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美しき異形達

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第四十七話 院長の話その五

「紛れもなくね」
「そうか、嬉しいよ」
 院長のその言葉と心を受けてだ、薊は嬉し涙で泣きそうな顔になった。しかしそれを途中で止めてだった。
 そうしてだ、こう言ったのだった。
「あたしは院長さん達の子供なんだな」
「ずっとね、そしてこれからもね」
「そうなんだな」
「それは他の娘達もだね」
 菖蒲達も見て言うのだった。
「それぞれいい家庭に入ったね」
「はい、本当に」
「幸せに暮らしています」
 菖蒲達もこう院長に答えた。
「皆優しくて」
「とても温かいです」
「伯爵の手配だね」
 そのサン=ジェルマン伯爵のというのだ。
「あの人が君達をそれぞれね」
「いい家庭にですか」
「入れてくれたんですか」
「あの人の配剤でそうしてくれたんですか」
「どうやらね」 
 そうではないかというのだ。
「その辺りのこともよくわからないけれど」
「あの」
 ここで裕香が院長に声をかけた。
「薊ちゃん達のことはわかりましたけれど」
「君は薊ちゃんのお友達だよね」
「はい、そうです」
「いつも薊ちゃんがお世話になってるみたいだね」
「いえ、私の方こそ」
 まずはこうしたやり取りからだった。
「いつも薊ちゃんによくしてもらってます」
「そうなんだね」
「薊ちゃんとても優しいですから」
「そうかな、あたしは別にさ」
 薊は自分の横で言う裕香に少し照れ臭そうに笑って返した。
「優しくないよ」
「何かとフォローしてもらっています」
「うん、薊ちゃんはそうした娘だよね」
「そうなんです、何かあったらすぐに
「その薊ちゃんのことかな」
「いえ、薊ちゃん達いつも人と動物の間の子の姿と力の怪人達と戦ってるんです」
 裕香が院長に問うたのこのことだった。
「それがどうしても」
「怪人だね」
「はい、あの人達は一体」
「何かいつも生み出されてすぐにあたし達のところに来てさ」
 そして、とだ。薊もここでまた言った。
「戦いを挑んで来てな」
「戦っているんだね」
「その連中のことは聞いてるかな」
「そのこともね」
 院長は薊に問いに落ち着いた声で答えた。
「実はね」
「聞いてたんだな、伯爵さんに」
「薊ちゃんの力が覚醒する頃に出て来てね」
「戦いになるってか」
「そう聞いていたよ」
「じゃああの連中は何処から出て来るんだよ」
 薊は院長にさらに踏み込んで尋ねた。
「あいつ等は」
「ある錬金術師が造っているらしいね」
「ある?」
「うん、伯爵とも君達の生みの親とも違う」
「その錬金術師がかよ」
「生み出してね」
 そして、というのだ。
「あたし達に差し向けてきてるのか」
「間違いなく薊ちゃん達に悪意があるね」
「ってことはだ」
 薊はその錬金術師の悪意を聞いて瞬時に察した、直感と頭の回転の速さが彼女にそうさせたのである。 
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