戦国異伝
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第二百九話 もう一人の龍その三
「その後の繁栄も。まさに」
「それはか」
「殿と同じです、しかし伊達政宗は」
「野心がか」
「それがしの見たところですが」
その目を鋭くさせての言葉だった。
「天下泰平よりもです」
「強いか」
「だからこそ周りの家を次々と攻め」
「併呑しておるか」
「若し後五年早く生まれていれば」
政宗、彼がだ。
「奥羽はあの者により一つになり」
「関東や北陸を伺っておったか」
「そうなっていたかと」
「謙信様もそう仰っていました」
ここでまた兼続がだ、信長に言って来た。
「若し伊達政宗があと五年早く生まれていれば」
「謙信とか」
「はい、刃を交えていたと」
そう言っていたというのだ。
「若しくは北条家と」
「そしてじゃな」
「はい、天下を目指していたと」
その上杉や北条も併呑してだ。
「そう仰っていました」
「そうか、野心が大きいか」
「まさに天下を飲み込まんばかりに」
「ふむ。ではわしがあの者を降しても」
「そうされようとも」
「何時かはか」
「牙を剥くかも知れませぬ」
その政宗がというのだ。
「それだけあの御仁はです」
「危険じゃな」
「そう思いまする」
「ではあの者は」
「いえ、それでもですな」
「そうじゃ、家臣にする」
この考えは変わらなかった、信長も。
「必ずな」
「やはりそう仰いますか」
「野心が強い者も面白い」
また楽しげに笑って言う信長だった。
「そうした者を心服させることもな」
「そう仰いますか」
「あの者も龍じゃ」
こうも言う信長だった。
「奥羽の独眼龍じゃ、その龍をな」
「降されそして」
「天下の柱の一つとしようぞ」
「殿がそう言われますと」
ここで言ったのは羽柴だった。
「不思議とです」
「どうした、猿」
「はい、織田家を軸としまして」
まずは他ならぬ彼等の家であった。
「徳川家、浅井家、長宗我部家にです」
「それにじゃな」
「毛利家、武田家、上杉家、北条家」
「それに伊達家じゃな」
「本願寺も入れますと」
これは家ではないがそれでも入れると、というのだ。
「全て色で」
「色を用いている家じゃな」
「はい、その色で天下を支えておる様な」
「そう思えるのじゃな」
「後は島津家だけですな」
「あの家は橙じゃな」
「はい」
服も具足も陣笠も旗も陣羽織も鞍もだ、島津家は全て橙に染め上げている。その色で自分達を飾り戦っているのだ。
「ですから」
「あの家も加わればか」
「色が全て揃い」
「柱もというのじゃな」
「揃いますな」
「そうじゃな、色か」
信長も言う。
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