ハロウィン
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2部分:第二章
第二章
「御前さんがこんなに手先が器用だとは思わなかったよ」
「カルロスじゃ」
「んっ!?カルロスじゃないのか?」
「そんなわけないですよ」
「なあ」
リンチェンとビルが顔を見合わせて言った。
「だって。約束していたの後はカルロスだし」
「五人でやるってことになったのよ、私達」
ボブとサエコも言うのだった。
「だから。カルロスしかいないじゃない」
「それもそうか」
四人の言葉に納得して頷くおじさんだった。
「そうだよな。いつも五人一緒だからな」
「日本のヒーローと同じよ」
サエコがここで少し胸を張って言う。着物の胸がそれで少し反り返って見えた。
「だからこれでいいのよ」
「そうだよな。いや、それにしても」
おじさんはまたカボチャ頭を見て言うのだった。今度はその頭に直接触れてまじまじと見ている。心から感心しているのがよくわかる。
「よくできているよ。本当にね」
「有り難うございます」
謙遜しながら言葉を返すカボチャ頭であった。こうして何軒か回ってそれでまたお菓子を集める。そのうえでお菓子を公園のベンチで五人で食べるのだった。
「今回はカルロスのおかげね」
「うん、そうだね」
「全くだよ」
公園の大きなベンチで五人並んで座ってお菓子を食べている四人は真ん中に座っているカボチャ頭を見ながらお菓子を食べつつ笑顔で言い合うのだった。
「おかげでこんなにお菓子が集まってるし」
「よくそんなの作ったよ」
彼等もまたそのカボチャ頭を撫でつつ彼を褒めるのであった。
「美味しそうだしね」
「後でこれ食べようか」
「パンプキンパイかな」
アメリカでよく食べられるお菓子の一つである。パイはアメリカではかなりよく食べられている。他にはアップルパイがよく食べられる。
「それがいいよね」
「私あれ大好きなのよ」
「僕も」
「僕もだよ」
皆それは同じだった。誰もがパンプキンパイが好きであった。
「それじゃあそれで決まりだね」
「このカボチャ頭でね」
「後で皆でパンプキンパイにしよう」
「そ、それは困るんだけれど」
カボチャ頭は彼等の話を聞いて怯えたような声を出してきた。声を聞いていると心から怯えているのがわかる。何故か恐怖を感じている声であった。
「食べたら。スペアがないと」
「スペアって!?」
「何が?」
「だからさ」
カボチャ頭は彼等に応えて言うのであった。
「僕はその。頭が」
「だからその頭を食べるんじゃない」
「そうだよ。ねえ」
「カボチャは食べるもの」
確かにこの言葉は真理ではあった。
「その為にあるものなのに」
「困るってねえ」
「変なカルロス」
カボチャ頭を見つつ言ったサエコであった。
「それにあんたカボチャ大好きじゃない」
「あっ、そういえば確かに」
「カボチャだったら何でも食べるよね」
「そうだったね、そういえば」
男の子達もサエコの言葉で気付くのだった。カルロスはカボチャが大好物なのである。
「だからいい機会じゃない」
「パンプキンパイ食べようよ、皆でね」
「けれどそれは」
しかし皆の笑顔を見てもまだ困った様子のカボチャ頭であった。
「せめて代えの頭ある?」
「代えって!?」
「何が!?」
「だから頭だよ」
彼はその困った様子でまた皆に言う。
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