| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

恋姫†袁紹♂伝

作者:masa3214
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第14話

恋と音々音の二人が仕官してから数日後、荊州から太守代理兼袁術の教育係を担っている張勲が袁紹を訪ねて来ていた。

「初めてお目にかかります袁紹様、張勲でございます。」

「うむ、遠路はるばる良く来てくれた。荊州の様子はどうだ?」

本当なら妹の事が聞きたいところであったが、袁家当主として荊州の様子を優先的に聞いた。

「大変順調ですよ、袁紹様考案の警邏番のおかげで治安も良いです。」

「それは重畳、……して我に反する者達は」

「そちらはあまり芳しくないですね~、荊州に送られた者達のほとんどが反袁紹様派でしたから、確執が取れるのはまだ先です。」

「そうか……」

袁家当主として様々な問題を解決してきた袁紹だが、この先の黄巾賊に備え反袁紹派は全て張勲に任せているため、現時点では彼女の采配に期待するしかなさそうだ。

「あ、そういえばお嬢様から手紙のお返事を預かってますよ~」

「おおっ!見せてくれ!!」

暗い話題を払拭させるかもしれない妹の手紙に袁紹は食いついた。
 内容は袁紹の手紙に書かれた事を答えた簡単な物であったが、代書人に書かれた丁寧な文字を眺めながら袁紹は顔をほころばせる。

(あらら、凛々しかった表情をあんなに崩して、会ってもいないのにシスコンとかドン引きですね~)

自分を棚に上げた張勲は、兄妹二人を会わせたら自分が袁術を愛でる時間が少なくなるのを危惧していた。

(やっぱり会わせたくないですね~、何だかんだ単純なお嬢様はすぐに懐きそうですし)

「手紙の内容がやたら丁寧だが……」

「それは、袁紹様にお返事の手紙を出すにあたって失礼が無いように、私が一緒に内容を考えたからかと」

思考中に声を掛けられたにも関わらず返事を返す張勲、

「なるほどな、本日は大変ご苦労であった。ここでしばらく体を休めた後戻るのが良かろう。」

「いえ、それには及びません、お嬢様を長いこと放っておくわけにもいけませんので」

「左様か、では些細ではあるが物資や資金等を土産に持っていくと良い」

「いいんですか?ありがとうございます~」

「蜂蜜も積んである故、妹によろしく頼む」

「それはお嬢様が大変喜びますね!宜しくされました~」

………
……


張勲が出て行った謁見の間の扉を見続ける袁紹、その顔は若干険しい様子だった。

「麗覇様、あの者が何か?」

その様子に違和感を感じた桂花が質問する。ちなみに斗詩達武官は訓練中で、音々音は別室で勉強中である。

「張勲に違和感を感じてな」

「違和感……ですか?」

その言葉に首を傾げる桂花、彼女には張勲の対応が完璧に見えていた。

「いや、きっと気のせいだろう。彼女は父上たちが見出したのだ。心配はあるまい」

「……」

妙なことを言ってすまなかった。と袁紹は謁見の間を後にした。

「……」

一人残った桂花も険しい表情になる。彼女が袁紹の元で行動した期間はさほど長くは無い。だが袁紹が時折見せる勘働きが、目を見張る物なのは知っていた。
 初日で桂花の男嫌いを見破って見せた袁紹が違和感を感じたのだ。謀反などはありえないが何かあるのかもしれない。

「誰か」

「ここに」

「荊州へ間者を送って街の様子と張勲の周りを探りなさい。」

「御意」


………
……


「はぁ、些細な土産とはよく言ったものですね~」

荊州へと帰路についていた張勲は、袁紹から持たされた土産の山を見て溜息を漏らす。
 これだけの物があれば、一年は荊州が飢えることはない。それをポンと渡す袁紹の豪快さに感心すらしていた。

「これは多分、政務よりも反袁紹派の対応に集中させるためですね。まぁ何もしないんですけどね~」

袁紹の期待とは裏腹に、張勲には反袁紹派達に対策を講じるつもりは無い。

(袁家当主でありながら驕った態度は無い。終始私を気にかけていたし、最後に持たせた土産の豪快さ、
 そんな人たらしを純粋なお嬢様に近づけるわけにはいきませんね!)

全ては愛する袁術を独占するために、長年自分の本性を隠し続けてきた張勲の笑顔は、観察眼に優れた袁紹の目を持ってしても見破ることは出来なかった。




………
……




「お嬢様!ただいま帰りました~」

「おおっ七乃、お帰りなのじゃ、南皮はどうだったかえ?」

「とってみ賑やかで大きな街でしたよ~、治安も良くていい所でした。」

「むぅ~、妾も行きたかったのじゃ……」

「でもお嬢様、南皮にはお兄様がおりますよ?」

「ピェッ、そうだったのじゃ」

袁紹の存在にひどく怯える袁術、彼女は物心ついた時から洗脳に近い教育をされていた。

「あ、兄様はまだ怒ってたのかの?」

「それはもう!『政務も出来ぬ上にお漏らしとは何事か!会ったら尻叩き百回だ!!』って激怒してました。」

「痛いのは嫌なのじゃ~、ガクガクブルブル」

「やーんお嬢様ったら可愛すぎます~。」

「な、七乃ぉ……」

「大丈夫ですよお嬢様、いざとなったら此処の皆と私がお守りしますから」

「本当かぇ?」

「もちろんですよ、では政務があるので失礼しますね~」

………
……


「張勲様、本日は四名捕らえました。」

「ご苦労様です。素性はわかりましたか?」

「ハッ、三人は口が堅かったですが、一人口を割らせることに成功しました。どうやら袁紹様お付の軍師、荀彧の手の者のようです。」

「あらら、うまく誤魔化せたと思ったんですがね~。私は別に敵対するつもりは無いのに……味方する気も無いだけで」

こめかみに手を当てながら苦々しそうにつぶやく、報告に来た兵は無表情で指示を仰いだ。

「捕らえた間者達はどういたしましょう」

「そうですねー、知らなかったとはいえ捕らえてしまったわけですから、監視が厳しくなりそうなのは目に見えてますよね? 口を封じてしまいましょう」

「っ!?し、しかし仮にも本家縁の者達を手にかけたとあっては……」

兵達に緊張が走る。それもそのはず。反袁紹派が集められた荊州だが、彼等には正面から敵対する気はさらさら無い。
 袁術の勢力も列強ではあるものの、袁紹軍はその比では無い。彼等がその気になれば自分達が潰されるのは火を見るよりも明らかであった。

「……最近は賊の活動が活発になってきてますよね?」

「は、はい」

「間者達が情報を持ち帰ろうとした道中で、不幸な事故があるかもですね~」

「っ!?御意……」

張勲の意図に勘付いた兵達はそのまま行動に移り、部屋には彼女一人となった。

「やれやれ、このくらい自分達で思いつけませんか、無能ですね~。まぁその方が私も動きやすいですけど」

そこまで言って手元の報告書に目をやる。そこにはこれまで捕らえた者達の名が記されていた。

「それにしても袁紹様考案の警邏所と私服警邏隊はすごいですね。おかげで変な気を起こそうとする民衆と間者を捕まえ放題ですよ、このへんは感謝ですよね~」





………
……




「馬だな」

「馬ですね」

張勲の訪問から数日後、富国強兵を推し進めている袁紹と桂花の二人に難題が立ちはだかった。

「袁紹様考案の『重騎兵』、実現できればすごいのですが……」

この時代で一般的に使われている青銅の鎧では無く、全身を覆う鉄の鎧を纏った兵士『重装兵』を試験的に作ってみたものの、重い装甲で動けるものは少なく少数精鋭となった。
 また、彼等の動きが著しく遅いため、馬に乗せることでカバーしようとしたが、その馬が矢などでやられては意味が無い。馬にも同様に鉄の鎧を装着させてみたが、搭乗者の重みも加えまともに走れそうに無い。

「西涼馬のような屈強なものが欲しいな、桂花、何か策はあるか?」

「そう……ですね」

主の問いを瞬時に思考し案をだす。

「……馬産を奨励してみてはいかがでしょう?。良い雄馬を育て上げた者に報奨金などを出して、その馬を種馬とすれば良いかと」

「ふむ、基準が難しいな」

「とりあえず体格と積載量で判断しましょう。時間はかかりますが、いずれ良き馬が揃うかと」

「……うむ!、良き案だ。それでいくとしよう。手筈はまかせて良いな?」

「かしこまりました」

頭を下げる桂花、気が付くと反射的に彼女の頭に手を置いていた。

「あっ……」

(しまった!)

いつもなら、手を伸ばしても思い止まっていた袁紹だが、手を置いてしまっては後には引けない。
 そのまま労わるように優しく撫でた。

「いつも苦労をかけるな桂花、他にも任せている仕事があるのに……」

「あ、あぅ……勿体無きお言葉」

袁家内でも群を抜いて優秀な文官である桂花には、袁紹の政務補佐、政策の補填、音々音の教育等、仕事を任せてしまっている。
 見かけによらず疲れ知らずな彼女は、袁紹同様休みが存在しなかった。
 しかし度々政務を抜け出す袁紹とは違い真面目なため、文字通り休むことなく働き続けている。

「幸い性急な課題ではない。三日ほど休息を取るが良い」

「し、しかし」

「これは命令だ、桂花」

「……わかりました」

その言葉に少し不満そうに顔を伏せる。袁紹は苦笑しながら彼女を抱き上げた。

「きゃ!?れ、麗覇様?」

「軽いな桂花……ちゃんと食べているのか?」

「か、軽いは余計です!」

小さな体を気にしている桂花は、それに関する言葉には敏感に反応する。
 とは言え、以前なら憎まれ口しか出ることは無かったし、少し前なら不満そうに顔を伏せるだけだった。
 それが今では軽口を諌めるほどになっている。二人の距離は確実に近づいてきていた。

「目にクマが出来ているぞ、このままお主の寝所まで連れて行くとしよう」

「そんな!こんな日が高いうちから……わ、私の心の準備が」

「昼からなにを考えているのだお主は」

二人の距離が近づくにつれ、何故か桂花の妄想癖が出始めていたが……




………
……




―――三年後、南皮―――




「おおっ!すごい賑わいですな」

「星、少しは落ち着いたらどうなんです?」

第四回武芸大会開催日、見た目麗しい女性三人が来ていた。

「稟ちゃん、稟ちゃん、多分星ちゃんは……」

「メンマの可能性を広げた調味料、魚醤発祥の地だぞ!興奮しないわけがあるまい!!」

「……武芸大会よりもメンマですか」

「それはそれ、これはこれよ」

周りの視線を集めながら彼女達は大会会場の演習所に向かって歩いていった。







 
 

 
後書き
猫耳軍師 荀彧

好感度 100%

猫度 フニァン♪ゴロゴロゴロ

状態 心酔

備考 呼ぶと飛び込む様な勢いで近くまで来る
   安易に手を広げて待機してはいけない(戒め)
   人前ではしっかりしているが、二人きりになると甘えてくる


暴食無双 呂布

好感度 70%

犬度 ……ワン 

状態 目に付くと近くまで来る

備考 食べ物を持ち自分を呼ぶ見知らぬ人と、
   何も持たず呼ぶ袁紹がいた場合、食べ物から目を離さないまま
   袁紹の所にやって来る


盲信軍師 陳宮

好感度 30%

猫度 にゃんですぞ!!

状態 主君<<<呂布 

備考 桂花の教育により態度改善
   呂布と袁紹なら一瞥した後呂布をとる
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧