普通だった少年の憑依&転移転生物語
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【東方Project】編
078 升田、人間止めるってよ
SIDE 升田 真人
「……またこのパターンか」
月の都で火事場泥棒の真似事──財宝などの〝コピー〟をした後、月で紫達──大隊の殿を努めて、頃合いを見て“腑罪証明”で地球に戻る為に〝地球〟に転移した。
……転移したのは良かったのだが、そこはかとなく〝世紀末〟な雰囲気を漂わせている世界に転移してしまった。……ちゃんと〝元の場所〟とイメージしたはずだったのだが、何を間違ったのか〝元の座標〟とスキルが認識してしまったようだった。
「さて、どうしようか」
辺りを見渡す。……鉛色の空に、荒廃したビルや大地。贔屓目に見ても、やはり〝世紀末〟にしか思えない。……それだけだったら良かったのだが──〝戻ろう〟としても、〝戻りたい〟とは思えなかった。
(……何か〝すべき〟事があるのか…)
――「うわぁぁぁぁっ!!」
「っ!?」
〝元の世界〟に帰る方法を練っていると、声音からして──女性の悲鳴が聞こえた。……聞いてしまったのは仕方ないと事故弁護しながら──そして、この状況にどことなく既視感を覚えながらもその声の方向に向かう。……顔を隠す為にも〝外套〟を纏った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……おいおい嘘だと言ってくれよ。バーィ。ここって、【PSYREN】の世界なのか?」
……目の前で蟲タイプの〝禁人種〟に追われている黒髪に赤いメッシュの入っている20代かそこらの女性──八雲 祭と思しき女性が居たのだから、そうネタ混じりで呟いてしまった俺はきっと悪くないだろう。
……しかも彼女の様子を察するに、今回は八雲 祭の〝初めて〟なのかもしれない。
(……助けるか。じゃないと〝主人公〟が生き残れない可能性がある。そうと決まれば…)
『BoostBoostBoostBoost!!』
「“エア・カッター”」
――スパン
「お前は一体──うぅ…っ」
助ける事を決めた俺は、〝出〟の早いハルケギニア式の風魔法で蟲タイプの〝禁人種〟を両断してやる。……うまいこと〝核〟ごと両断出来ていたらしく、その〝禁人種〟が灰になって消えて逝くのを確認していると、八雲 祭(仮)は安堵から気絶してしまった。倒れる前に〝帯〟で支えてやる。
「……あっ、おい──取り敢えずは近くの廃屋に運ぶか」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……知らない天井だ」
「そんな風にボケる余裕が有るなら大丈夫そうだな」
近くの廃屋に八雲 祭(仮)を運んで1時間弱。漸く八雲 祭(仮)が目を覚ました。
「っ! お前は──」
「おいおい、仮にも命の恩人に向かって〝お前〟は無いだろう。……それと、そんなに離れなくても良いだろうに。手を出すなら貴女が気絶している間にいろいろ〝おイタ〟しているさ」
気絶する前の状況を思い出したらしい八雲 祭(仮)は両手で身体を隠しながらジリジリと後退していく。
……然もありなん。今の俺の格好は〝外套〟──“赤龍皇帝の道化の外套(ブーステッド・ディバイディング・ツインギア・クラウンコート)”である。……加えて〝外套〟に備えられているフードを被っている姿なので、八雲 祭(仮)の反応は何らおかしく無い。
「……ありがとう。……って、〝私〟を知らないのか? ……一応≪天才ピアニスト≫とか云われて居たんだが。……私は八雲 祭。〝しがない〟ピアニストをやっているよ」
(ああ、確かそんな設定在ったなぁ)
「俺は──あー、なんて名乗ろうか。……シンで覚えておいてくれ。どうせ貴女と逢うのはこれで最初で最後になるだろうし、本名は内緒としておこう。それにフードを脱ぐ気もあまり無いかな。そこら辺ご理解いただけると有難い」
懐かしみながらも妹紅に名乗った偽名を使う。……当然八雲 祭は不機嫌そうだが、俺に助けられた手前文句を言えない様だ。……八雲 祭は、そんな気を取り直すかの様に質問をしてくる。
「……で、ここは? 私はあの変な──」
「〝口を開くな〟」
「っ!? むーっ! ん゛ーっ!」
八雲 祭は〝ルール〟に抵触しかねない質問をしようとしてきたので“言葉の重み”で口を噤ませる。
「すまないが口を噤ませてもらった。……八雲さんの前にも〝そのテ〟の質問をしようとした人が居たがいきなり灰になったからな。それからは、口を閉じさせる様にしているんだ」
「………」
俺の説明を理解したのか、八雲 祭は顔を青褪めさせている。
「いいか八雲さん。今から俺のする話は、理解──は出来そうに無かったら、今はただ漠然とで良いから〝そう云うもの〟だと呑み込んでくれ。……詳しい内容──とは云っても微妙かもしれないが、八雲さんが〝知りたい〟であろう情報の幾つかはこれらの紙に書いてあるから、〝帰ったら〟読むと良い」
そう──八雲祭が気絶している最中に認めてある封筒に入れられている2通の手紙をこれ見よがしに見せ、直ぐに懐へと仕舞う。
……ちなみに、その手紙の内容は…
・八雲さん──貴女は〝八雲さんの主観〟からしての未来に跳ばされている。……どれくらい未来かは判らない。もし信じられなかったら後々調べてみると良い。
・元の時代に〝帰れたら〟、〝PSI(サイ)※〟──所謂〝超能力〟に目覚めているだろう。……その際、アホみたいに鼻血が出てどうしようも無いほどの高熱に冒されるだろうが、それらの症状は放って置いても大した問題は無い。日にち薬、日にち薬。
(※…〝PSI(サイ)〟については別紙参照)
・もしこの〝未来の世界〟で雨宮 桜子と云う少女に遇ったら、それとなくで良い──目を掛けて欲しい。……その際、俺の名前は出さない方が無難。
・この〝未来の世界〟に、〝恐怖〟を覚える事。……RPGの様に──ちょっと違うかもしれないが、〝段階〟を踏みつつ強くなりましょう。……俺は初戦だけの助っ人キャラの様なものだと頭に置いといて下さい。
……大体こんな感じ。八雲 祭気絶している最中に纏めた物である。……八雲 祭へは書面に書いてある内容の幾つかを省いて説明した。
「……大体こんなところか。……ああ、もう喋れるはずですよ」
したかった説明も終わったので、“言葉の重み”を解除する。
「……いろいろ思うところは有るが、取り敢えずは礼を言おう。ありがとう。……それと、年齢も近そう──いや、歳上っぽいから敬語は要らない。……それとファーストネームで良いよ。むず痒い」
「判ったよ。……そろそろ行こうか」
「は? どこに?」
「公衆電話のある場所だよ」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
祭の公衆電話を見付けて、祭が持っていたテレフォンカードで祭からしての──〝元の時代〟に帰ったのを確認した。……“腑罪証明”を使える様になっているのを感じた俺は転移しようしたのだが…
……ちなみに、祭に手紙を渡すのは忘れていない。
閑話休題。
「……〝ここ〟は…」
〝その世界〟には見覚えが有った。〝ここ〟は──〝この世界〟は…
――ピチャ…
まるで水滴が地面を叩いた時の様な音が聞こえた。その音の元──足元に目をやれば、〝赤い点〟が1つ。……〝もしや〟と思いながら上唇と鼻の穴の間を軽く擦ってみれば、出血していた。紛う事無き鼻血だった。
「……あれ…?」
その鼻血に気付いたのが発端となったのか、今度はまるで世界が〝ひっくり返って〟いる様に感じる。……そう、それは【PSYREN】の世界にの空気を吸ってしまったが故の、〝PSI(サイ)〟の覚醒の兆候だった。……祭に伝えた事が自分の身にも起こっていた。
(あ…)
もしこれが平素なら、“五本の病爪(ファイブフォーカス)”で治療したり、“大嘘憑き(オールフィクション)”で〝無かったこと〟にしたり出来るが、今の贔屓目に見てもコンディションは最悪の一言に尽きるので、そのまま意識を手放してしまった。
………。
……。
…。
(ん? ……柔らかいな?)
〝あれから〟どれくらいの時が経ったかは判らないが、漸く目覚める事が出来る程度には体調も快復したらしい。……快復したのは良かったが何故か頭に〝柔らかい〟感触が有った。……そしてそれが、俗に云う〝膝枕〟だということは簡単に理解出来た。
目を開けると、そこには〝女神〟が居た。……よく美女に使われるような比喩的表現では無く、本物の〝女神〟だった。……つまるところのミネルヴァさんだった。取り敢えず俺はミネルヴァさんから離れる。
「……取り敢えずは、お久しぶりですミネルヴァさん。大体100年振りくらいですかね」
「あぁ。久しぶりじゃの、升田 真人よ。……少し惜しいの。お主の主観では98年と7ヶ月振りくらいになるかの。あ、そうそう──妾からお主に伝えなくてならぬ事が有ったのじゃった」
「〝伝えなくてならない〟こと?」
ミネルヴァさんは俺の疑問に答える様に続ける。
「……お主、〝現人神〟になったからの。それでお主が〝元の世界〟に転移する時、〝はっきんぐ〟して妾の元に来てもらった──と云うわけじゃ。……そもそも【PSYREN】の世界──〝可能性の未来の世界〟に跳んでしまったのは、妾の〝はっきんぐ〟の所為じゃしな」
「はっ? ……取り敢えずいろいろと突っ込みたいところは有りますが、〝現人神〟って──〝人間でありながらの神〟とかいう、あの? ……なんでさ」
ミネルヴァさんは俺の問いに鷹揚に頷いた。……その後はいろいろ──ミネルヴァさんに〝現人神〟になった理由を聞いたり、ミネルヴァさんに≪月の賢者≫に掛けられた〝枷〟を外してもらったりして、俺が〝ハルケギニアから本当に送られるはずだった時代〟に送ってもらった。
SIDE END
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