戦国異伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二百九話 もう一人の龍その六
「この者です」
「二人の他にもじゃな」
「実父は高橋紹運」
ここでだ、黒田はあえて強く言った。
「そして義父は立花道雪」
「その大友の二人の名将をそれぞれ父に持ちか」
「その武勇を受け継いだ」
「まさに生粋のじゃな」
「名将にございます」
それがその立花宗茂というのだ。
「その強さはです」
「どれ位じゃ」
「当家ですと幸村殿、兼続殿に比肩します」
今は信長の下にいる二人と、というのだ。
「それだけの御仁です」
「この者達とか」
信長はその二人を見つつ黒田の言葉に応えた。
「それ程までか」
「はい、徳川殿の本多忠勝殿ともです」
「肩を並べるのじゃな」
「それだけの名将です」
「それが九州におるか」
「左様です」
「そうか、それだけの者がおれば」
信長は黒田の話をここまで聞いて述べた。
「島津がどれだけ強くともな」
「容易にはですか」
「攻め滅ぼせぬ」
「左様ですか」
「主は気になる」
こちらはというのだ。
「龍造寺も大友もな」
「しかし将はですな」
「それだけの者達がおればな」
そうそう容易にはというのだ。
「島津も九州を一つに出来まい」
「ではこの戦の後は」
「やはり数年は時がある」
こう見るのだった。
「九州はな、そしてな」
「奥羽ですな」
今度は竹中が問うて来た。
「こちらはですな」
「うむ、伊達は強いが」
「その伊達がいなくなれば」
「そうじゃ、一つにならずな」
それでというのだ。
「戦乱が続きな」
「一つになりませぬな」
「最上は強いがな」
それでもだった、彼等も。
「奥羽を一つにするだけの力はない」
「だからですな」
「こちらも数年じゃ」
「ことが進むまでに時がある」
「だからじゃ、また動くのはな」
今の様にだ、兵を動かし戦をすることはというのだ。
「先になるわ」
「左様ですか」
「伊達は降す」
このことはもう決めていた、信長は。
しかしだ、その後はどうするかというのだ。
「だがな」
「それからはですな」
「うむ、その数年の間政にかかる」
それに専念するというのだ。
「新たに領地にした国々を治め天下を治める仕組みをさらにな」
「整えますな」
「そうする、あとはじゃ」
「それにですか」
「安土には既に城を築いた」
安土城、この城をというのだ。
「そしてじゃ」
「さらにですな」
「石山の跡地、あそこにもな」
「城をですな」
「築く」
そうするというのだ。
ページ上へ戻る