美しき異形達
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四十九話 一時の別れその九
激しい動きの中でだ、こう怪人に言った。
「これはね」
「凄い攻撃でしょ」
「ええ、一瞬でも遅れると」
「それで終わりよ」
「私が昆虫になるわね」
ハエトリソウに捕らわれたそれにだ。
「そうなるわね」
「実際にそうなるのよ」
怪人はその無数の葉が下から出る中でまた言った。
「これからね」
「そうね、このままだとね」
「覚悟はいいかしら」
「覚悟?ないわよ」
鈴蘭は笑って返した。
「一切ね、ただ」
「ただ?」
「勝つ自信はあるわ」
死ぬ覚悟ではなく、というのだ。
「それはね」
「言うわね」
「ええ、言うわ」
こうも言った、実際に。
「この程度ではね」
「負けないというのね」
「そうよ、まだね」
「ではどうするというのかしら」
「この距離で攻めても」
怪人をだ、刀から気なり雷なりを放ってだ。
「貴女は防ぐかかわすわね」
「簡単にね」
「そう、貴女には接近戦しかないわ」
まともに攻撃を仕掛けるにはというのだ。
「それもね」
「それもなのね」
「そう、普通に接近戦を挑んでも無駄ね」
「さっきみたいにね」
「そうね、だからね」
それで、というのだ。
「普通にしても勝てないから」
「ではどうするのかしら」
「こうすればいいのよ」
下から葉が次々と来るが全てだった、鈴蘭は跳びかわしていた。そこで。
また下から来たところでだ、鈴蘭は消えた。
怪人は姿を消した鈴蘭を目で追った、だが。
何処にもない、そのことに焦りを覚えたところで。
横からだった、突如。
激しい焼ける様なそれでいて鋭い痛みを感じた。その横を見れば。
刀を右から左に一閃させていた鈴蘭がいた。刃は彼女の雷の色である白で輝いていた。その一撃だけでなく。
鈴蘭は上から下にも刀を一閃させた、それが止めとなってだった。
怪人の背に符号が出た、その符号を見てだった。
唐竹割りに切った鈴蘭は笑ってだ、こう怪人に言った。
「決まったわね」
「どうして横に来たのかしら」
怪人は死を前にしても何とか己の足で立ちつつ鈴蘭に問うた。
「一体」
「これまでは低く跳んでいたわね」
「ええ」
「けれどね」
その葉をかわす為の最低限の高さで跳んでいたのをというのだ。
「変えたのよ」
「高く」
「そしてその着地した場所は」
そこはというと。
「貴女の真横だったのよ」
「そして着地と同時に」
「切ったのよ」
そうしたというのだ。
「そして止めにね」
「唐竹割りね」
「それを出したのよ」
一瞬のうちにだ、そうしたというのだ。
ページ上へ戻る