美しき異形達
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四十七話 院長の話その九
「そこも考えてくれてるんだよ」
「いい人ね」
「だからここの子皆健康なんだよ」
「薊ちゃんも含めて」
「まああたしはあれだけれどな」
薊は自分の健康については笑って言った。
「鉄人だからさ」
「元々頑丈だっていうのね」
「誰か知らないけれどそう造ってくれて何よりだよ」
自分が錬金術で造られたことも言うのだった。
「健康第一だしな」
「それでも身体にいいもの食べるべきだしね」
鈴蘭は薊にこう言った。
「そうしたことを考えてくれていることはね」
「嬉しいよな」
「それって凄く有り難いことよ」
「美味くて身体にいいものを腹一杯食えるってな」
「幸せなことよ」
「だよな、最高のことだよ」
薊も鈴蘭のその言葉に頷く。
「やっぱりな」
「ええ、やっぱりね」
「まずは美味くて身体にいいものを腹一杯な」
「食べられてこそよ」
「それで雨露を凌げる場所があれば」
薊は食堂の天井を見た、しっかりとした雨漏りなぞ考えられない天井だ。薊はその天井も見てまた言った。
「言うことなしだな」
「その通りね」
黒蘭も薊のその言葉にクールに頷く。
「人はそれだけでね」
「充分だな」
「結局はそうなるわ」
「服もあればな」
「衣食住が充実していれば」
「人は充分幸せだよ」
薊はナポリタンをさらに食べつつ言った。
「それだけでな」
「そうね、しかもこの孤児院は」
「ああ、冷暖房もあってな」
「何も言うところはないわね」
「だろ?ここ凄くいい場所なんだよ」
薊は仲間達に満面の笑顔で言い切った。
「最高のお家だよ」
「薊ちゃんはいつもこう言ってくれるんだ」
院長も目を細めさせている、この時も。
「この孤児院は最高の場所だって」
「だって本当のことだからさ」
「こうも言ってくれるんだ」
「孤児院が暗いイメージあるとか言う人いるけれどさ」
俗にあるイメージであろう、やはり孤児という立場がそのイメージを作ってしまうのか。
「ここは違うよ」
「明るいわね、確かに」
「孤児とか孤児院が暗いんじゃないんだよ」
薊はまた裕香に話した。
「大切なのはさ」
「何なの?」
「その人、その場所自体がだろ」
「明るいかどうかなの」
「どんな明るい場所にいてもさ」
それでもとも言う薊だった。
「その人が暗いと暗いだろ」
「確かにね」
「だろ?だからな」
それで、と言うのだ。
「ここが明るいのは」
「ここがそうした場所だからなのね」
「そうなんだよ、あたし達皆そうだろ」
「うん、薊ちゃん達孤児だけれど」
裕香は薊だけでなく他の少女達も見てから述べた。
「皆明るいしね」
「あたし達の個性でな」
「ここもそうなのね」
「そういうことだよ」
「その通りね、そういえば私の実家のある村は」
そこはというと。
「もうね」
「暗いのかよ」
「あまり日が差さない感じが強くて」
「それでなんだな」
「暗いイメージがあるのよ」
少し曇った顔で言う裕香だった。
ページ上へ戻る