美しき異形達
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第四十八話 薊の師その十三
「それだけしかいないから」
「そういえば阪神っていいピッチャーよく出るよな」
「それでもなのよ」
「四人か」
「私の知ってる限りは」
二百勝に到達した阪神に在籍したことのあるピッチャーはというのだ。
「しかも阪神に最後までいたのは村山さんだけ」
「後の三人の人は出たんだな」
「そうなのよ」
「阪神ですからね」
桜も寂しそうに語る。
「色々とあるチームですから」
「トレードの裏に、だよな」
「はい、阪神は常にです」
それこそ、というのだ。
「お家騒動が起こってきましたから」
「最近ないけれどな、お家騒動」
「かつては常でした」
シーズンオフには、だった。監督交代にしてもその都度トラブルが起こってきた。それもまた阪神の歴史である。
「そうした状況に巻き込まれ」
「バッターもね」
菊も苦笑いで語る。
「田渕さんも掛布さんも岡田さんもいってないのよね」
「あれっ、田渕さんもかよ」
「そう、二千本安打いってないのよ」
菊は薊にこの事実を語った。
「実はね」
「それは意外だな」
「いってると思うでしょ、あの人なら」
「ああ、普通にな」
「けれどそれでもなの」
「あの人はいってないのか」
「吉田義男さんも和田さんもね」
「何か意外だな」
薊もこのことには少し驚いていた、それが言葉の色にも出ている。
「その人達が二千本安打いってないのは」
「何故かそうなのよ」
「いってそうだけれどな」
薊はしみじみとした口調で述べた。
「違うんだな」
「そうなの、これがね」
「ううん、そうか」
「横浜は結構いるんじゃ」
「いや、あまりな」
薊は首を傾げさせて答えた。
「平松さんは二百勝いったけれどな、あまりいないぜ」
「そうなの」
「二千本安打もな」
これもというのだ。
「それに最後までうちにいて二千本安打の人いるのかね
「そういえば横浜も」
菫も言って来た、ここで。
「結構お家騒動が」
「そうそう、特に前の親会社の時な」
「色々あって」
「かつての主力選手どんどん出て行ったからな」
「残っていないわね、殆ど」
「そうなんだよ、阪神よりいった人少ないかもな」
薊は寂しい顔で語るのだった、横浜のそうした事情を。
そしてだった、薊はグラウンドの選手達かrわ視線を移してあらためて仲間達に話した。
「じゃあ次の場所行くか」
「次は何処なの?」
鈴蘭が薊に次のその場所について尋ねた。
「一体」
「ああ、今度は廃墟っていうか」
「廃墟?」
「あたしの昔の遊び場の一つだった場所だよ」
そこにだというのだ。
「案内するな」
「遊び場だった場所っていうと」
「別におかしな場所じゃないよ」
「廃墟っていっても」
「ああ、そんな隠れ家とかじゃなくてさ」
子供の頃は何かとアジトだのそういうものを作りたがる。トムソーヤにもあるがそれが幼い頃の冒険心の一環であろうか。
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