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ソードアート・オンライン 少年と贖罪の剣

作者:星屑
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第十一話:二刀流/是、射殺す百頭

 
前書き
随分と久々な更新で申し訳ありません。更に、今回の話は特にFate要素が強いです。もう、凄いです。一応Fateが分からない方も問題なく読めるようにはなっているはずですが、一応ご注意ください。

† ☆ † 以降…推奨BGM『EMIYA』 

 


「ッ…!!」

 黒の外套が翻り、襲い来る途轍もなく重い一撃を、なんとか受け流す。
 相変わらず凄まじい一撃を放つ黒の剣士の斬撃を右手のエスピアツィオーネで捌きつつ、左手に体をすっぽりと覆い隠す程大きなタワーシールドを持つ。

 刹那に届いた鋭く、そして凄まじく速い連続刺突に歯を食いしばって耐えて、タワーシールドを消す。

「フッ!」

 そしてスキルディレイに縛られている閃光を蹴り飛ばし、黒の剣士の上段の薙ぎ払いを体を屈めて回避、次いで、反撃に移る。

 とは言え、相手はあの黒の剣士。当然、一筋縄で行くはずもない。
 首を刈り取る筈の一撃は、雷光の如き速さで引き戻された漆黒の直剣に防がれる。

「相変わらず隙がないよな、レン…!」

「お前は速いし重いしで戦いたくないんだよ…!」

 互いに笑みを浮かべているが、鬩ぎ合う剣に加わっている力はこの世界随一だ。自然、飛び散る火花に似たライトエフェクトは激しい。

「私を忘れないで欲しいなぁ!」

 音も無く接近してきたアスナが、鍔迫り合いで動けないレンに向けて容赦なくランベントライトの切っ先を突き込んだ。

 舞い散る火花。響く金属音。

「勿論、忘れてなどいないさ」

 青く美しいレイピアを防いだのは、無骨な斧剣。荒削りなその様相は、とてもではないが『斬れる』ようには見えない。
 しかし、この剣はそれでいいのだ。

 圧倒的な質量。
 これを以って圧し潰すのみ。戦術やテクニックなど何もない。ただ、力を込めて振るうだけ。

「うお!?」

「きゃっ!?」

 レンには珍しい力任せの攻撃に、キリトもアスナも反応が遅れ、薙ぎ払われた斧剣に弾き飛ばされる。

 体制を崩したアスナに、間髪入れずに追撃が加わる。
 斧剣をなんとかレイピアで防ぐ。重すぎる一撃。歯を食いしばって耐えた次の瞬間、斧剣はポリゴンになって消えていた。

「え––––?」

「隙あり」

 全身を貫く超重量の衝撃が一気に消え去ったのに反応できなかったアスナは、レンの二の太刀ーーエスピアツィオーネから繰り出された斬撃によりHPが危険を示すイエローを示した。
 一撃決着形式のデュエルは、どちらかのHPが危険域を示すイエローを示した時点でそのプレイヤーを負けとして終わりとなる。

 勿論、そのルールは2対1という変則ルールにも適用され、結果、このデュエルは辛くもレンの勝利という結末を迎えた。



「ふぅ……」

 先の亡霊王よりも手強い二人とのデュエル。何故そんなことになったのかと言うと、まあ、ノリであったとしか言いようがない。

 肉体的は勿論、精神的な疲労も多大に受けて、レンは溜息をついた。

「いやー、やっぱり強いねレン君」

「アスナも十分強いさ。正直、最後の連続刺突を防げたのは運が良かっただけだからな」

「とか言いつつ、今まで俺達は一度もお前に勝てないんだけどな」

「負けるのは癪だからな」

 こうして三人が変則デュエルをするのもこれで十度目だが、これまでの戦績は全てレンの勝利に終わっている。

 こう見えて極度の負けず嫌いなのがレンという男だ。気乗りはしなくても、勝負ならば勝つために全力を尽くす。

「それで、今日はなんの用だ? わざわざデュエルだけしに来た訳ではないんだろう」

 亡霊王を倒してから数日、無事に第73層攻略作戦を終えたレンはちまちまと迷宮区のマッピングを行っていた。今日も今日とて絡んでくるユメを躱して迷宮区へ籠もろうと家を出たところで、キリトとアスナが訪ねてきたのだ。

「話が早くて助かる。実はちょっと手伝って欲しい事があってだな」

「なんだ、面倒事か?」

「まあ、そんなとこだよ」



† †



 場所は変わって迷宮区へと続く森の中。アスナ、キリト、レン、そしてユメの即興パーティは灌木の茂みの陰で隠れていた。
 目立ち易い白と赤の団服のアスナにはキリトが自前のコートをかけ、白統一装備だったレンも今は濃紺の装備を身につけていた。ちなみにユメは元々青い装備のため特に羽織る必要もなくレンの隣に腰を降ろしていた。

 彼らの眼下にある道では、十二人のプレイヤーが二列縦隊で行進していた。

「軍か…」

 彼らは『アインクラッド解放軍』。第一層に居を構える大ギルドだが、ここしばらくは攻略活動を潜めていた。しかし噂によればここに来て活動を再開したという。それがどういった目的なのかは定かではないが、長らく最前線を離れていた彼らがいきなり未踏破層に来て大丈夫なものか。

 重厚な鎧が擦れる音が遠ざかる。知らず、潜めていた息を大きく吐き出して茂みから出る。

「さて、ここに何の目的があるのやら」

「ひょっとしたら……ボスモンスター攻略を狙っているのかも…」

 各層に必ず出現し、最上を目指すプレイヤーを阻む最大の敵。恐ろしく強いが、なるほど。確かに、ボスモンスターを倒せたならば話題性は抜群だろう。

「それであの人数か…でもいくらなんでも無茶だ。七十四層のボスはまだ誰も見たことないんだぜ。普通は偵察に偵察を重ねた上でボスの戦力と傾向を確認して、巨大パーティを募って攻略するもんだろ」

「ボス攻略だけはギルド間で協力するもんね。あの人たちもそうする気かな……?」

「…なにはともあれ、進んだほうがいいと思うよ。正直、キリトとアスナの甘ったるーい空間を見てると砂糖吐きそうだし」

「同感だ」

 ユメの言葉にバッ、と離れる二人。よく見なくても顔は真っ赤だ。

「取り敢えず進むぞ。オレとユメが先行するから、お二人はどうぞ後ろで仲良く」

「お熱いことで~」

「レ、レン…!!」

「ユメちゃんも…!」



† †





「フッ!」

 森を抜け、迷宮区に突入してから数時間。場所は七十四層迷宮区の最上部近く、左右に円柱の立ち並んだ長い回廊の中間地点。

 身長二メートルを超える巨体は全てが骨により構成され、不気味な青い燐光を纏っている。右手には長剣、左手に金属盾を装備したその敵の名は《デモニッシュ・サーバント》。見た感じ筋肉など欠片一片もない癖に恐ろしい筋力パラメーターを持つ難敵だが、しかしこの四人にとっては造作もない存在だ。

「スイッチ!」

 キリトの斬撃がデモニッシュ・サーバントに直撃、ノックバックした刹那を狙って、入れ替わりで飛び出したレンの一閃が、骨騎士の頭蓋を刈り取った。

「いやぁ……私達もういらないんじゃない?」

「そんな事言ってないで、構えた方がいいよユメちゃん」

 男二人の猛攻に、先程からデモニッシュ・サーバントは手出しができない。当たり前だ。二人はこの世界で随一のトッププレイヤー。止めたければ、ボスクラスのモンスターを呼ぶしか方法はない。

「シッ!」

 キリトの背後から飛来したクリミナルエスパーダの漆黒の剣身がデモニッシュ・サーバントの胸骨を貫いた所で、その巨大が青いポリゴンになって霧散する。

「さて、先を急ごう」

 エスピアツィオーネを鞘に収めつつ、周囲を見渡す。
 薄青い光に照らし出された回廊。ちまちまとマッピングしてきたデータの残る空白域もあと僅か。
 あと少し進めば、この先には恐らくーー

「……これって、やっぱり…」

「多分そうだろうな……ボスの部屋だ」

 回廊の突き当たり。これまでの回廊が開けた空間には、灰青色の巨大な二枚扉が行く先を阻んでいた。

「…覗いてみる?」

「ボスは守護する部屋からは出ることはない。ドアを開けるだけなら大丈夫だろう。ましてや、この面子だ。なにかイレギュラーが起こらなければいざ戦闘になっても逃げ切ることはできるだろう」

 そう自信を持って答えるレンに、三人も頷きを返す。

「一応転移アイテムを用意しといてくれ」

「うん」

「はーい」

 四人とも、片手に青いクリスタルを握る。これさえあれば、一先ず死ぬ前に離脱することができる。なにもこのメンバーのみでボスを倒そうという訳ではないのだ。深入りする必要は微塵もない。

「いいな…開けるぞ…」

 キリトを先頭に、固く閉ざされていた鉄扉は滑らかに開いていく。

「…油断するなよ」

「分かってるよ」

 薄ら寒さを感じる不気味な暗闇。部屋へ入り込んで、四人は互いに背を預けあい四方を警戒する。

「なにも、ない…?」

 暗闇に耐え切れず、ユメがそう口にした途端だった。
 入り口から僅かに離れた床の両側に、ボッと音を立てて青白い炎が燃え上がった。そこからは、凄まじい早さで周囲の炎が灯っていく。

 薄青い炎に照らさらた空間は予想よりも狭く感じられた。しかしそれは直ぐに間違いだと判断する。
 なぜなら、激しく揺れる青炎の向こうから、徐々に巨大な姿が出現しつつあったためだ。この部屋の圧迫感はその巨大な影によるものに違いない。

 見上げる程大きな体躯は、全身が鋼のような筋肉に覆われている。肌は青炎に負けぬ深い青。頭部は人間のものではなく、両側から突き出ている捩れた角を見るに、羊だろうか。こちらに向けられる瞳は青白く輝き、眠りを妨げた侵入者を敵意を持って見据える。
 その姿は、正に『悪魔』。そしてその名は、《The Gleameyes》––––つまり、輝く目。

 そこまで読み取ると、突如として青い悪魔は雄叫びを上げた。それは謂わば開戦のゴング。手に持った巨大な斬馬刀を振り上げて、悪魔はこちらへ疾走を開始した。

「に、逃げるんだよぉぉぉ!」

「あ、こらユメ!抜け駆けするな!」

「そんなこと言ってる場合じゃないよ、キリト君!」

「ふむ、こんな時もアスナはキリトの裾から手を離さず、か」

「レン君も、そんなこと言ってる場合じゃないいいい!」

 ちゃっかりとソード・ダンサーで悪魔を牽制しつつ、四人は踵を返して全力疾走を開始した。
 それぞれが鍛え上げた敏捷パラメータ限界までの本気逃走。

 元々それほど俊敏な設定ではないのか、青い悪魔がそれに追い付く事はない。
 あっという間に入り口の扉に辿り着いた四人は、ユメから順に外へ転がり出る。

「置き土産だ。存分に喰らえよ」

 だがレンは直ぐに出ず、出口を背にしてソード・ダンサーで浮遊する剣軍を束ね始める。
 やがて巨大な剣と化したそれを、投剣スキルを以って悪魔に向けて投擲。

「グルラァァ!?」

 予想外の攻撃を受けた悪魔は、胸に擬せられた巨大剣の重みに押されるように突進を止めた。その様を見て、レンはボス部屋を後にする。

「……恐れを知らないな、お前」

「キリトには言われたくないな」



† †



「あはは、やー、逃げた逃げた!」

「ちょ…アスナっち、早すぎ…げほっ」

 ボス部屋から一心不乱に逃げ続けて暫く。何度かモンスターにターゲットされるも、それすらも振り切って四人は安全エリアに指定されている広い部屋に逃げ込んでいた。

「……」

「どうした、レン?」

「いや、オレももう少し敏捷度を優先した方がいいのかもしれないな」

 途中から何故か徒競走に切り替わっていた全力疾走は、結局一位がアスナ、二位がキリト、三位がレン、四位がユメという結果に終わった。
 表情こそ変わらずのポーカーフェイスだが、付き合いがそこそこに長い三人には、彼が悔しがっているのが理解できた。


「いやー…それにしても、アレは苦戦しそうですねぇ…」

 ユメの呟きに、三人の表情が曇った。

「…武装は斬馬刀一本だったが、特殊攻撃はあるだろう」

「前衛に堅い人を集めてどんどんスイッチして行くしかないね」

「盾装備の奴が十人は欲しいな……まあ、当面は少しずつちょっかい出して傾向と対策って奴を練るしかなさそうだ」

「盾装備、ねえ」

 と、そこでアスナが意味ありげな視線をキリトへ向けた。

「な、なんだよ」

「君、なんか隠してるでしょ」

「いきなり何を……」

「だっておかしいもの。普通、片手剣の最大のメリットって盾持てることじゃない。でもキリト君が盾持ってるところ見たことない。わたしの場合は細剣のスピードが落ちるからだし、レン君みたいにスタイル優先で持たないって人もいるけど、君の場合はどっちでもないよね。……あやしいなぁ」

 言われて見ればそうだった。確かに、黒の剣士様が盾を使っている所は見たことがない。
 更に、キリトの表情を見る限りアスナの指摘は図星というやつだろう。

「まあ、いいわ。スキルの詮索はマナー違反だもんね」

 しかしアスナはこれ以上の追求をきっぱり諦めた。元々それほど知りたいという訳ではなかったのだろう。
 時計を確認して目を丸くしたアスナに倣い、レンも視線を動かしてみる。

「三時か」

「うん。遅くなっちゃったけど、お昼にしましょうか」

「なにっ」

「私とアスナの手作りだよー」

「………」

「なにか言いたい事があるのですか、レン君?」

「…ユメの料理……不安だ」

「ひどっ!これでも料理スキルはコンプリートしてるんだよ!」

 ユメに差し出された小ぶりなバスケットを受け取って、警戒しつつも蓋を開ける。
 中に入っていたのは丸パンをスライスして焼いた肉や野菜を挟み込んだサンドイッチだった。

「見た目はなかなか良いが……」

「まだ疑ってるの!?」




† †



「普通にうまかった。謝ろう」

「分かればよろしい」

 暫くして。見事に完食したレンはユメに頭を下げていた。謝罪を受けたユメはない胸を反らして誇らしげだ。

「そんで、いたんだなクライン」

「気付いてなかったのかよ!?」

「サンドイッチに夢中で。それと、あのラブラブ空間から逃避したくて周囲を見ていなかったんだ」

「ほんとに、所構わずイチャイチャベタベタして」

 叫ぶ鎧武者を無視して頷きあう二人に、キリトとアスナは顔を真っ赤にさせる。早くも場は混沌としていた。

「まあ、それは置いといてだ。久しぶりだなクライン」

「おうよ。お前の活躍はどこにいても聞こえてくるぜ」

「大した事はしてないさ」

 紅い鎧に、趣味の悪いバンダナを頭に巻いた野武士はギルド《風林火山》のリーダーであるクラインは、その無精髭の生えた顔を破顔させる。
 彼の後ろにいるのは風林火山のメンバーだろうか。

「レン、《軍》がきたよ!」

 和気藹々とした空間の中で、ユメの言葉に場の緊張が高まった。
 十中八九、迷宮区前で見た軍の部隊だろう。鉢合わせると色々と面倒だが、生憎とここらに隠れられる場所はない。
 やがて鎧が擦れる音が響き始め、変わらず二列縦隊で行進する軍隊が現れた。

 安全エリアの丁度反対側で、その行進は止まった。指揮官らしき男が指示を出すと、余程疲労が溜まっているのだろう。残り11人が床に倒れるように座り込んだ。
 そんな部下の様子には目もくれず、指揮官と思しき男はこちらに近づいてくる。

「私はアインクラッド解放軍所属、コーバッツ中佐だ」

 ヘルメを外した長身の男は、警戒の視線を向けるアスナ達を一瞥して先頭に立っていたレンに名乗りを上げた。
 そもそも、《軍》というのは集団外部の者が揶揄的につけた呼称のはずだったが、何時の間にか正式名称になっていたのか。
 レンはついこの間まで軍が支配する黒鉄宮に幽閉されていたから知っていたが、クライン達は怪訝な表情を浮かべていた。

神の盾(アイギス)所属のレンだ」

 短く名乗ったレンに、男は軽く頷いた。

「君らはもうこの先も攻略しているのか?」

「ボス部屋の手前まではマッピングしてある」

「うむ。ではそのマップデータを提供して貰いたい」

 さも当然のように。このコーバッツという男は傲岸不遜にそう言い放った。

「な…て…提供しろだと!? 手前ェ、マッピングする苦労が解ってて言ってんのか!?」

 クラインが胴間声で喚く。
 しかしその反応は当然のものだ。

 未攻略区域のマップデータはこの世界に於いてかなり貴重な情報だ。トレジャーボックス狙いの鍵開け屋の間では高値で取引されるほどの。

 しかし、この男はどこまでも傲慢らしい。
 クラインの声を聞いた途端、片眉を僅かに動かし、顎を突き出すと、

「我々は君ら一般プレイヤーの解放の為に戦っている!」

 エリア全体に響く大声に、顔を顰める。

「諸君が強力するのは当然の義務である!」

 正に傲岸不遜。呆れて物も言えないレンだったが、他は違うようだった。

「ちょっと、あなたねぇ…」

「て、てめぇなぁ…」

 左右から爆発寸前の声を出すアスナとクラインを片手で、不気味な笑みを浮かべるユメを視線で制する。

「長らく自分らの保身の為に攻略作戦にも参加して来なかった腑抜け共がよく言った。戦力の増強はこちらの望む所だ。同じ攻略組の好として、くれてやろう」

 レンの物言いに、すかさずコーバッツが怒りに身を任せようと腹に力を込めるも、しかしそれはレンの向ける射殺すような眼光によって飲み込むことになった。

「ボスにちょっかいを出すのなら止めておいた方がいい。兵も疲労しているし、何より指揮官(アンタ)が力不足だ」

「それは私が判断する。加え、私の部下はこの程度で音を上げるような軟弱者ではない!」

 レンからマップデータを受け取ったコーバッツは怒りの籠った目を彼に向ける。

「お前、死ぬぞ」

 レンの最後通告に、コーバッツは答えなかった。
 そのまま踵を返して部下の下まで戻ると、すぐ様彼らを立たせて二列縦隊に整列させる。
 コーバッツは先頭に立つと、片手を上げて振り下ろした。十二人はがしゃりと武器を構え、重々しく装備を鳴らしながら進軍を再開した。

「……大丈夫なのかよあの連中…」

 軍の姿が完全に見えなくなって、クラインが気遣わし気にそう言った。
 気に入らない相手でも一定の心配はするのは、彼の美点だ。

「いくらなんでもぶっつけ本番でボスに挑んだりしないと思うけど…」

「いや、奴らはやるぞ」

 アスナの言葉をきっぱりと否定して、レンは一団へ向き直った。

「ああいう奴らは先々の事を見通すことはできない。精々、ボス討伐の報酬の分け前のことしか頭にないさ。
 だが、奴らとてこの城を攻略すると決めた仲間だ。オレは奴らを追う」

「……ハァァ。そうだな、仲間は多い方がいいもんな…」

「レンが行くなら私も行くよ」

 どうやら、ここにいる人間は全員お人好しらしい。

「さあ、行こうか」



† †



 道中、運悪くリザードマンの集団に遭遇してしまったためにレン達が安全エリアから最上部の回廊に到達する頃には既に三十分が経過していた。途中で軍のパーティに追い付くことはなかった。

「ひょっとしてもうアイテムで帰っちまったんじゃねぇ?」

 おどけたようなクラインの声に、しかし皆が浮かべるのは神妙な表情だ。
 あの指揮官(コーバッツ)が、容易に撤退を指示することはないのは簡単に予想できる。

 半ばほどまで進んだ時、唐突にレンが地面を蹴った。
 その直ぐ後、微かに、しかしハッキリと悲鳴が聞こえた。

「あぁぁぁぁぁ………」

 十中八九、それは軍のパーティの一人によるものだろう。
 一度顔を見合わせて、敏捷パラメータで勝るキリト、アスナ、ユメが先行したレンを追った。



「この…バカ共が…っ」

 殆どトップスピードのまま、躊躇なくレンは大扉の内部に足を踏み入れた。
 床一面、格子状に噴き上げる青炎を躱しつつ、斬馬刀を縦横に振り回すザ・グリームアイズに向けて疾走する。

「ガルッ…ルァァァア!!」

 雄叫びを上げ、悪魔が一層大きく斬馬刀を振り被る内に、レンはなんとか倒れ伏している軍の一人の間に割って入る。

「来い…!」

 エスピアツィオーネを鞘に戻して、右手に握るは巨大なタワーシールド。直後に襲い来る衝撃を、なんとか受け止める。

「何をしている! 早く転移アイテムを使え!!」

 そうこうしている内にどうやらキリト達が追い付いたようだ。
 軍と入り口の間に悪魔が陣取っていることから離脱不能と考えたのだろう。すぐ様、転移アイテムで逃げろと指示を出すが––––

「だめだ……! く…クリスタルが使えない!」

「チッ…そういうことか…!」

 《結晶無効化空間》。迷宮区で稀に見られる極悪トラップだが、ボス部屋に適応されているのは初めてであった。
 悪魔の斬撃を受け流しつつ軍のメンバーを見ると、数が二人足りない。クリスタルで逃げられないとなると……恐らくは。

「なんてこと……!」

 絞り出したようなアスナの声が耳に届く。しかしそれに返答している余裕はない。
 一撃で命を刈り取られそうな重い一撃を、身の丈程もあるタワーシールドを操りその全てを叩き落とす。

「全員……突撃……!」

 悪魔がレンを集中攻撃しているのを好機と見たか、HPバーを限界まで減らして倒れている二人を除いた八人を四人ずつの横列に並べ、その中央に立ったコーバッツが剣を翳して突進を始めた。

「バカが…ッ!」

 余りにも下策。余りにも無謀。
 確かに悪魔は一人に集中して攻撃しているが、奴は全霊をこちらへ向けている訳ではないのだ。

 故に。

 自身に向けられた敵意に反応してか、悪魔は一際大きな斬撃を以ってレンを弾き飛ばすと、その場で仁王立ちになった。

「くそッ…間に合え!」

 盾を仕舞い、エスピアツィオーネを逆手に握る。投擲のソードスキルを発動しようとして、しかしそれよりも早く、地響きを伴う雄叫びと共に、開かれた口から眩い噴気を撒き散らした。
 警戒していたブレス攻撃だ。吐き出された息吹全てに攻撃判定があるらしく、無闇に突貫していた八人の勢いが緩む。そこに、すかさず斬馬刀が突き立てられる。一人が掬い上げられるように斬り飛ばされ、悪魔の頭上を越えてキリトたちの眼前の床に激しく落下した。

「こ、のぉォォッ!」

 恐らく斬り飛ばされたのは前列中央にいたコーバッツだ。あれでは助からないだろう。だがこの結末を選び取ったのは彼自身。そこに同情を挟む余地はない。
 それよりも、指揮官の無謀な策に付き合わされ、瓦解した生き残りを助ける方が重要である。

 同じく、いや恐らくパニック衝動に駆られてだろうが、挟み込むような形でアスナとユメも悪魔へ走り寄る。

「フッ!」

 だが到達するのはこちらが早い。素早く悪魔の下へ辿り着くと、逆手に握っていたエスピアツィオーネで右脚を切り裂く。

「固まって行動するな! 軍の連中は各自散開しつつ入り口を目指せ! 退路はオレ達が切り開く!」

 指揮官を喪い、統率を失った部隊を立て直すのなら、自らが指揮官に取って代わればいい。そう判断し、レンは軍の手綱を握ることにした。

 幸い、今ここにいる軍のメンバー以外は、全員が実戦を幾度となく経験している攻略組の中でも比類なき猛者。
 時間を稼ぐだけならば–––––

「ぐっ…!?」

 勢い増した敵の攻勢に、手からエスピアツィオーネが弾き飛ばされる。すかさず左の手に握ったクリミナルエスパーダで追撃を凌ぐが、目の前の悪魔が何らかの狂騒状態になっているのは明らかだ。

「スイッチ!」

 ユメの声に、剣戟で答える。単発重攻撃のヴォーパル・ストライクで悪魔の斬馬刀を弾き返して、場所を譲る。

「セヤァッ!」

 繰り出した斬撃に、この間のような迷いはない。薄暗い闇を裂くように、鮮やかなペールブルーが閃いた。しかし直撃したにも関わらず、ボスのHP減少値は微々たるものだ。

「レン! 時間を稼いでくれ!」

 このままでは埒があかない。微かな焦りを振り切ると、背後にいたキリトが声を掛けてきた。
 後ろに顔を向けると、必死な顔でメニューウィンドウを操作しているキリトの姿があった。
 このまま戦い続ければ何れ全滅するのは自明の理。ならば、何か策があるというキリトに賭けてみる方がいいか。

 だが、

「ああ。時間を稼ぐのはいいが––––」

 キリトに頼り切るのは、自分のプライドが許さなかった。
 いや、キリトがこの戦いの鍵を握るのは間違いないが、ただの時間稼ぎで終わるつもりは、毛頭ない。

「別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」

 故に、いつも通りの不敵な笑みを浮かべ少年は剣を握り締める。
 その余りにも不遜な物言いに、思わずキリトは笑みを浮かべた。

「ああ、勿論だ。ガツンとやってやれ!」

「ふっ…任せろ!」



† †



「スイッチ!」

 斬馬刀の一閃を掻い潜って、足止めを続けているユメと入れ替わる。槍の一突きで体制を崩していた悪魔を、左手に握った斧剣で抉り斬る。続け様、間髪入れずエスピアツィオーネを振り抜く。

「グルルルルル……」

 怯み、唸り声を上げた悪魔。その隙を逃す訳にはいかない。
 巨大な斧剣に光が灯る。

「合わせろ、クライン!」

「おおよ!」

 紅い光を引いて、最重量の斧剣が最速の軌道を以って悪魔を斬り捨てる。刀専用最上位ソードスキル『散華』。
 前後二対の五閃が直撃し、堪らず悪魔は苦悶の悲鳴を漏らした。

「スイッチ!!」

 黒の剣士が、仰け反った悪魔の隙を逃すはずもない。
 スキルディレイに身体を縛られているレンの隣を駆け抜け、キリトは悪魔の正面へ踊り出た。

 ノックバックから復帰した悪魔が大きく剣を振り被る。
 空気を斬り裂き、炎の軌跡を引きながら打ち下ろされてきたその剣を、キリトは愛剣であるエリシュデータで弾き返し、そして、間髪いれず左手を背に回し、新たな剣の柄を握った。
 抜きざまの一撃が悪魔の胴へ吸い込まれる。

「グォォォォォ!!」

 黒のエリシュデータ。そして、それと対になるような純白の剣。
 対照的な色彩の二刀を以って悪魔の斬馬刀を受け止め押し返す。

 かくて、二刀の剣舞が始まった。
 
 右の剣が中段を薙ぎ払う。間を空けずに左の剣を突き入れる。右、左、また右。視界に捉えるのがやっとの速さで、黒の剣士は二刀を振り続ける。

 これこそ、彼が今まで隠し通してきた奥義中の奥義。レンのような模倣ではなく、正真正銘の《二刀流》。

 そして舞うようなこの剣技の名は、《スターバースト・ストリーム》。連続、十六回攻撃。

「うおおおおあああ!!」

 途中の攻撃が幾度か悪魔に阻まれる。だが、黒の剣士はそれを意に介さず、ただより速く剣を振るうことのみに専心する。彼の目が捉えているのは最早敵である悪魔のみ。弾ける金属音も、舞い散るライトエフェクトも、彼の意識からは排除される。

「………ぁぁぁああああああ!!」

 未だ嘗て聞いたこともない程の怒号を響かせ、そして最後の十六撃目が、悪魔の胸を貫いた。


 だが。



「ゴォォォアァァッ!!」


「届か…ない…!」

 黒と青。鮮やかな剣の乱舞は、十六という常識の埒外の数の剣閃を以って終幕を迎えた。

 しかして、敵に倒れる様子はない。その身に十六の裂傷を刻まれようと、輝く目を持つ悪魔は手にした斬馬刀を高々と振り上げた。

「グルルルルラァァァ!!」

 それは憤怒の咆哮か。これまで自分を斬りつけた剣士に対する抑えられぬ怒り。
 否、もしかしたら勝利の雄叫びだったのかもしれない。

 けれど、その一瞬の停滞。それが、黒の剣士の命を救うこととなった。

「ぐっ…!」

 スキルディレイにより体が硬直状態にあるキリトでは避けえぬ斬撃。されどその一閃は、黒の剣士を裂く前に無骨な斧剣に堰き止められた。

「レン!?」

「…ッ、アスナ、ユメ!キリトを連れて下がれ! クラインは退路の確保を!」

 コイツは、オレがやる。そう言外に叫び、白銀の英雄は右手に濃紺の十字架剣を握る。

「ハーーァアア!」

 斬馬刀を斧剣で押し退けて、エスピアツィオーネの切っ先を突きつける。悪魔の胸中央に擬せられたそれは、しかし勢い足りず貫くことは叶わない。
 火花を散らして弾き返される右腕を、勢いそのままに体ごと回転させて斧剣を薙ぐ。

 硬い手応えに、斧剣が斬馬刀を再び弾き返す。着地の衝撃すらもどかしく、すぐ様地面を蹴る。

「う、おおお!」

 左手の斧剣を振り被る。
 途轍もない重量感のそれは、しかしソードスキル発動によるシステムアシストで鮮やかな軌道を描いて悪魔に襲い掛かる。
 片手用直剣専用ソードスキル・垂直四連撃のバーチカル・スクエアが直撃し、青白い燐光が弾け飛んだ。

「グゥゥ…ガルルラァッ!」

「ぐっ!?」

 悪魔の斬馬刀、ではなく青い体毛に覆われた拳がレンの体を殴り飛ばす。
 碌な防御姿勢も取れずに直撃した一撃は彼のHPを大幅に削る。だが、回復をしている暇はない。空中で体勢を整えて、着地と同時に斧剣を突き出し斬馬刀を防ぐ。

「く…っ、そ…ッ!」

 斧剣と斬馬刀が鎬を削る。
 だが、巨大な体躯から押し出される斬馬刀に、徐々に斧剣が押されだす。当たり前だ。ボスモンスターとプレイヤー、単純なパワー比べで勝てるはずがない。故に、この鍔迫り合いはレンにとって致命的な危機となる。

「っ、剣たちよッ!」

「グヴヴァァァアア!?」

 だが、彼は英雄と呼ばれた男。この程度に容易く押し潰される存在ではない。

 主人の号令を受けて、展開した幾つもの刃が悪魔に殺到した。
 身を刺し貫く無数の剣軍に今にも押し潰さんとしていた斬馬刀の力が緩む。

「ハッ!」

 その一瞬の緩みを見逃すはずもなく、白銀の英雄は悪魔の兇刃を右手の十字架剣で弾き返した。

(くそ、HPにまだ余裕がある…エクスカリバーが使えない…!)

 彼の持つユニークスキル『無限剣』の中で最上位に値するスキルである『極光剣エクスカリバー』。
 放てば確実に戦局を変え得る威力を持つ勝利の剣だが、強力な力に代償はつきものだ。あの極光は使用者のHPが危険域のレッドゾーンへ到達していなければ発動できない。
 ギリギリでイエローゾーンをキープしている今の彼では、システムにより阻害がかかりその剣身に光は集わないだろう。

 かと言って、無限剣の中でエクスカリバーに匹敵する威力を持つスキルはない。似たような攻撃スキルに、『リライト・スレイブ』があるが、あれは発動条件に縛りが無いためか威力はエクスカリバーに数段劣る。あの悪魔を一撃で撃破するのは不可能だろう。

 同じ理由で、現在発動中の『ソード・ダンサー』でもあの悪魔の命を削り取るのは無理だ。

(どうする…? ソード・ダンサーももう持続時間がない。今からスキルコネクトでソードスキルを繋げても削り切れなければオレは確実に死ぬ……あれしかないか…?)

 彼が保有する無限剣スキル。その熟練度は既にフルコンプリートしているが、今まで成功したことのないスキルがただ一つあった。

 その名は『憑依投影』。
 武器に刻まれた記憶を読み込み、その技能を己に憑依させ体現するソードスキル。

 『武器の記憶』とは、恐らくこのソードアート・オンラインの世界で生きる中で無限剣スキルを持たない人間にはなんの意味もない上、存在すら知らない隠しステータスだ。

 それはドロップした武器にのみ存在し、通常のソードスキルを上回る威力の剣技を有している。

(分の悪い賭けだが、やってみるしかないか)

 しかして、このソードスキルの難度は熾烈を極める。
 何故か。それは使用者がレンだからこそだろう。

 理由は簡単。『憑依投影』を行おうとすれば、その剣が抱える膨大な記憶ーーつまり『膨大な情報』が脳に詰め込まれる事になる。
 この世界に入ってきて、脳とナーヴギア本体の接続が不良なレンに、痛みを阻害する役割を持つペインアブゾーバは機能していない。

 故に、常人であれば一気に多くの情報を脳に詰め込まれて疲労するだけなのだが、彼の場合はそれだけでは済まず、脳が感じる圧迫感が、そのまま痛覚となって彼の脳を焼き切ろうとするのだ。

 常に死の危険が伴うスキル。それが『憑依投影』であった。

 だがしかし、現状を鑑みて、それしか手がない事は明らか。
 彼が決断を下すのは早かった。

投影(トレース)––––開始(オン)…!」

 やらなければ死ぬ。やっても死ぬかもしれない。ならば、少しでも生きる可能性がある方に賭ける。

「ぐっ…あッ…!?」

 読み込むは、左手に握った巨大な斧剣の記憶。先日の死神からドロップした、比類なき強さの剣技を内包した逸品だ。
 彼の左手から幾筋もの青いラインが走り、剣の記憶が頭に流れ込む。その途方もなく膨大な情報量に、早くも彼の脳が焼け付く痛みを訴えた。

「ぐ…う、おおお…!」

 しかして、この程度に屈するならば既にこの身は無いはず。常人ならば狂い死ぬ痛みを、気力のみで彼は捩伏せる。
 斧剣の記憶を読み込みながら、未だ剣軍と格闘している悪魔に向け走り出す。



† ☆ †



 彼の頭に流れ込む記憶は、佳境を迎えつつあった。
 古代の大英雄。死後に神の座に迎え入れられた、人類史を総覧しても比類なき強者である彼が、多頭の怪物を射殺すべく放った矢–––––
 ––––否、それはこの剣技の一面に過ぎない。

 読み込むべきは彼の大英雄が生涯で培った技能其れら総て。生前積み上げた逸話が昇華して彼を象徴するに至ったその流派。

 故にこそ、その記憶を読み込むのは容易に非ず。許容量を越えた脳が、己が身を守らんと意識を閉ざそうとする。しかして、それを気力のみで捩じ伏せてきた。
 それでも、このままでは。ただの投影では届かない。

 だからこそ。
 幾度もの危地を乗り越えたこの存在は、''最善''を狂いなく選び取る。

「––––––投影、装填(トリガー、オフ)

 幾ら手を伸ばしても己では到達し得ない剣戟の極致。幼い頃に憧れた、何者にも負けはしない無敗の剣技。己の身一つでは到達できなかったそれに、しかし手を伸ばして、そして少年はその技能を模倣するに至る。

全工程投影完了(セット)–––––」

 その身に宿るは過去の大英雄を象徴する宝具の総て。
 我が専心は、ヤツの絶殺にのみ向けられる。

 体を動かす必要はない。全ては憑依した記憶がやってくれる。
 ならば自分にできる事は、ただ一つ。この剣戟を必ず届かせると、強き意思を持つことのみ––––!





「––––是、射殺す百頭(ナインライブスブレイドワークス)


 




 身体が、剣の記憶をなぞる。

 一撃。

 二撃。

 その繰り出した一撃一撃総てが人体の急所を抉り取る大英雄の剣戟。既に悪魔の反撃などない。そんなものは一撃目で全て叩き落とした。

 三撃。

 四撃。

 焼け付く意識はそのままで。まだ終わりではない。
 
 五撃。

 六撃。

 視界が暗転した。当たり前だ。両眼が潰れれば前など見えない。
 けれどそれでも、身体が止まることなどない。

 七撃。

 八撃。

 右腕が弾け飛ぶのを感じた。
 知ったことではない。今オレが見るべきは、聞くべきは、剣に刻まれた大英雄の記憶。
 人の身に余るその偉業を、その身に宿し–––––


「は–––––ぁアッ!」


 ––––九撃目を以って、大英雄の剣舞は、完成に至った。

 ほぼ全ての斬撃が同時に繰り出される極致の斬撃。その絶技に断てぬものなどありはしない。

 現代の最新鋭の設備を搭載したナーヴギアを以ってしても、捉えきれぬ神速の九連撃。仮装空間に罅を入れる程の威力を以って、悪魔の身体を断ち切った。

「––––––––––」

 剣技が終わり、しばらくして、輝く目の悪魔はその身を散らした。
 それと同時に、何も見えない暗黒の視界が、更に闇に塗り潰された。意識が漂白される。敵を倒して緊張の糸が緩んでしまったのか、襲い来る眠気に抗えず、レンは容易く意識を手放した。




to be continued 
 

 
後書き
Fateは『Heaven's feel』が一番面白い。異論は認める。
感想などなど待ってます! 
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