魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~
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StrikerS編
94話:Power fight その先にいたのは…
前書き
ようやく書けました、94話。
色々忙しい毎日になってきましたが、なんとかやってます。
上空にて戦闘を行うなのはとフェイト、周囲はガジェットに埋め尽くされ、その真ん中に二人は陣取っていた。
周囲数メートルのところになのはの防壁が張られ、ガジェットの攻撃を防ぐ。その間にフェイトが用意した魔力弾を放つ、という構図なのだが、敵は実機と幻影の構成編隊。実際に撃ち落としている数よりも、幻影を撃ち抜いている数の方が多いのが現状だ。
「防衛ラインを割られない自信はあるけど…このままじゃちょっと、キリがないね」
防壁を張りつつ戦況を分析し、そう判断したなのはは、フェイトにそう語りかけた。
対するフェイトの方も、この戦況にある疑念を持っていた。
「ここまで派手な引きつけをするってことは……」
「地下か、ヘリの方に主力が向かっている…!」
「多分、士の方も囮…」
「あの状況だと、士君が出るしかなかったから、狙ってたのかも…」
そう判断すると、フェイトはバルディッシュを両手で持ち、真剣な眼差しを外のガジェット達に向けた。
「なのは、私が残ってここを抑えるから、ヴィータと一緒に…」
「フェイトちゃん、それは…!?」
「コンビでも、普通に空戦してたんじゃ、時間がかかりすぎる。―――限定解除すれば、広域殲滅で纏めて落とせる」
「それはそうだけど……」
確かに、フェイトの言っている事は正しい。
フェイトの限定解除―――バルディッシュ・ザンバーフォーム。半実体化した魔力刃を振るうそれは、魔力を通わすことで刀身を更に巨大化させ、一振りで広域殲滅の攻撃が可能だ。
しかしそれは、こちらの手札を一枚、敵側に晒す事となる。今まで頑なにこちら側の戦力を晒さずに戦ってきたからか、なのはには少し抵抗があった。
だがフェイトは、そんなデメリットがあると知りつつも、そうするのがベストと感じていた。
「―――なんだか、嫌な予感がするんだ。こうでもしないと、もしかしたら取り返しのつかないことに…!」
「でも、フェイトちゃん…!」
ガジェットを使った大規模な囮に、未だ詳細が判明しない〝少女〟という要素。ここまでの事は今までにない点が多く、そう感じるのも無理はなかった。
しかしそう感じているのは、何もフェイトだけではなかった。
『―――割り込み失礼! ロングアーチからライトニング1へ、その案も限定解除申請も、部隊長権限にて却下します!』
「は、はやて…!」
「はやてちゃん、なんで騎士甲冑!?」
背中合わせだった二人の間に出現したモニターに映ったのは、自らのバリアジャケット―――もとい騎士甲冑を身に纏った六課の部隊長、はやての姿だった。
彼女はフェイトと同じくこの戦況に嫌な予感を感じ、六課の後見人であるクロノ・ハラオウンに、自らの限定解除許可をもらう事にしたのだ。
はやての魔法は広域型の物が多い。上空で飛び回るガジェットを一掃するのに、彼女以上にうってつけの人物は六課にはいない。
とはいえ、はやてが戦線に出てくるという事には、それだけリスクがある。
はやて自身はSSSランク魔導士、なのは達と同じ部隊にいられるように、彼女もなのは達と同じように出力リミッターを、自分自身にかけている。
そのリミッターを解除するには、六課の後見人であるクロノと、同じく後見人である〝カリム・グラシエ〟の二人から許可をもらう必要があり、しかもその許可は現状一人に一回ずつ、計二回しかできない。
六課における、切り札とも言える手札(カード)。それだけにリスクも大きいが……
『大丈夫や、なんとかなる。そんな難しく考えんでもええよ』
難しい表情をしていたなのはとフェイトの気持ちを察してか、はやては二人にそう言った。
そして『ちゅう訳で…』と表情を引き締め、二人にヘリの護衛を命じ、同時に回線を繋いでいたヴィータとリインにも、フォワード陣のフォローに回るよう指示を出した。
了解、とはやての指示に従う四人。しかしなのはとフェイトは、少し気になる点があった。
それは先程も話題に出た、士の方の戦況だ。
「はやてちゃん、士君の方は?」
『あぁ、士君な。さっき連絡が来てな、ガジェットは倒した言うんやけど…なんか足止めを食らってるらしい』
「やっぱり…」
『それも相手は〝仮面ライダー〟なんやて』
「「……え?」」
はやての言葉に、目を見開く二人。その反応を見て、はやては心の中でうんうん頷いた。
『しかもリミッターを二段階解除やて…あの感じは結構やばそうやったで』
「そっか…なんで仮面ライダーが相手なのかは、ちょっと気になるところだけど…」
「……きっと大丈夫。士が負けるところなんて、想像できないし」
それもそうだね、と納得するなのはとはやて。三人の想い人であるからか贔屓目に感じてしまうが、それでも士が強い事に変わりはない。彼が負ける事など、三人には到底想像できなかった。
「取りあえず、目の前の敵に集中しよう」
『せやね。二人共、安全なとこまで下がっててな」
「了解、はやてちゃん」
なのはの答えに、はやては頷いて通信を切った。そしてその場にいる二人はお互いの顔を見合った後、一度頷き降下しながらガジェットを迎撃した。
「はぁぁぁッ!」
「ハァッ!」
交錯する互いの得物によって、金属音が鳴り響く。
片や剣、片やスピア。それぞれ同じような間合いの武器である分、互いに一太刀も浴びせていない。
しかし、同じ間合いの武器同士でも、戦闘において差が生まれる事がある。その要因の一つが―――
「ハァッ!」
「ぐッ、がぁッ!」
―――〝基本能力(スペック)〟である。
例えば二人の剣士がいたとしよう。もし同じ長さで同じ切れ味の剣を持っていたとして、その場合勝負はどうなるだろうか。
同じ力量、より詳しく言うならば筋力、持久力、防御力と言った〝力〟が同じだった場合は、どうなるかは予想し辛いだろう。
だがもし一方の筋力が極端に強い場合、おそらく戦いはその一方の力が目立つものとなり、十中八九筋力の強い方が勝つであろう。
他にも動きがより身軽ならば、相手の攻撃を避け続ける事もできるだろうし、剣での防御に長けていれば、相手の攻撃を全て防ぐ事もできるだろう。
勿論この説明通りに事が運ぶとは限らない。強くても体調が悪ければ十全に戦う事は困難だろうし、集団戦や地形といった色々な条件によって状況は変わっていく筈だ。
しかし、こと一対一や白兵戦において、その力量が近ければ……
「はぁあッ!」
「ッ、フンッ! ハァッ!」
「ぐぅッ!」
差がある部分が際立って見えてくる。
今の…ディケイドとバロンにおいては、バロンの方がパワーが高く、それを生かした白兵戦によって戦いを優勢に進めていた。
突きを食らい怯みはしたものの、踏みとどまりながら剣を振るう士だったが、スピアに防がれた上に弾かれ、がら空きの腹へ柄の部分での突きを食らった。
突かれた腹部を抑えながら数歩下がる士。顔を上げるとバロンはスピアを振り上げており、士もそれに合わせすぐさま剣を振るった。
ほぼ同時に両者の肩に互いの得物がぶつかり、金属音が鳴り響く。両者の得物は少しばかり均衡するが、すぐに振り切られ二人の体から火花が散る。
両者が苦痛に怯み、数歩後退する。だがバロンは士よりも早く前を向き、スピアを構えた。士もそれを見て剣を横から振るうがバロンはそれすら防ぎ、擦れ違い様に胴切りを食らわせる。
士は呻き声を上げながら前に倒れ、そのまま地面に転がった。バロンはそれを見ながら余裕、と言った雰囲気でゆっくりと振り返った。
流石に地面に倒れたままではいられない、士はすぐさま立ち上がり剣を構える。
「その程度か、ディケイド。期待外れもいいとこだな」
「はっ、言ってろ。その余裕な態度、今すぐぶち壊してやる」
だといいがな、とバロンは鼻で笑いながらスピアを構え始める。
しかしこのまま戦い続けたなら、パワーで押し負けてしまうのは目に見えている。ならばどうするか。―――簡単な話だ。
「パワーには、パワーだろ!」
〈 FORM RIDE・DEN-O AX 〉
「ハァッ!」
そう言ってライドブッカーから取り出したカードをトリスに挿入、発動する。そこへバロンはスピアで攻撃してくるが、士は避ける。
もう一度バロンが攻撃しようとスピアを振るった時、士の姿が別の物へと変わり、周囲に魔力から変換したフリーエネルギーでできた鎧―――〝オーラアーマー〟が出現し、バロンの攻撃を防ぎ弾いた。
攻撃を弾かれたバロンは一旦下がる。その間に出現したオーラアーマーは別の姿になった士の体に装着され、黄色の鎧が出来上がる。
そして顔面部にあるデンレールを伝って、斧型のレリーフが眼前まで来ると、外側から左右に展開して『金』の字を象った仮面へと変形する。
士は新たに変身した姿―――〝電王・アックスフォーム〟となり、胸を張るように腕を広げ、その後再びライドブッカーからカードを取り出した。
〈 ATACK RIDE・DENGASHER 〉
発動されたカードによって、士の手元には〝デンガッシャー〟の四つのパーツが収まる。士はすぐさまそれを組み立て、眼前に構えた。
組み立てられたデンガッシャーは、フリーエネルギーが供給され〝デンガッシャー・アックスモード〟へと変形した。
「さぁ、行くぜ!」
変形したデンガッシャーを手に、士はバロンに向かって駆け出した。対するバロンもそれに応じるように、スピアを構え走りだす。
互いの得物を振るい、衝突させる。先程までとは違う重々しい金属音が広がり、両者の力がぶつかり合う。
ギリギリ、という金属同士が擦れる音を響かせながら、眼前まで迫った相手の顔を睨みつける。
それが数瞬続いたと思うと、二人は一旦離れる。そしてすぐに自らの得物を振り上げ、相手を襲わんと振り下ろす。
ギンッギンッと二度程振るわれたが、互いにぶつかり合ったおかげで体に当たることはなく、両者共に無傷に終わる。
だが次に武器が振るわれた瞬間、士のパワーの方がバロンのそれを上回り、遂にスピアを弾いた。
「だぁッ!」
「グゥ…ッ!」
スピアを弾かれ防ぐ術をなくしたバロンに、士は容赦なく斧を振るう。
高い破壊力を誇るデンガッシャー・アックスモードの一撃は、防御力の高いバロンを数歩退かせる程のものだった。
切られた胸部を抑えつつ数歩退いたバロンは、それでも突貫し突きを繰り出したが、その攻撃は士の持つ斧によって弾かれてしまう。
しかしバロンもそれだけで済ます訳がなく、再びスピアを振り上げ士に向かって振り下ろした。
士はその攻撃を防ぐ訳でもなく、そのまま肩に受け小さく『ぐッ…』と呻く。スピアの攻撃は士の肩に当たったことで火花を上げ、士に少々のダメージを与えたがしかし、結局はそこ止まりだった。
スピアを肩で〝受け止めた〟士は、左手に持ち替えたデンガッシャーを振り下ろした。破壊力のある一撃を再び受けたバロンは弾き飛ばされ、遂に地面に転がった。
士がディケイドから電王・アックスフォームへと変身した事で得た物は、強靭なパワーもそうだが、それだけではない。
魔力から変換したフリーエネルギーで作られたオーラアーマーによってもたらされた、強固な防御力。それも現在のバロンのそれを上回る程のものだ。
これによってバロンの攻撃を敢えて受け、間合いは小さいが破壊力抜群のデンガッシャー・アックスモードの攻撃範囲へとバロンを近づけたのだ。
「どうだ、少しは期待に応えられたかな?」
「フッ、それはどうだろうな」
汚名返上、と言わんばかりに言い放つ士。だがバロンはゆっくりと立ち上がると、スピアを突き立てて左腰に付いていた何かを取り出した。
それはまるで錠前のような見た目をしており、士に見せる側は赤と黄色で塗装され中央に文字の書かれていた。
士が仮面の下で眉を顰め疑問に思っていると、バロンは取り出した何かの側面にあるスイッチを押した。
〈マンゴー!〉
「……は…?」
瞬間、バロンが取り出した何かから聞こえてきた音声に、士は目を見開き言葉を漏らした。
しかしそんな事お構いなしに、バロンはベルトに付いていた同じような形状のものを取り外し、代わりに先程取り出した物を取り付け、掛け金のような部分を押し込んだ。
〈ロック・オン〉
「……え…?」
再び音声が流れたと同時にファンファーレが鳴り始め、バロンの頭上の何もない空間に、突如としてファスナーが円を描くように現れた。
それを見て再び言葉を漏らす士。その間にもファスナーは動き、空に穴を穿った。そしてそこから赤い何かが、少しずつ降下しながら現れたのだ。
そして赤い何かがバロンの頭上数メートルのところまで来ると、バロンはベルトにある刀のようなパーツを手に取り、セットした錠前を斬り落とすように動かした。
〈カモンッ!〉
切られた錠前は前部分が展開され、音声が流れた。
それと共に頭上にあった赤い何かが開き、そしてバロンを包むように装着された。
〈マンゴーアームズ! Fight of Hammer ! 〉
背中に移動した赤い何かの皮がマントとなり、山吹色の鎧に角が下となった兜を装着した姿となった。そして先程まで会ったスピアは消え、代わりにメイス型の武器が手に収まっていた。
バロンのもう一つの姿―――〝バロン・マンゴーアームズ〟だ。
とはいえ、士がそのことを知ってる訳もなく……
「はッ!? マンゴー!?」
「行くぞ…!」
士が変わったバロンの姿を見て驚いている間に、バロンは手にしたメイスの武器を引きづりながら一歩ずつ近づいて来る。
驚いていた士もバロンの近づいて来るバロンの姿を見て、一度深呼吸をして心を落ち着かせた。
目の前にいるのは、バロンという名のライダー。仮面ライダーは憧れたが、眼前にいる彼は敵だ。驚くよりも、今は戦うべきだ。
そう判断した士はゆっくりと両足を開き、腰を下ろす。右手に斧を持ちながら前へと構え、丁度力士が四股を踏むような格好になった。
対してバロンは歩くペースを少しずつ速めていき、メイスを振り上げる。
「―――……はぁぁぁああああッ!」
「だぁぁぁぁッ!」
そして残り数メートルのところでバロンは振り上げたメイスを振り下ろし、士は最大限の力を込めたアックスを振り抜き、二つの武器は二人の中央で衝突した。
先程までの金属音とは全く違う、重々しい音が響き渡った。瞬間両者の武器がそれぞれの勢いで跳ね返され、二人は数歩分後退する。
足で地面を擦りながら後退する二人、双方の手は、腕は、その衝撃の大きさに震えていた。
(なんッつう破壊力だ! アックスでも、下手すれば力負けするぞこれ!)
(…腕が痺れる、勢いを付けてもこれか。〝こいつ〟なら勝てると思ったが、そう甘くはないか…!)
両足を踏ん張り、後退が止まったところでそれぞれがそう思考する。共に破壊力、防御力に優れた姿、攻撃の面ではどちらも一歩も譲らず、互角だとお互いが判断する。
しかし今更退くようなマネをする訳もなく、二人はお互いの顔をキッと睨んだ後、再び間を詰めるように走り出した。
始めに攻勢に出たのは、バロンだった。
距離が十分に縮まったところでメイスを振り上げ、士の頭上へと振り下ろす。
勿論、士も手持ちの斧で対抗しようと頭上に持ち上げるが、ここで武器のある部分での差が生まれた。
それは質量。確かに破壊力の面に関しては双方の武器はほぼ互角であり、非常に高い物だ。しかし、武器の性質上士の持つデンガッシャーは決して重くはない。
そもそもデンガッシャーは電王の、それぞれ能力の違う4フォーム全てで使う武器だ。それぞれが別の形へと変形させる事で自らのスタイルに合わせるが、どんな組み合わせでも結局は同じ物、同じ質量なのだ。
しかしバロンの、マンゴーアームズの専用武器〝マンゴパニッシャー〟は、マンゴーアームズに合わせた質量の大きい武器だ。
今回の場合振り下ろす事によって重力が加わり、質量の重い分破壊力の増したバロンの武器に、士はアックスを構えるのみだった。
そうなると士の武器が弾かれるのは当然の結果で、その破壊力に腕が思う様に動かなくなってしまう。
「ハァッ!」
「ぐッ、がぁぁぁ!」
そこへメイスによる突きを士のどてっぱらへ打ち込むバロン。当然の破壊力に士は体はくの字に曲がり、顔は下を向く。
バロンはそこに追い討ちをかけるように、メイスを振り上げ士の顎を狙った。咄嗟に未だ痺れる腕をどうにか動かし防ごうとするが、メイスの破壊力に負け吹き飛ばされてしまう。
一瞬の火花を散らし、地面を転がる。そこへ更にバロンが詰め寄り始める。慌てて起き上がる士、痛みに耐えながらも反撃に出るべくカードを取り出す。
その間に士に詰め寄ったバロンは、メイスを振り回し攻撃する。が、士はその攻撃を弾くか躱すかして、全て躱し切っていた。
確かにバロンはマンゴーアームズの恩恵で、パワーと防御力が上がった。しかしその分、動きの速さを犠牲にしている。いくら破壊力があろうが、当たらなければ意味をなさない。
一つずつ、丁寧に見切りながら、士はアックスでメイスを逸らし、上半身で攻撃を避ける。そして少しの一瞬にできた隙に、カードをバックルに入れ発動する。
〈 ATACK RIDE・TSUPPARI 〉
「はッ!!」
「ぐ、は…ッ!」
メイスの一撃を躱したところで、バロンの懐に飛び込むように右足を踏み込み、同時に右の手の平を突き出す。掌底のような一撃を受けたバロンは肺にあった空気を一気に吐き、苦悶の表情を浮かべる。
士が放ったのは、相撲の力士がよく使う技の一つ〝つっぱり〟だ。腕力のあるアックスフォームで繰り出されるそれは、力士が普通にやるそれを難なく超える威力を誇る。
しかしつっぱりとは、一発で終わる物ではない。遅れていた左足を右足と同じ並びへ運び、右手と同じく左手もそれに合わせるように突き出し、そこからは両足を踏ん張りながらの両手を連続で突き出した。
そして最後に両手同時に突き出すと、バロンは勢いよく吹き飛ばされ、地面を転がった。
「悪いが時間がないんだ、そろそろ終わらせる…!」
〈 FINAL ATACK RIDE・de de de DEN-O ! 〉
「ッ! させるか…!」
〈マンゴースカッシュ!〉
地面に転がったバロンを見て、士は新たなカードを取り出しバックルに挿入する。
対するバロンも、急いで膝立ちになり刀を模したパーツを倒す。
「ふ、はぁぁぁぁ―――はッ!」
「フンッ、はぁぁぁぁぁ…ッ!」
士は手に持っていたデンガッシャー・アックスモードを放り投げ、相撲を取るかのように前かがみに構え、バロンはメイスを小脇に抱えるように持ち、力を込めていく。
そしてバロンが持つメイスの先端に、角切りとなったマンゴーの果実状の残像が蓄積される中、士は宙に投げたデンガッシャー目がけてハイジャンプをした。
「「はぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」」
見事空中で斧を掴んだ士は、魔力から変換したフリーエネルギーを斧へと移し、落下する勢いのままバロンへと斧を振り下ろす。
対するバロンは、エネルギーの蓄積されたメイスを突き出す構えをとりこれを迎え撃つ。
衝突する二つの必殺技。瞬間閃光が二人を包み込み、衝撃が体を襲う。
閃光はすぐに晴れ、二人はお互いの眼前に立っていた。
「―――俺の、勝ちだな」
その言葉が放たれた時、後方で何かが落ちる音がした。
先程の衝撃で弾き飛ばされた武器―――マンゴパニッシャーが落下した音だ。
今言葉を発した士の手には、変わらず斧が収まっており、その刃はバロンの肩に当たりながらフリーエネルギーを帯びていた。
「……俺はお前に屈していない、必ずリベンジする」
「なるほど…面白い男だな、お前は」
バロンの言葉に笑みを浮かべる士。そして今一度斧を持つ手に力を籠め、一気に振り抜いた。
数歩下がりながら呻くバロン、その声は次第に叫び声へと変わり、その身は爆炎に包まれた。
「―――ダイナミック、チョップ…」
その爆炎が治まってから、士は自らの必殺技の名を口にした。
これにて、士―――ディケイド対バロンの戦いは終わった。
―――しかし
先程までバロンを包み込んでいた炎から、光る球体が突如として現れた。
驚く士だが、球体はそのまま移動していき、とあるビルの角を曲がって見えなくなった。
それを追うべきか迷っていると、その角から人が現れた。高い位置で結ばれた水色のような髪に、端正な顔立ち。しかしそれに似合わないボディースーツに身を包んだ青年だ。
そんな彼は、ジッと士の事を見ている。その行動に不信感を抱いた士は眉を寄せる。
この状況が一分、二分と過ぎた時、青年はようやく動き出した。士に向かって、ゆっくり歩き出したのだ。
「今の戦闘、見させてもらった―――ディケイド」
青年は〝ディケイド〟の名を口にしたが、士は驚きはしない。何故なら、彼の正体がなんとなくわかっているからだ。
「そうかい。で、参考にはなったかな…?」
士はそう言うと、先程まで肩を叩いていた斧の先端を向け、彼の正体を宣言した。
「―――〝ディエンド〟さん?」
当たりだったのか、青年の体が一瞬跳ねる。だがそれで歩みが止まる訳はなく、青年は十分に近づくと足を止めた。
「こちらの正体にも気づいたか、なら話は早い。やはり君は、僕と〝同じ〟らしいな」
同じ? と、青年の言葉に疑問を覚えるが、青年はそんなのお構いなく〝ある物〟を取り出した。
「取りあえず、今は君を足止めしなくちゃならない。〝みんな〟の邪魔をさせない為に」
「何…?」
〝足止め〟と、青年は言った。という事は、なのは達の方で何か起こっているのか?
そう思った士は、通信を取ろうとトリスに指示を出す。しかしトリスからの返答は、『繋がらない』という結果だった。
「通信をしようとしても無駄だ、あらかじめ結界を張らせてもらった」
いつの間に、と今度こそ驚く士。魔法で発動された痕跡はなく、結界に入った時の空気が変わる感じもしなかったからだ。
対する青年は、驚く士を見ながら先程取り出した〝ある物〟を構え、懐から一枚のカードを取り出した。
「君はもう逃げられない。彼女達の下へ行きたくば、僕を倒すか、おとなしくしているかのどちらかだ」
〈 KAMEN RIDE ――― 〉
青年はそう言いつつ、取り出したカードを〝ある物〟へと差し込み、前方へスライドさせる。
それと同時に音声が流れ、音が鳴り響く中頭上へ掲げ、あるワードを口にした。
「〝変身〟」
〈 DIEND ! 〉
放たれたワードと共に引き金を引き、〝ある物〟から数枚の板が飛び出す。
同時に青年の周りに残像のような物が複数現れ、それらが青年の体と重なると、青年はその姿を変えていた。
そして宙を舞う板が姿を変えた青年の顔へ突き刺さると、青年の姿に色が追加される。
青年の髪と同じ水色―――否、シアンがベースとなった、新たな姿。彼の名は―――
―――〝仮面ライダーディエンド〟
「さぁ、どちらか選べ。おとなしくしているか、僕と戦うか」
新たな姿へと変貌した―――〝変身〟した青年は、手に持つ〝ある物〟―――ディエンドライバーの銃口を向け、士にそう言い放った。
明らかな敵意を向けられた士は、ライドブッカーから新たなカードを取り出しながら、口を開いた。
「そんなもん、決まりきった事だ」
〈 FORM RIDE・DEN-O ROD 〉
取り出したカードをバックルに入れ、再び自らの姿を変化させる。
黄色ベースの先程とは違い、亀の甲羅のような見立ての青いアーマーを身に纏い、仮面に現れた亀のようなレリーフは変形し、新たな仮面へと変わる。
新たな姿―――〝電王・ロッドフォーム〟だ。
「お前を退けて、あいつらの下へ向かう。それが俺の答えだ!」
そう叫んだ士は、変身した青年―――ディエンドへ向かって走り出した。
後書き
予告で使ったセリフを使わなかったっていう……申し訳ないです。
そしてようやくディエンドさんの登場です。といっても、戦闘シーンは先送りですが…
前々回ぐらいに書いたと思うのですが、ホームページについては何もなかったので、なしという事で。
そんでまぁ…色々考えた結果―――
新しい小説、書こうかなぁ……なんて。
と言っても、ライダーもリリなのも関係ない物になりそうですが……
取りあえずプロローグ書けたら載せますので、よかったらどうぞ。
次回はディケイドvsディエンド。
いつになるかはわかりませんが、待っててください。
ご意見ご感想、お待ちしております。
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