問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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恨むぞ
「な、な、んなななな・・・!?」
「おー、これはこれは・・・」
「まさか、公開告白になってしまったわね・・・」
そして、場所は一輝の部屋。まさか見られているとは知らずに言ってしまった十六夜の言葉は、しっかりと黒ウサギに聞かれていた。なお、何も言っていないヤシロはどうしたのかというと、一輝のベッドの上で腹を抱えて大笑いの真っ最中だ。よって、これ以上の描写はしない。金髪のロり美少女がメイド姿でスカートなんて気にもせず笑い転げている姿なんぞ、どう描写しろというのか。
だがしかし、まだ本人がいなければシリアスムードのまま見れたのかもしれないが、残念ながらここには黒ウサギがいた。そんな状況では殴り飛ばされた十六夜が、一輝の手を取って立ち上がったシーンを見ても、ホッとすることはないだろう。むしろ、
「ちょ、ヤシロさん!?これ、いつ戻ってくるのかとか、」
「お、お兄さんは、全部終わったら戻る、って言って、た・・・アハハハハハハハハ!」
「笑わないでください!というか、笑いごとじゃないのですよ!?」
本気でまずい、というか今の真赤になった顔を見られたらすぐにでもバレる、と思った黒ウサギはすぐにでも部屋を出ようとするが、しかし立ち上がろうとした黒ウサギの手を、両サイドに座っていた飛鳥と耀に掴まれる。
「お二人とも何を!?」
「いや、ねえ。さすがに聞いているにもかかわらず逃げる、というのはどうかと思って」
「ファイト、黒ウサギ」
「何をおっしゃるのですかこの問題児さま!」
「あ、戻ってくるみたいだよ」
髪色をピンクに変え、顔を真っ赤にして焦る黒ウサギを無視して、耀が画面を指さしてそう告げた。画面の中では、一輝が手を伸ばしてゲーム盤から出ようとしている。そして、黒ウサギがそれを認識した瞬間には、二人は三人の前に出てきた。
「あークソ、とりあえず傷の手当てしねえと・・・なんで三人がここにいるんだ?」
そして、その場の状況に真っ先に疑問を抱いたのは十六夜であった。戻ってきてみれば一輝の部屋に黒ウサギと飛鳥、耀がいたのだから、何も知らない彼からしてみれば当然だろう。余談だが、一輝はその隣でヤシロとアイコンタクトをとって状況を確認していた。そして少しばかり申し訳なさそうな顔をしたと思ったら、
「あー・・・悪い、十六夜」
「あん?何言って・・・オイ、なんだその表情は。なんだその『面白くなってきた』って表情は!?」
すぐにでも問題児の表情になり、親指で自分たちの背後を示してから扉に向かい、それを閉めた。完全に二人の逃げ場を封じた形である。門番よろしく立ってるし。
「ん?なんだこの古いテレビは・・・なあ、一輝。ここに映ってるのはお前のゲーム盤か?」
「あー、まあそうだな。さっきまでは生放送をしてたけど、一応録画もされてる」
「・・・生放送?」
「お客様は、そちらの四名様でございます」
「ふざけんなよテメエ!?」
これには、さすがの十六夜も顔を真っ赤にして一輝に詰め寄った。一輝の襟首をつかみ、思いっきりぶんぶんと振っている。
「つまりあれか!?さっきのなっさけねえ俺を見られてたってことか!?」
「まあ、うん。ほら、この三人もお前の様子が変だなー、って心配してたから。だったらちゃんと見ておくべきかなー、と思ってヤシロに呼んでもらっておいたんだよ」
「その結果、俺のあれが公開告白になってんじゃねえか!」
まあ、うん。これは十六夜が擁護される側であろう。アハハーとか言いながら頷いた一輝の襟首をさらに強く揺すり、二回に一回くらい一輝の後頭部が扉にぶつかっている現状を攻めるものはどこにもいないはずだ。
そして、そんなことをしながらも十六夜は状況を理解していく。
つまり、お嬢様と春日部、ヤシロ、一輝の四人がニヤニヤとしながら残りの二人を見ているのはそういうわけで、黒ウサギの髪が桃色になって顔が真っ赤になって、お嬢様と春日部につかまってるのもそういうわけで・・・と、そんな感じのところまで考えが至ると、さすがの十六夜も観念したのか、一輝の襟首をはなした。
「・・・一輝、とりあえずこの件については、今度一発殴らせろ」
「あー、うん。まあ、さすがにこれは仕方ないかなぁ・・・」
一輝に今度一発殴るといってから、十六夜は黒ウサギのほうに近づく。そこで飛鳥と耀の二人は黒ウサギの脇に手を入れて立ち上がらせ、十六夜とすれ違うようにして一輝のもとに向かう。ヤシロもまた、気が付けば一輝の隣にいた。
「あーっと、だな。黒ウサギ」
「は、はい・・・なんでしょうか?」
「なんともまあしまらねえ形になっちまったが・・・まあ、うん。俺はお前のことが好きだ」
改めて、はっきりと伝えられた黒ウサギは、顔を真っ赤にしてあわあわとして、としばらくの間観客を楽しませて、十六夜をハラハラさせてから・・・
「その、一日・・・返事を待っていただけないでしょうか?その、色々とありすぎて混乱してしまって・・・」
「・・・ああ、分かった。混乱の原因は俺にもあるだろうし・・・待つさ、一日くらい」
そう、返事をした。まあ、一輝に比べればちゃんとした返事であろう。そして、この場はこれで丸くお収まるはずであった。・・・これだけであれば、だが。
「あー、何だ。ちゃんと立ち直ってんじゃねえかよ。遊興屋に言われてちょっと楽しみにしてたんだがな・・・」
まあ、何とも残念なことに、この場はそれだけでは終わらなかった。
「まあでも、面白いもんが見れたし、いいとするか」
そう言いながらあらわれたのは白髪の少年、殿下であった。
彼はそんなことを言いながら宙を歩いて空いている窓から、一輝の部屋に入ってくる。いやちょっと待て、ここ最上階。
「オイコラどこから見てやがったテメエ」
「ヒャハハ、大体お前さんが階段を転げ落ちた辺りからだなぁ!」
「もちろん、一回目だがな」
部屋に入ってきた殿下は十六夜の質問には答えず、代わりに続いて宙を歩いて入ってきた混世魔王とグライアが答える。二人ともとてもニヤニヤしている。
「うわー・・・それにしても、このゲーム盤ボロボロだなぁ・・・」
そして、いつの間にか部屋に入っていた湖札はテレビに移されているゲーム盤の様子を見て、そう呟く。いつの間にかいた彼女に対して一輝とウロボロス川の人間以外の全員が驚くが、
「あ、黒ウサギさん、おめでとうございます。ちゃんと返事してあげてくださいね?」
「あ、はい・・・って、そうじゃないのですよ!」
それだけ伝えた彼女は、その場のカオスさに目もくれずに一輝の元まで歩いて行った。
「やっほ、兄さん。なんだかあんまりよくないタイミングで来ちゃった?」
「あー・・・いや、そうでもないぞ。かなり面白くなってくれた」
「だとしても、私としては黒ウサギさんと十六夜さんに悪いことをしたなー、って感じで・・・」
湖札はそう言いながら、頬をかいて部屋の状況に苦笑する。“ノーネーム”と“ウロボロス”の殿下派、双方の主力が勢ぞろいして約二名のことをいじっている。まあ、確かに二人には悪いことをしているかもしれない。
「あの二人については、気にしなくてもいいと思うけどねー。あ、お兄さん。私はジン君とペストちゃんに声をかけてから、他の主力の人たちを呼んでくるね?」
「そんな感じでいいんだよな、湖札?」
「うん、あとでリンちゃんが来るから、それで大丈夫だよ」
「だ、そうだ。頼んだぞ、ヤシロ」
「はーい!」
そんな中、事情を知っているヤシロは一輝に言われたとおりジンとペストの二人に家出の準備をするよう、そして浚われる様子を見咎められないように主力の全員をこの場に呼び出しに行った。
「それにしても、本当にごめんね兄さん。兄さんの部屋でこんなに大人数が騒ぐことになっちゃって」
「まあ、別に大丈夫だろ。ほら、ここ最上階の角部屋で他の部屋よりも広いし」
「・・・その伏線、今使うの?」
「作者も半分忘れてたくらいのものを、むしろよく使ったもんだと思う」
大体、十五話くらいだったかなー・・・いやはや、懐かしい。
《何逃げようとしてんだよ》
《他にも色々と残ってるんじゃない?》
ホントにそうですね・・・ちゃんとしないとなぁ・・・
というか、割り込んでくるんじゃねえ。
「さて、と。あの連中もそろそろこっちを見てることだし・・・人も集まってきたみたいだし、本題に入るか?」
「まあ、そろそろ頃合いだよね・・・うん、本題に入ろう、兄さん」
そう言いながら一輝は雑用に出しているアジ君と今日の分のリリの教育を終えた九尾を檻の中に回収して、湖札はこの部屋に入ってくるための足場にしていた結界を解除する。つまり、二人ともそろって全力を出せる状態に、なった。
「それじゃあ、兄さん。あらためて・・・」
その状態で向かい合い、二人は少し距離をとる。そして、
「喧嘩、しに来たよ。兄さん」
「おう。喧嘩、するか」
そう、お互いに告げた。
「・・・すいません、十六夜さん。本当に申し訳ないのですが、返事、もう一日追加で待っていただけないでしょうか・・・混乱が収まりそうにないのですよ・・・」
「ああ、大丈夫だ。さすがにこの状況で一日で返事、ってのは無理だろうからな。・・・恨むぞ、一輝」
・・・二人に、合掌。
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