園の人手も欲しいとかゲンナイも言っていたことだし、ビシバシ向こうでしごいてやろうとクロアグモンは決めた。

マグナモン[借り物の力で復活したからっていい気になるなよ雑魚]

ベリアルヴァンデモン[雑魚だと?この俺を雑魚呼ばわりとはいい度胸だ!!]

凄まじい勢いでこちらに向かってくるベリアルヴァンデモンにマグナモンは腕組みをしながら呟く。

マグナモン[そうだな。軽く食前の運動でもするか。お前達は及川に回復技をかけてやれ。まだ助かるかもしれない]

チビモン達が及川にギガヒールをかけ始める。
ベリアルヴァンデモンとマグナモンが激突した。 
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