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IS 〈インフィニット・ストラトス〉 ~運命の先へ~

作者:GASHI
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第22話 「騒がしい実習」

 
前書き
前回から随分投稿が遅れてしまいまして申し訳ありません。春休み中はバイト、大学始まってからは講義と忙しすぎて書く暇ありませんでした・・・。まあ、この作品をそこまで気にするファンもいないでしょうし、大目に見てください(笑)
この話もGWに急いで書いたものなのでグダグダですが・・・、期待せずにどうぞ。
 

 
「本日より、格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する。」
「はい!!」

だだっ広いグラウンドのど真ん中に総勢80名近い生徒がズラリと並んでいる。整列する生徒たちの前にはジャージ姿の千冬さん。いつもの出席簿の代わりに何故か竹刀を持っている。流石に竹刀で生徒を折檻したら軽い怪我では済まないだろうから威嚇用だろう。恐怖政治も大概にしてほしいものだ。因みに山田先生はとある事情でこの場にいないので、そのポジションには俺が出席簿を持って立っていた。こんな雑務、クラス代表の一夏に任せればいいものを・・・。

「凰、オルコット、前に出ろ。」
「「は、はい!」」

千冬さんの呼び掛けに慌てて前に出るセシリアと鈴。雰囲気的になぜ呼ばれたのかは分かっているようだが、どうも気乗りしないようで渋々といった様子だ。そんなに露骨な態度だと、竹刀の用途が威嚇から脅迫に切り替わっちまうぞ。

「ハァ・・・。何であたしが・・・。」
「こういうのは見世物のようで気が進みませんわ・・・。」

そりゃあお前ら専用機持ちだし、生徒たちの見本になる役目を負わされるのも仕方ないだろうよ。見世物になるのが嫌だってのはよく分かるけどな。数ヶ月経った今でもわざわざ俺や一夏を見に来る女子がいるくらいだし。今朝も見世物にされてるし。

「お前ら少しはやる気を出せ。・・・アイツに良いところを見せられるぞ?」
「やはりここはイギリス代表候補生、セシリア・オルコットの出番ですわね!」
「まあ、実力の違いを見せる良い機会よね!専用機持ちの!」

うわー・・・、なんと単純な恋する乙女たちよ。呆れて物が言えない。それに千冬さんも生徒の扱い方が上手いな。いつもは鞭の一点張りだってのに、ここに来て飴を目の前にぶら下げるか。何にせよ、竹刀が威力を発揮する事態にならなくて何よりだ。

「それで、お相手はどちらに?わたくしは鈴さんでも構いませんが?」
「ふふん、こっちの台詞よ。返り討ちにしてやるんだから。」

うんうん、戦闘が好きなのは実によろしい。先程の手のひら返しを見なければ素直に感心できたんだがなぁ。

「慌てるな馬鹿共。対戦相手は・・・。」

そう言って千冬さんは空を見上げる。高度ゆえに肉眼では視認しにくいが、上空に機影が見える。高速でこちらに降下しているようだ。・・・おい待て、減速しているように見えないぞ。あれ、急停止できる速度じゃないだろ。

「きゃああああっ!ど、退いてください~っ!」

一夏の入学試験の話を聞いた時も思ったが、教員として大丈夫なのか、あれ?急停止なんて基礎の基礎だろうに。一夏といい山田先生といい、このグラウンドって呪われてんじゃないのか?・・・とりあえず助けるか。何度もクレーター作っちゃグラウンドが可哀想だ。

「しょうがない。《武神》。」

地面に衝突する前に勢いを殺すしかない。《武神》の推進力なら逆方向に引っ張れば止められるかもしれない。最低でも出来るだけ速度を落として俺がクッションになるくらいはしてやらないと。俺は急いで山田先生のもとへ駆けつけると手を引っ張る。

「うおっ!持ってかれる・・・!」

手を掴んだ瞬間、尋常じゃない力で反対方向に引っ張られる。腕が引きちぎられそうだ。決して重いとは言わない。女性に言うには緊急時とはいえ失礼だ。うん、俺は紳士だな。・・・ってそんなこと考えてる場合じゃなかった。このままじゃ地面に激突必至だ。

「チッ、『素戔嗚』!」

ちょっと荒い手段だが仕方ない。『素戔嗚』を展開した状態で瞬時加速を発動、山田先生をぶん投げる要領で無理矢理抵抗する。これが功を奏したようで勢いを見事相殺、地面に激突するギリギリの地点で体勢を安定させることができた。ふぅ、授業の序盤にこんな受難があるとは・・・。

「ご、ごめんなさい、神裂くん。どうしても止まらなくて・・・。」
「別に構いませんよ。」

すごく申し訳なさそうに山田先生が謝る。本来ならこの技術不足を糾弾したいところだが千冬さんの手前それはやりにくい。というか、この人を責めるのは幼い女の子を頭ごなしに叱っている時のような強烈な罪悪感に襲われる。なので特に何も言わないことにした。

「さて小娘ども、いつまで惚けている。さっさと始めるぞ。」
「え、あの、二対一で、ですの・・・?」
「いや、流石にそれは・・・。」

うーん、こればかりは千冬さんの言い分といえど2人と同様に首肯しかねる。急ブレーキも碌にかけられない操縦者が代表候補生2人を相手にするのはちょっと見てられないというか・・・。しかし、3人の渋面を目にしても千冬さんは余裕の笑みを崩さない。

「心配するな。山田先生はこれでも元日本代表候補生だ。今のお前たちならすぐ負ける。」

この発言に喧嘩を売られた代表候補生2人はムッとする。ほう、千冬さんがそこまで高く評価するとは。相当な腕前の持ち主なのだろうか。山田先生がそれほどの手練れとはどうも思えないんだけどなぁ。機体も学園配備の量産機の1つ、《ラファール・リヴァイヴ》だし不安要素のほうが多い。まあ、あまり否定して俺が代役にされるのも面倒だし黙っていよう。

「では、始め!」

千冬さんの号令と同時に3つの機影が飛び立つ。遠目に見ても分かる。山田先生の雰囲気がさっきと違う。極めて冷静に、いつものほんわかさは鳴りを潜めて雰囲気に鋭さを感じる。・・・なるほど、思ってたより期待できそうだ。さて、我らが副担任の実力、確と見せてもらうとしよう。

「手加減は致しませんわ!」
「本気でいくから、覚悟しなさいよ!」
「いきます!」

全員が図ったように同時に動き出す。セシリアはビット、鈴は『龍咆』を活用して山田先生を狙うが先生は防御と回避を使い分けて対処していく。これは驚いた。瞬時に回避と防御の選択を行い、それを繰り返しながら常に2人を視界に収めている。しかも格闘では鈴に対して分が悪いと理解しているようで近づけさせないように適時牽制している。セシリアの狙撃や鈴の近接戦闘のように一芸に秀でているのではない、全ての戦闘スタイルを高水準で行えるオールラウンダーだな。たいしたものだ。

「ではデュノア、山田先生が使っている機体の解説をしろ。」
「あっ、はい。山田先生の使用しているISはデュノア社製《ラファール・リヴァイヴ》です。・・・・」

地上ではシャルルが《リヴァイヴ》について見事な解説を繰り広げていた。流石はデュノアの人間、教科書以上の情報量だ。ただ俺にとっては今更聞いたところで面白くも何ともないので聞き流して上空の模擬戦を注視していた。山田先生は適度な射撃でセシリアと鈴の動きを制限、誘導している。よく状況が把握できている証拠だ。一方、セシリアと鈴は振り回されっぱなし。アイツら、互いに我が強いし上手く連携できてないな・・・。

「デュノア、そこまでで良い。そろそろ終わる。」

千冬さんの言葉通り、勝負は決まった。山田先生の完璧な誘導に翻弄されたセシリアと鈴は空中で激突、そのタイミングを狙って山田先生がグレネードを投擲してジャストミート。爆発の中から2つの機影が地面に墜落してきた。ここまで完璧な試合運びは称賛に値する。侮れないな、山田先生。

「アンタねえ、何面白いように回避先読まれてんのよ!」
「鈴さんこそ、無駄にばかすかと衝撃砲を撃つからいけないのですわ!」
「「ぐぬぬ・・・。」」

うっわー、呆れた。反省会ならまだしも口論始めやがった。まあ、言い分は両方とも間違っていないんだが、完全に自分を棚に上げているんだよなぁ。こりゃ代表候補生の株駄々下がりだな。・・・このまま放置もみっともないし、授業の妨げにならないように止めるとするか。

「やかましいぞ。今回の戦闘は両方とも反省点が多い。ぐだぐだ文句言う暇があるなら負けた理由を考えて反省しろ。」
「れ、零さん・・・。」
「で、でも・・・。」
「問答無用。後でチーム戦の特訓メニュー組んでやるから今は授業に集中しろ。」

俺の言葉を聞き、悔しそうに生徒たちの列に戻っていく代表候補生2人。なんかあの様子を見ると俺が悪者みたいだな・・・。まあ何にせよ、後で特訓メニュー組み直しだな。それと山田先生に対してもう少し敬意を払うとしよう。あんなに綺麗な戦い方は俺には出来ない。

「これからは教師に敬意を持って接するように。・・・では、グループに分かれて実習を行う。各グループリーダーは神裂を除いた専用機持ちが担当しろ。神裂は織斑とデュノア、山田先生はオルコットと凰のサポートだ。始めろ。」

千冬さんの号令で生徒たちが散らばる・・・わけもなく、男子3人に向かって一斉に集結する。まあ、特に制約なく集まれなんて言ったらこうなるだろうよ。千冬さんもこんな平凡なミスを・・・、違うな、わざとか。あの薄笑い、俺がどう対応するか見物してやがる。

「お前ら、騒いでないでさっさと散れ。あと俺はサポート役だ。グループリーダーはやらん。」
「織斑くん、組もうよ!」
「デュノアくんの操縦技術が見たいなー?」
「えー、組もうよ、神裂くん!こっちの方が楽しいってば!」

無視半分に自分勝手半分か。セシリアと鈴の立場がないな、こりゃ。負けたとはいえ素人のお前らと比べたら次元が違うだろうに。キレたいところだが千冬さんに試されていると分かっている以上、下手な手段を講じることは許されない。ここは千冬さんを見習って・・・。

「・・・選択肢をやろう。織斑先生か俺に勝つまで帰宅禁止の条件で模擬戦やり続けるか、出席番号順にグループ作るかどっちが良い?5秒で選べ。」

その台詞を聞いた途端に慌ててセシリアと鈴の方向へ駆け出す女子たちとドヤ顔しながら一夏とシャルルの元に留まる女子たちに分かれる。世話のかかる小娘どもだ。千冬さんや山田先生はこれを毎日やってるのか・・・、教師ってのも大変だなぁ。

「最初からそうしろ、まったく・・・。では、各グループは訓練機を取りに行け。」
「数は《打鉄》と《リヴァイヴ》が2機ずつですよー。早い者勝ちなので好きな方を使ってくださーい。」

おお、山田先生がいつもより教師っぽく見えるぞ。さっきの模擬戦で自信をつけたのだろう。背伸びしてる少女から背伸びしてる少女っぽい大人にランクアップだ。・・・あれ?あまり変わらないような・・・。

「よし、じゃあ男子班、準備が出来たら始めてくれ。訓練機の装着はリーダーの2人が手伝うように。フィッティングとパーソナライズは切ってあるから気にしなくていい。メニューは任せるけど、これは実戦訓練だからそのつもりでな。」

一夏とシャルルが頷く。とりあえず一通り伝えることは伝えたわけだが・・・、大丈夫かなぁ、あの2人。女子の一部、いや大部分がまだ恍惚としてるんだが。数人は告白前みたいに唇噛み締めて勇気振り絞ってるし。今授業中なんだけどなぁ。緊張する状況じゃないと思うんだよなぁ。

「「「お願いしますっ!」」」

・・・ん?おいおい、マジで告白されてるじゃないか。うわー、箒が一夏を見る目が怖い。今なら眼光だけで鬼でも殺せそうだ。・・・いや無理か。千冬さんならあれくらい受け流せるだろうし。鬼教師でびくともしないんだから本物の鬼は・・・、止めよう。千冬さんの視線を感じる。これ以上考えたら竹刀か拳骨が襲ってくるだろう。・・・あと、見間違いでなければ数人の女子がこちらに向かってきているような気が・・・。

「「「神裂くん、お願いしますっ!」」」

うん、見間違いじゃなかった。わざわざ俺の方まで猛ダッシュしてきて告白とは律儀な奴らだ。授業中じゃなければもっと嬉しかっただろうに。

「あー・・・、後で返事してやるから今は授業に集中しろ。ほら、戻った戻った。」

俺の言葉を聞いて女子たちは散っていく。ここでキッパリ断るのはモチベーションの低下に繋がる。授業に支障をきたすだろう。無駄な希望を持たせずに授業に戻すにはこの手段が最善だ・・・と思う。なぜ俺がこんな余計なことを考えねばならんのだ。気が重い・・・。

さて、それからしばらくは順調に実習が進んでいたのだが、一夏グループの方でトラブルが発生したらしい。一夏が思案に暮れているようなので手を貸すことにする。

「どうした?」
「いや、ISをしゃがませるの忘れちまって・・・。次の子が乗れなくて困ってるんだよ。」

なるほど。まあ一夏は専用機持ちだし、うっかり忘れていてもおかしくはない。とはいえ、「忘れちまった」ね・・・。忘れたのは女子生徒の方だってのに自分が忘れたみたいに言うとか、こんなとこにまでお人好し発揮か。

「コックピットが高いなら、お前が抱えて乗せてやれ。一番それが安全だろう。」
「抱えて?どういうことだ。」
「こういうことだ。次の子、ちょっと来て。」
「はーい。・・・キャッ!?」

俺に呼ばれた生徒がこっちに来る。俺は《武神》を展開するとその子(名前は忘れたので割愛)を抱え上げてコックピットへ運ぶ。この体勢は横抱き、俗に言う「お姫様抱っこ」である。突然の事態に顔を真っ赤にしているこの子は気にしないことにする。周囲の「羨ましい・・・。」等の発言も然り。

「こんな風にすればいい。」
「おう、サンキュ。」

続いてシャルルの方へ。さっきの周りの様子からして故意にシャルルに抱えられる状況を作り出す可能性があるからな。釘を刺しておかんと。一夏と箒が何やら喋っているがまあ問題ないだろう。まったく、こういう仕事って大変なんだな。山田先生ってすげえ・・・。 
 

 
後書き
長い時間待たせてグダグダ日常回とか、酷いことしてんなぁ、俺・・・。
書き溜めが尽きてしまったため、これからは投稿が不定期になります。出来る限り早めに投稿するので今後ともよろしくお願いします。 
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