戦国異伝
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第二百八話 小田原開城その六
「そうしておれ」
「して殿は」
「わしは十万の兵を率い」
そのうえで、というのだ。
「その伊達の軍勢に向かう」
「そうされるのですか」
「後ろは御主に任せ」
そこからさらに言うのだった。
「この江戸からな」
「江戸、ですか」
「この地からですか」
「関東を治める下地を作りたいか」
ここでだ、信長は家康を見て言った。
「竹千代、済まぬが」
「吉法師殿が伊達との戦に向かわれている間は」
「御主に。暫しの間じゃが」
それでもというのだ。
「関東を任せたいが」
「畏まりました」
家康は微笑んで信長に答えた。
「留守はお任せ下さい」
「済まぬな、戦が終わったというのに」
「何、吉法師殿の頼みなら」
それならばというのだ。
「それがし無事に務めさせて頂きます」
「さすればな」
「して」
「うむ、伊達と戦になれば」
「伊達を降し」
「それで奥州に楔を打ち込んでじゃ」
そうしてからというのだ。
「戻るとする」
「そうされますな」
「ではここは竹千代に任せてじゃ」
即ち家康と彼の家の者達にだ。
「十万の兵を率いて向かうとしよう」
「して殿」
ここで古田が信長に問うてきた。
「残り十万の兵は」
「その者達じゃな」
「はい、どうされますか」
「実は少し竹千代にもう一つ頼みたいことがある」
また家康を見て言うのだった。
「それで十万置くのじゃ」
「と、いいますと」
家康がまた信長に応える。
「それは一体」
「うむ、この江戸にな」
信長は家康にあらためて答えた。
「城があるが」
「江戸城をですか」
「改修してそのうえでじゃ」
「さらにですか」
「関東を全体を治められてじゃ」
そのうえで、というのだ。
「奥羽にも睨みを聞かせられる様な」
「そうした城にですか」
「してもらいたい、どうじゃ」
十万の兵を人夫として使い、というのだ。
「銭は織田家が出す、普請の足場だけでもよいからな」
「それを築き」
「これから関東を治めるその場としたい」
「江戸城を」
「だから頼む」
そのこともというのだ。
「よいか」
「ではそのことも」
人と銭があるのならば家康に負担はない、それでだった。
彼はこのことを頭の中で計算してだ、そのうえで信長に答えた。そしてこう言ったのだった。
「ここにそれがしが天下の名城を築いてみせます」
「頼むぞ、それもな」
「さすれば」
「さて、では伊達に向かう」
これよりというのだ。
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