グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)
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第22話:ツワモノの物語……それは仕事?
(グランバニア城)
プックルSIDE
リュカ様に提供して戴いた自宅を出ると、毎日不規則なルートで城内を見回る。
城内に不審者が居ない事を見回るのは勿論、見張り当番の兵士達の勤務態度をチャックしている。
朝方というのは最も気が緩む時間帯だ……だがしかし、グランバニアの兵士にそんな緩みは許されない!
リュカ様のご威光の賜か、グランバニアは治安が良い。
従って城内に侵入する愚か者は皆無と言って良い。
その所為だろうか、以前は怠惰な心構えの兵士が多数居り、私の折檻を度々受けていた。
しかし今は変わった。
リュカ様のご指導の賜と、ほんの少しの私の努力が功を奏し、何時如何なる場合でも気を緩めた警備をする者など居なくなった。
リュカ様を守る為に存在する兵士としては当然の心構えではあるのだが、立派になったと嬉しく思うものだ。
だからと言って早朝の見回りを取り止める事は出来ない。
何故ならばリュカ様の身辺を守るのは私の勤めだからだ!
私が不甲斐ないばかりにリュカ様に10年間も苦労をかけてしまった……
幼き頃、リュカ様に命を救われたのに、私はまだ恩返しを出来ていない。
だから私の職務は終わらない。
私の第一の任務はリュカ様の安全であるが、そのリュカ様の行動スケジュールは把握しにくい。
まず眠る場所からして困難なのだ。
別に辺鄙な場所で寝てるのではないぞ。
常に寝室が変わるのだ。
もっと詳しく言うと、就寝の時間になるとビアンカ様と共に自身の寝室へ赴きお休みになるのだが、ビアンカ様を満足された後は別の寝室へ出張する。
時には城外へ……時には国外へ行く事もあり、リュカ様の夜の行動は追う事が出来ない。
本人曰く『僕は2.3時間寝れば十分だから、夜は長いんだよ』とのこと。
もっとも起床は何時もビアンカ様の隣で迎えるらしいので、最終的には自室に居るのだ。
だから城内を見回ったら、リュカ様の部屋の前で暫く待機。
城の者も起きだし活気が出てきた頃にリュカ様とビアンカ様もお部屋から出てくる。
以前は私が一番に朝のご挨拶をしてたのだが、最近では子供達が私の真似をして、リュカ様のお部屋の前で一緒に待機しているのだ。
だが断っておこう……子供らの目当てはリュカ様への挨拶ではない。
毎朝ビアンカ様が私の家族に朝食を用意してくれるのだが、それが目的で……と言うより、それを催促して部屋の前に集合しているのだ。
我が子の事でなかったら厳しく折檻してるであろう……
まぁいい……そろそろリュカ様がお目覚めになる頃だ。
室内では身支度をする気配がする……足音が扉へと近付いてくる……
ドアノブが回り扉が開かれると、其処にはリュカ様のお姿が!!
「ウニャァ~ン!(リュカ様ぁ~おはようございますぅ!)」
「おはようプックル! 今日も元気ビンビンか!?」
これだけは直らない……リュカ様を前にすると父親の威厳など彼方へ吹き飛ばしてしまう。
子供の前でもこれだけは直らない……
「ニャァ~ン(リュカさま~)」「ニャァ~(リュカちゃま~)」「ニャ~ン(リュカたま~)」「ニュァ(たま~)」
私の真似なのか子供達も一斉にリュカ様へ飛び付いた。
末っ子のソロだけはまだ巧く喋れない。
リュカ様の後からビアンカ様もお姿をあらわした。
「ガウニャン(ビアンカ様おはようございます)」
「「「ウニャニャ~ン!(ビアンカさまだー、おはようございます)」」」「ニャウン(たまー、ざいまふー)」
「おはようプックル……それにおチビちゃん達も」
我が子ながらなんて連中だ……
リュカ様への挨拶より盛大に挨拶するとは……
それに、またしてもソロはちゃんと喋れてない。
「じゃぁ先に行ってるよ」
そうビアンカ様に告げると、リュカ様はリビングの方へ歩き出す。
「うん。私もこの子達にご飯をあげたら行くわ♥」
そしてビアンカ様は私の子供達を引き連れ、城の厨房へと向かった。
私もビアンカ様の後について行く。
厨房では既に数人のメイドがリュカ様達への朝食を用意しており、その端でビアンカ様が我々の為に食事を用意してくれてる。
そして出来上がると、それを我が家まで運んで戴けるのだ。
自宅では身繕いを終えたリンセが待機しており、子供達と私を笑顔で迎えてくれると、表情こそはクールにだがビアンカ様を歓迎する。
野生では必ずエサに有り付けるとは限らない。
如何に人間が嫌いでも、毎朝誠意を持って接し、そして食事を運んできてくれるビアンカ様に、リンセも少しずつ心を開いてきているのだ。
ビアンカ様は子供達の食事を先に用意すると、続けてリンセと私の食事を差し出してくれた。
我々キラーパンサーは大きい猫と変わらない動物なので、食事の盛られて皿を床に置いてもらい、それを食するのが作法である。
ビアンカ様は我々の食事を出してくれた時の姿勢のまま、その風景を嬉しそうに眺めてらっしゃる。
あの……その体勢だと……パンツが丸見えですよビアンカ様。
勿論ここには我ら家族しか居ませんから、見られても平気なのでしょうけど、リュカ様に忠誠を誓う私には困惑を抑えきれません。
「やっぱり夫婦は常に一緒が良いよね」
私の表情を如何に思ったのか、私とリンセの夫婦仲を話題に上げるビアンカ様。
ビアンカ様もリュカ様と何時も一緒ですよね。
「リュカはね、色んな人に頼られるから、何時でもベッタリ一緒に居る訳にもいかないのよ。異世界とか異時代とかに連れて行かれるのであれば、私も一緒に行きたいのに……」
その通りですねビアンカ様……神が頼る程のお人ですから、リュカ様は。
「だからね、過去から戻ってきてプサンに言ったの……コッソリだけど。『今度リュカを連れてく時は、私も一緒に連れて行きなさい! 同時に同場所へよ!』って言っておいたの。そしたらアイツ、何て言ったと思う?」
さて……自称“神”という食えない男ですからねぇ……
「アイツね『アナタと一緒にリュカを連れ出したら、奴は私の思う通り動いてくれない。アナタはリュカを操るコントローラーなんですよ……それを理解して下さい(笑)』だって。笑えるか馬鹿!」
笑えないです。冗談だったら面白くないですし、何よりそれは真実ですから笑えないです。
「だから気が抜けないよの私……何時でもリュカと一緒に冒険できる様に、準備と覚悟をして巻き込まれる様にしておかないとね」
そう言って立ち上がると「愚痴ったらすっきりしたわ、ありがとう」と言って、我らの頭を軽く撫で我が家から出て行くビアンカ様。
「ガウゥ~……(あの、頑張って下さい……)」
部屋を出て行くビアンカ様に、そう声をかけるのが精一杯だった。
何とか手助けは出来ないだろうか?
食事が終わり子供達は昼寝(朝寝)の時間。
リンセに抱かれながら、可愛い寝息を立てている。
私は任務の続きを行う為、再度城内へと出張って行く。
城内では多数のメイドと少数の執事達が忙しそうに働いている。
特にメイド等は真剣に働いている。
当然ではあるんだが、手を抜いて仕事をしてると大変な事が発生するのだ。
なんとリュカ様が掃除を始めるのです!
元来綺麗好きなリュカ様は、城内に汚れてる箇所があると放置できないのです。
国王なのだから部下等に命じて掃除させれば良いのだが、リュカ様は自ら掃除し始めてしまうのです。
オジロン大臣曰く『政務が嫌だから逃避してやがる』との事です。
で、徹底されたのです。
メイドは掃除をガチ本気で行う事……とね。
ウルフの小僧はこの逸話を聞いて『サボって叱られるより、仕事を取られその影響で多大な人に迷惑をかけるという事実の方が効果がある。誰も“お前がちゃんと仕事をしてれば良いものを……この給料泥棒!”と陰口を叩かれたくはないだろうからね。流石リュカさんだよ……効果抜群』と言ってた。
私もそう思う!
リュカ様が政務をサボりたいからと言って、その様な事をする訳がないのです!
ウルフは生意気だが、リュカ様の弟子としては合格だ。
そんな真面目メイド等を横目に、私は外務大臣執務室へと入って行く。
昨日ウルフの小僧にリュリュ様が叱られてたから……我が子等の所為でですが。
一応謝っておこうかな……と思います。
プックルSIDE END
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