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美しき異形達

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第四十九話 一時の別れその十一

「それで」
「そのことね」
「ああ、誰なんだ?」
 このことを問うのだった。
「一体」
「カリオストロ伯爵」
 この名前をだ、怪人は出した。
「そう名乗っていたわ、私達を送り出す時に」
「カリオストロ伯爵」
「私が知っているのはそれだけよ」
「そうか、じゃあな」
「もういいわね」
「ああ、そこまでわかったのならな」
 それならと言う薊だった。
「いいさ、じゃあな」
「ええ、寝かせてもらうわ」
「死ぬ間際に喋らせて悪かったな」
「だからそれは約束だからいいわ」
 またこう答えた怪人だった。
「もうこれでね」
「それじゃあな」
 こう話してだ、そしてだった。
 怪人は灰となり消え去った、それは鈴蘭が闘っていたハエトリソウの怪人もだった。彼女も灰となり消えた。
 そしてだ、後に残ったのは勝者達だった。だが勝者は戦いが終わってもそれでもだった。まだドラマは続いていた。
 薊は鈴蘭達と共に仲間達のところに戻ってだ、こう言った。
「すげえことがわかったな」
「ええ、かなりね」
 菖蒲が薊のその言葉に頷いて答える。
「わかったわね」
「想像以上に色々とな」
「相手も人造人間だったのね」
「まあ普通に生み出された存在とはね」
 菊も言う。
「思えなかったけれど」
「同じだったのね」
「私達とね」
「そうだったなんてね」
 しみじみとして言う菊だった。
「けれどね」
「生み出した人は違う」
「カリオストロ伯爵って」
 向日葵は怪人が最後に出したこの名前を呟いた。
「あの伝説の」
「博士も仰ってた様な」 
 桜は八条大学にいたあの博士のことを思い出した。
「サン=ジェルマン伯爵と共に」
「そんなことお話してたわね」
 菫も言った。
「錬金術師の名前を挙げていて」
「どうやらね」
 鈴蘭もいつもよりも遥かに鋭い顔になっている、そのうえでの言葉だ。
「神戸に戻ったらね」
「ええ、すぐにね」
 黒蘭は姉の言葉に応えた。
「博士のところに行くべきね」
「そうだな、神戸に戻ったらな」
 それこそとだ、薊も黒蘭に応えた。
「博士に聞くか」
「そうしましょう」
 鈴蘭も応える、そしてだった。
 薊達はとりあえずの方針を決めた、そうしてからだった。
 薊はあらためて周囲を見回してだ、こう言ったのだった。
「いや、ちょっとな」
「ちょっとって?」
「いや、何かここで戦うなんてな」
 かつて自分が遊んでいた場所でというのだ。
「思いも寄らなかったな」
「そうよね、そんなことはね」
「ああ、ただな」
「ただ?」
「不思議とな」
 首を傾げさせて言うのだった。
「違和感ないな」
「そうなの」
「親しんでる場所でしかも別に何も壊れなかったからな」
 戦いの中でというのだ。 
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