龍が如く‐未来想う者たち‐
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秋山 駿
第一章 崩壊する生活
第四話 来訪者
あの日から3日。
3日、経ってしまった。
花ちゃんに探りを入れてもらっているが殆ど空振りで、秋山もいろいろな所に足を運ぶが、田宮の事件の関連性どころか喜瀬の足取りもわからない。
全くの進展の無さにすっかり気落ちしてしまっていた所に、思わぬ来客が訪れる。
「あ!秋山さん!」
事務所の扉が開く音がしたと思えば、同時に花ちゃんの驚く声が耳に届く。
ソファーで新聞を読んでいた秋山が入口に目を移すと、見覚えのある顔がそこにあった。
「貴方、確か警察の」
「よぉ、秋山。久々じゃねぇか」
よれよれの茶色いコートと、少し白髪交じりの胡散臭そうな男。
伊達真、捜査一課の刑事だ。
以前秋山が救われ慕っていた極道者を偽っていた刑事・新井が関わった事件がキッカケとなり、2人はお互い顔見知りになる。
いかにもなベテラン刑事だが、鋭い勘と行動力が重宝されているのかいまだに現場仕事が多いようだ。
「伊達さん、どうしたんですか?」
「いやぁ、ちょっとな。お前に有益な情報持ってきたんだよ」
「有益な情報?」
2人が向かい合うようにソファーに座ると、そのタイミングで花ちゃんはすかさず淹れていたお茶を2人に差し出した。
伊達はひと口飲むと、再び向き直りこう口にする。
「お前、喜瀬を追ってるんだってな?」
どこから仕入れてきたのか、その言葉は予想外だった。
伊達はさらにもうひと口飲んで、口端をつり上げ笑う。
「別に、邪魔しようとしてるわけでもない。言っただろ?有益な情報を持ってきたって」
「どこで、俺が動いているという情報を?」
「刑事の勘を舐めんなよ?俺たちは、そういう動きに対して鼻がいいからな」
「確かに、おみそれしました」
味方にすると頼もしいが、絶対敵に回したくない人間だと心の中で強く思った。
秋山もお茶をひと口飲むと、改めて話を続ける。
「で、有益な情報とは?」
「政治家、田宮の殺人事件は知ってるだろ?」
「はい。ミレニアムタワーの屋上で殺された事件、ですよね。東城会が絡んでる」
「あの事件、実は俺が受け持っていてよ。まだ捜査段階だが、喜瀬が関与していたのはほぼ確実らしい」
「やはり、ですか」
「あとあまり言いたくないんだが、遥も喜瀬と一緒にいる。目撃情報があった」
その言葉に、重い空気が更に張りつめた空気になった。
消えた遥が、何故か喜瀬と行動を共にしている。
ふと机に置かれた写真は、花ちゃんがデスクから持ってきたものだった。
写っていたのは車に乗せられている遥の姿と、その後ろで怪しく笑う喜瀬の姿。
少しやつれているが、遥の姿に間違いはない。
喜瀬は今日会ったばっかりだが、極道らしくないバンダナを頭に巻いており簡単に判別可能だった。
「先程伊達さんから見せていただいたんですが、やはりかなりズームして撮られているので殆ど背景が写ってなくて場所はさっぱり……」
「そうか、やはりわからなかったか。秋山はどうだ?」
「いえ、俺にもわからないっすね。もっと少しでも何か見えていたら、もしかしたら分かったかもしれませんが」
「そうか。秋山なら、わかると思ったんだがな」
「俺、探偵じゃないですからね?」
ちょっと笑いながら写真を返すと、伊達は続けて喋りだす。
「攫われた現場は、田宮の殺害現場。つまり、ミレニアムタワーの屋上らしい。現場に、遥の指紋が残っていた」
「遥ちゃんが、田宮と一緒にいた?」
「可能性はある。今、部下の1人が喜瀬の周囲を調査中だ」
「伊達さんの部下が?それって危ないのでは」
「大丈夫だ、アイツは以前の経験を生かしてうまく立ち回ってるさ」
以前の経験?
言葉が少し引っかかるが、それを聞く前に伊達はお茶を一気に飲み干し立ち上がった。
後に続くように一緒に立ち上がると、1枚の紙が目の前に出される。
それは1人の人物の名前と、連絡先の書かれた紙だった。
「今、喜瀬の調査をしてる部下の連絡先だ。どうやら電話番号変わったみたいでよ、改めて渡してほしい言われてな。明日、こいつから連絡をよこしてくるだろう」
「伊達さん、どうしてここまで」
「俺は、桐生が死んだなんて未だに思っちゃいねぇんだ。桐生の真実を追うには、この事件が関係してると踏んでる。その為には、いろんな人の協力は惜しまねぇさ。例え今の立場を失ったとしても、な」
それは、秋山もお互い様だった。
死んだという文字だけ見せられても、到底納得できるはずがない。
少なくとも、桐生を知る者達は皆そう考えているだろう。
珍しく熱く語る伊達は、恥ずかしそうな顔を浮かべながらドアノブに手をかける。
「じゃあな、秋山。久しぶりに、【神室町のダニ】の姿を拝んで来い」
軽く手を振り、そのままスカイファイナンスを去って行く。
その姿を見送った後に紙に視線を落とすと、気になって駆け寄ってきた花ちゃんが横から覗きこむ。
「社長、どなたの連絡先なんですか?」
「花ちゃん。俺達、もしかしたら強い味方を手に入れちゃったかもね」
紙切れに書かれた、少し乱雑な文字。
気怠げに書いたであろうその文字に、無意識に笑みが溢れる。
綴られた名は、かつての戦友のものだった。
谷村正義、と。
後書き
お久しぶりです作者です
実は原案はシナリオ中盤まで出来ています
今回の主役は5人とかなり多めに考えてますが個人的に今までの龍シリーズのキャラをふんだんに出しているのでちょっとしたお祭り話みたいになってます
やっぱり自己満足なので苦手な方はUターン推奨です
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