少年少女の戦極時代・アフター
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
After24 救出成功
「紘汰っ」
何もない空間から突然、舞と、彼女に抱き支えられた光実が現れた。
「よかった……! 目が覚めたんだね」
「そういえば舞さんの本体は? ここじゃないの?」
「封印が解かれた時を考えて、あいつに別々の場所に分けられたんだ。大丈夫。俺たちの力でここからすぐに行ける。と、その前に」
紘汰は、気を失っている光実を抱えて浮かび寄った舞の前に出て、光実の肩を揺さぶった。
「ミッチ。起きろって。ミッチ」
「ぅ、ん……」
光実が瞼を開け、少しの間だけぼんやりと紘汰を見、目を瞠った。
「紘汰さん!! 無事だったんですね!」
光実は顔を輝かせ、紘汰が差し出した手を掴んだ。
「おう。この通りピンピンしてるぜ。咲ちゃんやお前や、それに戒斗のおかげでな」
戒斗の名に咲は、はっとした。
今も残ってロード・デュークを足止めしてくれている戒斗。
「紘汰くん、早く舞さんの本体のあるとこ行こっ。戒斗くんのとこ、早く戻ってあげなきゃっ」
「ああ。分かってる。――舞」
舞は肯き、紘汰と手を繋いだ。
すると、ジェットコースターの落下の一瞬に似た感じがして、次の瞬間には先ほどとはまた異なる、仄明るい空間にいた。
「舞さん!」
本来の舞が、たったさっきの紘汰と同じように、ヘルヘイムの植物の蔓に守られるように巻かれていた。
左胸にはやはり矢が刺さっている。
「光実くん。その矢抜いて、舞さんにオハヨウ言ってあげて」
「う、うん」
光実は緊張した面持ちで舞の本体に浮かび寄り、矢を掴んで抜いた。
「えと……おはようございます、舞さん」
――それは本当の意味で、白馬の王子様から眠り姫への目覚めのキス。
次の瞬間、ヘキサの体から金の粒子が散り、ヘキサの服装が普通のブレザーに戻った。
咲は慌てて傾ぐヘキサをキャッチしてから、本当の舞と光実のほうを見やった。
舞を包んでいたヘルヘイムの蔓は飛び散っていて、舞が静かに目を開けていた。
「ミッチ……」
「舞さんっ。大丈夫ですか? 僕が分かりますか?」
「うん。今までのことも覚えてる。ありがとう。助けに来てくれて。守ってくれて」
舞は明るい笑顔を光実に向けた。
光実は目を潤ませて首を横に振った。
「いつも励まされて、僕のほうが助けられてばかりだった。やっと、助けることができた」
光実と舞が両手を取り合った。誰のどんな再会より尊いものに、咲には思えた。
「――これで全員集合ね」
「ヘキサ! 起きたの? へいき?」
「ええ。ちょっとダルイけど、そんなにひどくないわ」
咲の腕の中、ヘキサはいつもの綺麗な笑顔を浮かべた。
「ヘキサちゃんも、ありがとな。舞をこの星まで連れて来てくれて」
「ありがとう」
ヘキサは首を横に振った。
「昔のわたしがしたことが、舞さんを辛い運命の中に投げ出してしまいました。その罪滅ぼしが少しでもできたなら、よかったです」
「碧沙……ずっとそんなふうに思ってたなんて……」
光実が来て、ヘキサの肩を抱き寄せた。
その時、図ったようなタイミングで咲たちの前にクラックが開き、光が雪崩れ込んだ。
「戒斗くんだっ」
外からクラックを維持する、と言った戒斗は、己の言を嘘にしなかったのだ。
「みんな、外に出よう!」
戒斗に一番に「ありがとう」を伝えたくて、何より彼の無事が嬉しくて、咲はクラックの外へ飛び出した。
ページ上へ戻る