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美しき異形達

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第四十七話 院長の話その一

                       美しき異形達
                    第四十七話  院長の話
 院長室まで皆を案内してだ、薊は意を決した顔で彼女達にこう言った。
「じゃあ今からさ」
「院長先生にお会いして」
「それからな」 
 こう言うのだった。
「あたしのこと聞くからさ」
「そうするのよね」
「行くな」
 自分自身のことであるが故にだ、薊はこう言った。
「これから」
「うん、じゃあ私達も」
「いてくれるんだな」
「ここまで来たからね」
 裕香がその薊に答える。
「だからね」
「そうか、悪いな」
「気にしなくていいから」 
 裕香は微笑んで薊に言葉を返した。
「そうしたことは」
「そうか、それじゃあな」
「お部屋の中に入ろう」
 裕香が言ってだ、そして。
 他の少女達も薊と一緒に中に入るのだった、そのことを話してだった。
 扉をノックした、するとすぐに声が返って来た。
「どうぞ」
「入るぜ」
 薊は彼女の口調で応えた、そして。
 その扉を開けて中に入った、他の少女達もそれに続く。すると小学校の校長室に似ているがそれよりもさらに質素なその部屋の席にだ。
 老年の白い髪がすっかり薄くなった眼鏡をかけた男性がいた、皺だらけの顔は優しげで目の光は穏やかだ。
 服は清潔で動きやすい感じだ、その人がだ。
 部屋に入って来た薊を見てだ、笑顔で言った。
「薊ちゃん、久し振りだね」
「ああ、院長さん只今」 
 薊はその人を院長と呼んで笑顔出挨拶をした。
「元気そうだな」
「薊ちゃんもね」
「あたしはこの通り元気だよ」
「それは何よりだね」
「ああ、ここも横須賀も変わってないんだな」
 薊は院長に笑顔でこのことも言った。
「それも何よりだよ」
「薊ちゃんが出て数ヶ月だからね」
「変わる筈もないか」
「街は多くの場合少しずつ変わっていくから」
「数ヶ月位だとか」
「そんなにね」
 変わらないというのだ。
「そうしたものだよ」
「そうなんだな」
「うん、それでだけれど」
「ちょっと今回帰って来たのはさ」
 薊はここで話を本題に進めた。
「聞きたいことがあってなんだよ」
「そうだね、薊ちゃん自身のことで」
「今ちょっと以上に変なことになってるんだよ」
 ここでだ、黒蘭が部屋の扉を閉めた。扉が閉まりドアのがちゃりという言葉が部屋が完全に密室になったことを示していた。
 その密室の中でだ、薊は院長にさらに問うた。
「何か変な奴等にいつも襲われてるんだよ」
「そして薊ちゃんのだね」
「あたしの親誰なんだい?」
 薊は院長にかなりダイレクトに問うた。
「ここの玄関に捨てられていたんだよな」
「いや、それはね」
「違ったのかよ」
「実はね」
 そうだったとだ、院長はここで薊に真実を話した。
「そうだったんだよ」
「じゃああたしはどうしてここに来たんだよ」
「ある人に預けられたんだよ、薊ちゃんは」
 この真実を話すのだった。
「そしてそこにいる娘達も」
「ああ、この娘以外はな」 
 ここでだ、薊は裕香を指し示して院長に話した。 
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