魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epico18-Bミッドベルカ相搏つ
†††Sideはやて†††
家族や友達、みんな揃っての夏祭りにやってきたわたしら。去年はルシル君やシグナムら家族だけやったけど(それでもすごく楽しかった)、今年はすずかちゃんたち友達も一緒で、まだ屋台巡りとかしてへんのにもう十分楽しい。
そんなわたしらは今、「第一勝負は輪投げ!」チーム海鳴恒例、チーム分けしての勝負事をしてる。基本的にチーム分けの方法は使用魔法式の違いからや。ミッドチルダ式かベルカ式か、ってゆう。まぁ、ミッド・ベルカ混合チームを作って競い合うこともあるけど。
「各チームから代表者2名を選出!・・・で、輪投げって具体的に何すんの?」
「「「「そこから!?」」」」
わたしとすずかちゃんとなのはちゃんとアリサちゃんが同時にツッコミを入れる。シャルちゃんは「いや、輪投げって言うくらいだから輪を投げるんだろうけど・・・」わたしらのツッコみにたじろいだ。けど、「まぁ、大体は合ってるけどさ」アリサちゃんの言うように基本的な事は把握してるみたいや。
「実際に見た方が早いよ」
「シャルちゃんの言うように、目当ての欲しい景品っていう的に向かって輪を投げるんだよ」
みんなと一緒に輪投げの屋台へ向かう。わたしらのような子供が数人とゲーム中や。すずかちゃんの解説と実際に輪投げを見たシャルちゃんは「なるほど。ん、把握完了。初見組も大丈夫だよね?」って、リイン、フェンリルさん、フェイトちゃん、アリシアちゃん、アルフに確認した。
「こういう単純なモノなら問題ないよ」
「わたしも~♪」
「あたしもさ」
「リインも大丈夫です~」
「わた――」
「よしっ。じゃあ、さっき言った通り各チームから2人選んでね~」
「小娘・・・!」
フェンリルさんをガン無視するシャルちゃん。いくらルシル君にベッタベタやとしても、そこまで敵視することないと思うんやけどな~。まぁ、わたしは以前からフェンリルさんと付き合いがあるからかもしれへんけど。
「まぁまぁ、フェンリルさん。落ち着いてな」
「はやては優しいから好き❤」
わたしをハグしてくれたフェンリルさん。アインスやシグナムくらいの大きくて柔らかな胸にわたしの顔が埋まる。わたしは「おおきにな。わたしもフェンリルさんが好きやよ~❤」って抱き返す。あー、すごく安心できる抱き心地やわ~。
「はやてになら、マスターをあげても良いのに~」
「ぶっ!?」
夢心地から一転、地獄へ突き落されてしもうた。シャルちゃんやったら、アピールするチャンス~♪とか思うて、ルシル君にさらにアピールするんやろうけど、わたしにはシャルちゃん程にアピール出来ひんし、しようとも思うてへん。勝手やけど、今はまだみんなで楽しい時間を過ごしたいからや。せめて中学に上がる頃までは、このままがええ。
「あ、あのな、えっと!」
「はいはい、やるなら早くやろう。後がつかえくるからな」
ルシル君が手を叩いて急かした。確かにこれから混んで来るやろうし、今でも同年代やちょう年上っぽい子供らが集まって来てるし。そうゆうわけで、第一戦・輪投げ勝負に出るメンバーを選ぶことになった。すずちゃんらミッドチームとちょう距離を取って、わたしらベルカチームでメンバーを選ぶ。
「輪投げはどっちかってぇと一番簡単だから、リイン辺りでいいんじゃね?」
「そうね。特別なスキルとか必要ないし」
「そうやなぁ。リイン。やってみるか?」
他のゲーム系はある程度のスキルが必要になってくるけど、これは狙ったところに輪を投げるだけ。難しい事は何もないし。そやからヴィータやシャマルの言い分に賛成する。リインは「ですけど、向こうはそれを予想して上手な人を出して来るかもですし・・・」って不安そうにした。
「勝敗など気にするな、リイン。勝負と銘打っているが、その事実は楽しむことを前提とした遊びだ。シャルロッテの奴もそのつもりだろうしな」
「そういうわけだよ、リイン。楽しんだ者勝ちだ。シグナムの言うように勝ち負けは二の次。楽しんでこい」
シグナムとアインスに背中を押されたリインが、「判りました、リインがやるです!」参加を決意した。あと1人はどないしようかって考えたところで、他のゲーム系屋台の種類を思い浮かべる。ほとんどがしゃがんで行うようなものばかりや。それやったら、「わたしもこの輪投げに参加するわ」わたしもここで参加しとこう。
「そっちは決まった~?」
「うん、決まったよ~」
シャルちゃん達と合流。そんでそのままお客さんが居らんくなったその僅かな時を見計らって店主さんの前に行く。ベルカチームは「わたしとリインやよ」で、ミッドチームは「こっちは、アルフとすずかが行くよ」になって、わたしは自分とリインの2人分の料金200円を支払って、すずかちゃんとアルフも100円ずつ支払った。
「勝敗の決め方は、数多く景品を取った方が勝ち♪ 荷物持ちが2人も居るから大きい景品でもOKだよ♪ そんじゃ、第一回戦、はじめっ!」
店主さんに貰った輪っか5つを手に、車椅子に座った状態なわたしの腰あたりまでの高さがある長テーブルの向こう側、6段づくりの景品台にズラリと並んだ景品に体を向ける。シグナムが言うてた通り勝敗より楽しむことが重要やと思う。シャルちゃんもきっとそんな考えやろう。
(そやけど、やるからには大物を狙いたいよな)
勝敗にこだわって勝ちに行くつもりなら大物より獲り易い小物(背が高くて細い物とか)を狙う方がええ。そやけど勝つために用途のない置物なんて獲ってもしゃあない。そやったら・・・
(狙うは、あのぬいぐるみ・・・!)
下から2段目の棚にはヴィータが好きなキャラクター、のろいうさぎのぬいぐるみがある。ふと、わたしの隣に居るリインをチラッと横目で見てみる。リインもどうやらのろいうさぎに目を付けたようで、「ヴィータちゃんもきっと喜びますぅー」やる気を漲らせた。
(リインに任せよかな、のろいうさぎは。えっとじゃあ・・・。アレにしよか)
花火セットに目を付ける。7時から打ち上げ花火大会が始まるんやけど、やっぱり自分らでも花火をやりたい。とゆうわけで第一投。えいっ、と4人一斉に輪っかを投げた。結果、「アカン、外した」わたしは外してもうて、「くぅ、外れたぁ!」アルフも、「あっ」リインも、「あぅ」すずかちゃんも外した。
(すずかちゃんは髪留めセットで、アルフは焼き肉店の食事券かぁ)
「はーい、二投目~♪」
シャルちゃんの掛け声で2つ目を投げる。狙いはみんな同じ。結果、「やったですぅー!」リインと、「やった!」すずかちゃんが景品ゲット。ちなみにわたしとアルフはハズレ。それから最後まで投げ続けた結果・・・
「ミッドチームから確認! すずかは髪留めセットとお菓子セットの2つ、アルフは0! ベルカチームは、はやては花火セット1つ、リインののろいうさぎ1つの計2つ! 第一回戦・輪投げ勝負は、引き分け!」
2対2とゆうことで、初戦は引き分けになった。なかなかに目立つわたしらは屋台から離れて、次の屋台へ向かおうとした時、くぅ~、ってお腹の鳴る音がわたしらの中から聞こえてきた。
「お腹すいたです~」「腹減った~、肉ぅ~」
リインとアルフやった。遅れて、「屋台巡りの為に昼食抜きにするって決めてたもんね」すずかちゃんや、「模擬選後のお菓子だけじゃやっぱ足んないわ~」アリサちゃんもお腹を鳴らして顔を赤らめた。
「第二戦に行く前にちょろっと腹ごしらえにしようか」
そう提案したシャルちゃんに「賛成~!」わたしら子供組は賛成した。そうゆうわけで第二戦の屋台を決めるついでに食糧調達へゴー♪や。りんご飴とかチョコバナナとかかき氷は、とりあえずは後回しやな。
「第二戦は射的で決定!」
次のゲームは決定した。そんで「エビ焼きとタコ焼きでけって~!」食べ物も決定。タコ焼きは誰もが知るファストフードやけど、タコの代わりにエビを入れるエビ焼きってゆうのはちょう珍しいかもしれへん。とにかく3人で1パックを分け合うように購入。他の人らの邪魔になれへんように道の端に寄って、「いただきます!」食べ合う。
「エビ焼きもなかなかに美味いですね」
「はふはふっ。タコ焼きも美味しいですぅー!」
「祭りで売ってる食い物って味とかいろいろ完成度低いのに、なんでか美味く感じるんだよな~」
わたしは、アインスとヴィータとリインの4人で分け合って食べる。シグナムはシャマルとザフィーラ、すずかちゃんはなのはちゃんとアリサちゃん、フェイトちゃんはアリシアちゃんとアルフ、そんでルシル君はフェンリルさんとシャルちゃんが分け合ってるんやけど・・・
「ルシル~」「マスター~」
「「あーん❤」」
「熱っ! 熱い! 一気に突き出して来るな馬鹿!」
あっつあつのタコ焼きとエビ焼きを同時に口に当てられて怒るルシル君。さすがにあれは酷いわぁ。何回もふぅーふぅーして、やっと口に入れることが出来る熱さになるのに、フェンリルさんとシャルちゃんはそのまま突き出した。下手すると火傷もんや。
「ふぅー、ふぅー。はい、リイン。あーんや」
「あ~ん、ですぅ~♪ はふっ、はふっ」
リインにあーんして、次に「アインス、あーん」にも、「ヴィータ、あーん」にも食べさせる。そんなわたしらを見たフェンリルさんとシャルちゃんも爪楊枝に刺したタコ焼きとエビ焼きにふぅー、ふぅーしてから「あーん❤」再チャレンジ。ルシル君は断るのも無理やって判断したようで、2人からのあーんを受け入れた。
「はやて」「主はやて」「はやてちゃん」
「「「あーん♪」」」
「あーん♪」
わたしも、アインス達からのあーんを受けた。うん、美味いな。こうして第一次腹ごしらえも終えて、第二戦の射的に向かうことになった。
†††Sideはやて⇒アリシア†††
満腹じゃないけどある程度の腹ごしらえを終えたわたし達は、第二戦を行うために射的屋さんへやって来た。コルク栓を打ち出すコルク銃で、欲しい景品を倒したり景品台から落としたりすればゲットっていうゲーム。
「そんじゃ第二戦のメンバーを発表! なのはとアリシア!」
「アリシアちゃん、頑張ろうね!」
「うんっ。射撃系も目指す以上、負けられないもん!」
本格的に魔法の習得を始めたわたしは、射撃魔法を使うフェイトやなのは達から射撃魔法の手ほどきを受けてる。言うなれば弟子。今からやる射的は魔法の射撃とは全然違うけど、狙ったものを撃ち落とすっていうのは共通だからしっかりやらないと。
「ベルカチーム! ヴィータ、シャマル!」
「ルシルが居りゃ勝てたんだけどな~」
「わ、私だってやれば出来るもん!」
「もん、って・・・。まぁ、いいや。楽しむことが前提だろうと、勝たなきゃ意味がねぇ。勝つぞ、シャマル!」
「はやてちゃん、リイン。何か欲しい物ありますか?」
「聴けよ!!」
まぁ、そんなこんなで「第二戦・射的! レディ・・・ファイッ!」シャルの号令の下、わたしやなのは達がライフルタイプのコルク銃の銃口にコルクを詰める。さてと。どれを狙おうかな。あんまり重そうで、倒れにくそうな景品は弾が無駄になるし。でもだからと言ってくだらない物を獲ってもどうしようもないし・・・。
(ぬいぐるみやフィギュアにおもちゃにお菓子、それにゲームソフト、かぁ・・・)
ぬいぐるみかぁ。そろそろわたしの部屋に新しい子を迎えても良いかな。それともゲームソフトにしようかな。非番の時とかみんなでアリサの家でやるし。あー、でもコルク銃で倒せるのかどうか判らない。撃てるコルクは5発。
ここは、最初の目的通りぬいぐるみにしようっと。狙うはデフォルメされたシロクマ。ちょこんと座り込んだ格好で、かなり可愛い。じゃ、早速コルク銃を標的に向けて狙い澄ます。
「狙い撃つぜ!」
トリガーを引くと、気の抜けた音と一緒にコルクが標的に向かって、コツンとぬいぐるみのおでこにヒット。大きく揺らしたけど倒れなかった。んー、残念。見ればなのは達もダメだったみたい。なのは程の射撃系がダメってことは、射撃魔法が得意とかは関係ないっぽい。
「ねぇ、なのは。ちょっとお願いがあるんだけど・・・」
「お願い? いいよ」
「えっとね・・・」
なのはに耳打ちする。正直、これはなのはのコルクも使うことになるから、なのはの欲しい物を犠牲になるってこと。だけど、「うん、いいよ。面白そうだね、そのやり方♪」なのはは快諾してくれた。
「ありがとう、なのは。それじゃあ、よろしく!」
「オーケー!」
狙いはわたしの標的のぬいぐるみ。ヴィータは当ててはいるけど「ちくしょう、倒れねぇ!」って頭を抱えて、「あん、当たらないわ~」シャマル先生はハズしてばっか。終いには店主さんに当てて「ごめんなさーい!」謝る始末。
「勝った・・・!」
トリガーを引いてコルクを撃ち出す。わたしの撃ったコルクはぬいぐるみにヒット。大きく揺れたところに、「えいっ!」なのはの追撃弾がヒット。さらに大きく揺れて、ぬいぐるみが後ろにコロンと倒れて棚から落ちた。
「「やったー!!」」
なのはとハイタッチ。店主さんや見学者たちが「おお!」って歓声を上げた。店主さんから「はい、お嬢ちゃん。ナイスショット!」ぬいぐるみを貰って、「持ってて~」ルシルに預ける。
ここで気付いたけどルシルとザフィーラは、アルフやシグナムやアインスに痴漢しようとしてたり盗撮しようとしてたりする男の人たちを人知れず迎撃してた。しつこい人にはピンポイントで殺気を飛ばして、この場から強制退去してる。
「そういう手があったかよ。おい、シャマル。あたしらもアレで行くぞ!」
「ええー、そんな! まともに当てられてもないのにぃ!」
「だったら当てるようにしろよ!」
「ひーん。ルシル君、代わって~」
シャマル先生が半泣き状態でルシルに助けを求めた。コルク銃を突き出しながら「私が荷物番をするから~!」って懇願。たぶんルシルは射的も上手だと思う。こういうゲームにも万能的な巧さを発揮するに違いない。
「シャマル」
「ルシル君・・・」
ルシルがシャマル先生のコルク銃に手を伸ばして銃身に触れた。パァって表情を輝かせたシャマル先生だったけど、「頑張れ♪」ルシルは笑顔でコルク銃を押し返したから、「ガーン! そんなぁ・・・」はい、残念、シャマル先生はゲーム続行です。
「はやてちゃん・・・」
「シャマル、大丈夫や。勝ち負けなんて気にせんでええ。ヴィータもやよ~♪」
「はーい。・・・しゃあねぇ。シャマル。おまえ適当に撃て。あたしがフォローしてやる」
「あぅぅ。そんな真剣にならなくてもぉ・・・」
2人のそんなやり取りの間でもわたしとなのはは順調にぬいぐるみを撃墜。そんなこんなで第二戦・射的は終了。さっきと同じように通行の邪魔にならないように屋台から離れて、「第二戦は圧倒的大差で決着!」結果発表。
「ミッドチーム! なのはとアリシアの景品獲得数は3つ! ベルカチーム! ヴィータとシャマル先生の景品獲得数は0! 第二戦の勝者はミッドチーム!」
わたし達ミッドチームはメンバー全員とハイタッチを交わす。で、ベルカチームはと言うと、「シャマルよぉ、全弾ハズすってねぇだろ」ヴィータが溜息を吐いて、「だから代わって、って言ったのにぃ~。クスン」シャマル先生は落ち込んでた。そして獲った景品はルシルとザフィーラの手に。ルシルはまだ良いんだけど、ザフィーラがぬいぐるみを持ってるのはなんかシュール。
「そんじゃ第三戦と行きますか♪」
シャルはすでに決めてるようで、その屋台へと向かう。そんな中、「今の内にかき氷食べておこか」ってはやてが提案した。夏真っ盛りでも、夜になるとちょっと涼しくなる。だから日が沈み切る前に食べようってことみたい。
かき氷はお腹に溜まらないからそれぞれ好きな味のやつを購入。ちなみにわたしはブルーハワイってやつ。いろんな味や色があってすっごく迷っちゃった。でもフェイトやなのは達が食べさせ合いっこしてくれるって言うから、一番好きなブルーハワイを買った。
「はむっ。・・・ん~~! 頭キーン来たぁぁーーー!」
この前、初めてかき氷を食べた時に知ったアイスクリーム頭痛に襲われた。すかさずかき氷の器をおでこに当てる。これが一番の対処法だってルシルが教えてくれた。
「にゃはは。ゆっくり食べないとやっぱりダメだね~」
「でもかき氷を食べたら一度はこの頭痛を体験してみたいのよね~」
「アリサはMなの?」
アリサの言い分にわたしも賛成しようとしたらシャルがそう訊いた。意味が解らないわたし達は「Mってなに?」って訊き返す。すると、「失言!」ルシルがシャルの頭を軽く小突いた。
「いったぁぁーーー!」
「みんな、気にしないでゆっくり食べような」
ルシルの有無を言わせない声色にわたし達は「はーい」返事して、シャルのことを放ってかき氷の続きを食べる。そして「あーん」フェイト達と食べさせ合いっこ。宇治金時、コーヒーフラッペ、カルピス、リンゴ、青リンゴ、マンゴー、オレンジ、コーラ、メロン、レモン、ストロベリー、ピーチ、パイナップル、バナナ、グレープ、ハイビスカスっていう16種類の味だから、みんなからちょっとずつ貰ってく。
「(シグナムの宇治金時はちょっと苦いなぁ。えっと次は・・・)ルシル。ちょっとちょうーだい♪」
「ああ。どうぞ」
「ありがとう♪ アイスいっぱいもらってもいい?」
「いいよ」
ルシルが頼んだのはコーヒーフラッペ。コーヒー味のシロップを掛けたかき氷にアイスクリームを乗せたフラッペってやつ。ルシルのお言葉に甘えてアイスクリームいっぱいとちょっとのコーヒー味かき氷を貰おう。というわけで、「あーん」口を開ける。
「??・・・いや、自分のスプーンで掬ったらどうだ」
「はーやーく~」
「いやな、俺のスプーンだと関節キスになるぞ」
「「「「あ」」」」
ここまで同性だったから気にも留めてなかったけど、ルシルは男の子だった。危ない、危ない。さすがに間接とは言えキスは出来ないよ。しょうがなく自分のかき氷に刺さってるスプーンを手にとって「いただきます」ルシルのかき氷を貰う。コーヒーの苦みがアイスクリームの甘さでちょうどいい感じ。
「じゃ、次はザフィーラのちょうーだ~い」
「うむ」
ザフィーラが差し出して来てくれたのは青リンゴ味のかき氷で、これも美味しかった。ふっふっふ。これで全味制覇なのだ。
「ルシルぅ~、あーん♪」「マスター、あーん❤」
「えっと、あの、ルシル君、あーんや」
シャルにフェンリルは積極的に口を開けて待ち構えて、はやては自分のメロン味のかき氷を掬ったスプーンをルシルに差し出した。おお、はやて、勇気振りしぼって大胆行動に出ちゃった。さぁ、ルシルはこの3人をどう対処するの?
ルシルはちょっと考えた後、シャルとフェンリルのかき氷に刺さったスプーンを抜いて、そのスプーンで自分のかき氷を掬った。そこまでならなんでもないけど、ルシルはシャルのスプーンをフェンリルに銜えさせて、フェンリルのスプーンをシャルに銜えさせた。
「「っむぐ・・・!」」
慌ててスプーンを口から引き抜くシャルとフェンリル。で、最後にルシルははやてのあーんを受けた。はやてのスプーンをパクっと銜えて「うん、メロン味も美味いな」って微笑んだ。自分でやっておいて顔を真っ赤にして照れるはやて。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
シャルは絶叫。フェンリルは「まぁ、はやてになら」って納得。それからわたし達は舌を出し合って変色してるのを見て笑い合う。さて、かき氷を食べたところで、「はーい、第三戦ですよ~・・・」テンション降下中なシャルが指差した屋台には、球入れって書かれてた。
†††Sideアリシア⇒アリサ†††
第三戦は球入れ。運動会の球入れみたいじゃなくて、ゲームセンターにあるバスケットゴールにボールを入れるみたいなやつ。で、「ミッドチームはアリサでぇ~、ベルカチームはシーちゃんで~す」シャルがこのゲームに参加するあたしと、「シーちゃんとは私か?」シグナムの名前を呼びあげた。
「ぷふっ! シーちゃんて、シーちゃんて・・・!」
「笑っちゃシグナムに失礼ですよ、ヴィータちゃん!」
シグナムに対しての可愛い呼び名に、ヴィータが吹き出し、それをリインが窘めた。とにかく、あたしの最大のライバル、シグナムとの一騎打ち勝負。ゲーム台は1台ってことで交代して打ち合うことに。
「負けないわよ、シグナム!」
「フッ。この程度の遊戯であれば技術など関係あるまい。勝たせてもらおう」
前の人たち数人のプレイを見学。シグナムはジッと見つめて巧い人の姿勢とか力加減とかを学んでる。そうしてあたし達の番になった。シグナムとジャンケンして、「先攻はあたしね」まずはあたしからになった。店主さんに100円を支払って、「制限時間は1分。ゴールに入れた回数に応じて景品レベルがありまーす!」店主さんからルールが説明される。
「それではチャレンジャーのお嬢さん、準備はオーケー?」
コクンと頷き返す。店主さんの「それではゲーム・・・スタート!」の掛け声と同時に手元にあるバスケットボールより一回り小さくて軽いボールを手にとって、2mほど離れてるゴールへと向けて投げる。入ったかどうかを確認する前に次のボールを手にとって投げる。
「残り10秒! 8、7、6、5、4、3、2、1、終~了~!」
それを繰り返して1分、ひたすらにボールを投げた。その結果、「ゴール数、14球! これは大健闘!!」店主さんの発表に周囲から拍手が起きる。これまでの最多記録と一緒だって話。
「景品は、今日の夏祭りの屋台全店無料券! えっと、お友達は何人?」
「あたし合わせて16人、です」
「それじゃあ16枚ね。1枚につき1店ね」
「ありがとうございます!」
16枚の今日の夏祭りに出店してる屋台すべてに使える無料券をゲット。次は「これはまたとんでもない美女がチャレンジ!」シグナムの番。ゲーム台と向かい合うシグナムが放つ空気に、あたし達や店主さん、見学者も口を閉ざして固唾を飲む。
「制限時間1分。チャレンジャーのお姉さん、準備はオーケー?」
「ああ、いつでも構わん」
「クールビューティ~❤ お姉さんの準備も終わったようなので・・・。ゲーム、スタート!」
シグナムの番が始まった。と、「おお!?」どよめきが上がる。シグナムの投げ方が理由だ。あたしや他の人たちはバスケットのシュートのような投げ方をしてた。けどシグナムは「片手投げ!?」のアンダースローだった。右手でボールを鷲掴んで投げて、間髪入れずに左手で鷲掴んだボールを投げて、空いた右手でまたボールを鷲掴んで投げる、を繰り返した。
「すげぇ、1球も外してねぇ!」
「1秒に1ゴールってどんだけだよ!」
しかも百発百中。気だるそうにしての投げ方なのに、1球もゴールに弾かれることなくリングを潜ってく。20秒、30秒、40秒と経っても1球もハズレることなく順調にゴール数を稼いでいって、50秒に入ったところで、「このままパーフェクトか!?」って店主さんや見学者たちのボルテージが最高潮。そして「終了!」店主さんの一言と一緒に大喝采が起きた。
「なんと60秒間、一度もハズすことのないパーフェクト! 文句無しの大記録! クールビューティに盛大な拍手を!」
負けた。文句もなんもないわ。経験アリのあたしと経験ナシのシグナム。どっちが有利かって言うとあたしなのに、ここまで差を付けられると悔しいを通り越して清々しいわ。だからあたしも拍手をシグナムに送る。
「では景品授与! 好きな物を1つ持っていってちょうだい!」
「どれでもいいのか?」
「もち! ここまでトンデモプレイを見せてもらったからね!」
「では・・・50ゴールの景品――高級牛肉2kgの引換券で」
シグナムが選んだのは牛肉だった。シグナムってあんまし高級食材とか興味ないって思ってたんだけど。店主さんから加盟店で高級牛肉と交換できる引換券を貰ったことでここでの目的は果たした。店主さんや見学者たちから見送られながらあたし達は球入れ屋台から離れて、第四戦の屋台へと向かう。
「次は、フェイトとアインスの勝負ね~。ダーツとか紙飛行機飛ばしとかあるけど、どうする? 金魚とかスーパーボールは後々が面倒だからやめた方が良いっしょ♪」
「そうやね~。金魚の世話も大変やし、スーパーボールは持っててもしゃあないし。あんま形にならん景品がええかもね。商品券とか引換券とか」
さっきまでローテンションだったシャルだけど、なんとなくテンションが元に戻ってる感じがするわ。あたしの表情から察したのか、「さっきまでルシル君に頭を撫でられてたんだよ」ってすずかが教えてくれた。あたしとシグナムの勝負中、落ち込んでるシャルを元気づけるために頭を撫で続けたって話だった。イチャついてんじゃないわよ。
とにかく第五戦のゲームをどうするか、途中でサーターアンダギーやチュロスを食べ歩きしながら探す。そんな中、「ワクドキ☆ざぶ~んの無料券が景品っていう店があるよ」なのはがある屋台を指差した。
「レジャープールやね。夏休みには海行く予定やけど、プールも行く?」
「悪くないわね。夏祭りに海に山、それにプールも制覇しときましょうか」
あたしは賛成。海はすずかん家のプライベートビーチに行く予定で、近くには山もあるから海と山を一緒に楽しめるし、夏祭りは今来てる。だったらプールも行っとかなきゃね。なのは達も賛成意見で、「じゃあ、第四戦はだるま落としに決定~♪」ということになった。
「ミッドチームはフェイト、ベルカチームはアインス! 狙うはレジャープール・ワクドキ☆ざぶ~んの無料券が景品の最高難度・10段!」
アインスの身長より高いだるま落としに挑戦。子供なフェイトを気遣う店主さんだったけど、「大丈夫です。これくらいなら・・・!」って一番下の段を自分の身長と同じくらいのハンマーを振り払って打ち抜いた。さらに二段目も打ち抜くから、見学者たちから拍手喝采。アインスも負けじと二段目を打ち抜いたんだけど、こっちの歓声は男の人ばかり。その理由は・・・
「すげぇ、胸が揺れてる・・・!」
「メッチャ脚が綺麗だよな!」
アインスがハンマーを振るうたびにその大きな胸が揺れて、浴衣の裾から白い脚が見えたり浴衣が崩れ始めたりするから。フェイトも実際、脚が見えちゃってるけど子供ってこともあるから、純粋に打ち抜いてるすごさに歓声が上がってる。
「アインス!」「フェイト!」
ここでルシルとアルフが乱入。店主さんに一言断りを入れてからアインスとフェイトをどこかへ連れてった。戻って来た時、2人は浴衣じゃなくてジャージ姿になってた。すると男の見学者たちから大ブーイング。そんな人たちに「あ?」ルシルがギラリと睨み返すと、シーンと静まった。うん、今の眼光は恐いわ。
「おおきにな、ルシル君。助かったわ」
「感謝するよ、ルシル」
「いいよ。俺としても、あの2人の肌をあんな連中に見せたくないしな」
「ルシル君、お父さんとかお兄ちゃんみたい」
「もしくは恋人かな」
「あんたの感性年齢というか精神年齢というか、絶対に10歳じゃないわよね」
「ほっとけ。というか、君らも絶対に10歳じゃないからな、内面的な年齢で言うと」
プレイの続きを始めた2人を見守る中、 あたし達はそんな会話をする。他の10歳男子だったら、女の家族や友達の肌を他の人に見せたくないって思わないもの。そんなこんなで、「なんと! 2人とも10段クリア! 大赤字決定だぁぁーーー!!」フェイトとアインスがだるま落としパーフェクトクリア。夏休みに出掛ける場所がまた1つ増えた。
†††Sideアリサ⇒ルシリオン†††
チーム海鳴恒例の勝負事・夏の陣も最終戦。対決するのはフェンリルとシャル。そして勝負方法は、「ミス海鳴! 夏祭りの陣! エントリーしてくれたのは18人の美女!」だった。ゲームじゃ面白くないと言うフェンリルとシャルは、ミス海鳴を決める催しがあるのを知り、他人に認めてもらった方が面白いという考えに至ってエントリー。ああしてステージに立っているわけだ。
「シャルちゃん、大人モードに変身できたんだね~」
「一体なにを目的として習得したか判んないからちょっと恐怖だわ」
「たぶんシャルちゃんのことだからルシル君関連だと思うんだけど」
「ルシルも大人モードに変身できるから。何か変な事でも思い付いたのかも」
「ルシル君、気を付けてな」
はやての割と本気な声色での忠告に「了解」素直に頷いておく。そんな中、ステージでは司会者が参加者の自己アピールを訊いていて、誰に為に参加したのかっていう問いに「好きな人の為です❤」シャルはそう答えた。湧き上がる歓声と、シャルに想われている男に対する嫉妬のブーイングが湧き起こる。
「なぁ、ルシル。お前ってことがバレたら面白い事になるかもな」
ヴィータの含み笑いに「やめろよ、マジで」俺は懇願。そんなことになったら面倒くさい事態に陥ること間違いなし。どうなるか想像していると、マイクを向けられたフェンリルが「マスター、見てますか~❤ あなたの為に、一番になりまーす♪」俺に向かって手を振りやがった。あのクソ犬、って歯を噛む。ちくしょう、嫉妬の視線が俺に向けられているのがビシビシと伝わって来る。
「マスター? 8番さん、マスターという人とはどういった関係なのかな?」
「マスターはマスターです♪ 身も心も捧げたい、大切な御主人様です❤」
「そう言ったプレイが好きな人なんですかね~?」
「あなたにだけは絶対に負けないからね! ミス海鳴も、想い人もわたしが頂く!」
シャルがフェンリルに指差して、フェンリルだけでなく他の参加者にまで宣戦布告。さらに俺に突き刺さる視線。もう嫌だ。逃げ出したい衝動に駆られていると、「ルシル君、決着まで時間掛かりそうやし、ちょう離れよか」はやてが俺の浴衣をちょんっと引っ張った。
「だな。このままここに居たらマジでヤバそうだし」
「ここは人がいっぱいで、リインにはステージが見えないですし、ちょっと苦しいです」
「ヴィータちゃんとリインちゃんが潰されちゃう前に離れた方が良いかと」
「そうやな。車椅子も場所取ってるし」
決まりだ。俺たち八神家はこの場から離脱。なのは達は残るそうだ。なのは達と一度別れた俺たちは人の少ない場所を探して、そこで休憩だ。近くの屋台を見て回るはやてとヴィータとリインを微笑ましく見守っていると、「わぁ、綺麗」はやて達がある屋台で止まった。
「ガラス細工の店か」
そこはガラスや銀の工芸店だった。値段は他の屋台に比べてちょっと高いが、それでも子供の小遣いでも十分買える良心的なものだった。
「ルシル君。なんか奢ってもらえるって話しやったけど・・・」
「ん? ああ、何か目当ての物でもあったのか?」
はやてもやっぱり女の子だな。こういうアクセサリーに目を輝かせるなんて。はやては「コレ、ええかな」って1つの指環を手に取った。指環。先の次元世界でのフェイトを思い返させる。分かたれたもう1人の俺と、そんな俺を愛してくれたフェイトは幸せになってくれただろうか。
「いいよ。・・・あ、そうだ」
あることを思い付き、俺は複数のアクセサリーを購入する。リインに「ルシル君。そんなに買ってどうするです?」と訊かれた俺は、「こうするんだよ」と、まずははやての右手を取った。
「右手の人差し指は、自分の意志を貫き通す指なんだよ。集中力を高めたい時、物事を達成させたい時とかね」
はやての右の人差し指に指環をはめる。若干、気落ちしてそうな表情を見せたが、「おおきにな。大事にする♪」すぐに可愛い笑顔を向けてくれた。次はリインの小さな左の人差し指に指輪をはめる。
「左の人差し指は、精神を導いて能力を向上させる指」
続けてシグナムとヴィータの右手を取って、中指に指輪をはめる。
「行動力や迅速さ、直観力を向上させるのは、右の中指」
次はシャマルの左の中指に指輪をはめる。
「仕事の成功、家内安全や、家族・友人・仕事仲間とより良いコミュニケーションを高め、自身の能力を高める指が左中指だ」
ザフィーラは指が太くて無理だったため、イヤリングにした。許せ、首輪よりはマシだろう。そして最後に「アインス、コレは君の分だ」と彼女の分の指環を手に取り、「我が手に携えしは確かなる幻想・・・」ちょっと細工をしてから、彼女の左手の小指に指輪をはめる。
「叶えたい願いが実現する力を持つのが左小指なんだ」
「願いが叶う・・・。ありがとう、ルシル。最期の最期まで大切にさせてもらうよ」
右手で指環を覆い、両手を胸に抱くように構えたアインスからの微笑み。その頬笑みに癒されていると、「ルシル君にもプレゼントや♪」はやてが俺に指環を手渡した。
「わたしは指環の意味は判らへんから、ルシル君が思う好きな指にはめてな♪」
「・・・ありがとう、はやて。それじゃあ・・・右の人差し指」
「おお、お揃いやな」
「ああ、はやてとお揃いだ」
はやてと手を翳し合って微笑み合う。それからさっきまで巡っていたゲーム屋台を改めて回って時間を潰していると、『はやてちゃん達は今どこ? 合流しようか』なのはから念話が来た。あれから20分少ししか経っていないのにな。
合流場所は、花火が良く見える公園内にある丘の休憩所。夕食をみんなで買ってから合流ということで、念話でどれを購入したか、するかを相談しながら1つとして被らないように購入して、合流場所へ。
「早かったな。ミス海鳴ってそんなに早く終わるものなのか?」
「にゃはは。それが2人ともお互いを妨害し合っちゃって・・・」
「強制失格の即退場を食らったのよ」
呆れるなのはやアリサ、それにフェイト達。つまらない時間を申し訳なかったと、フェンリルとシャルの関係者として深く謝罪を申し上げたい。
さて。気持ちを切り替えて夕食だ。休憩所の、お世辞にも広いとは言えない木製の四角いテーブルにパックを並べ、そこから思い思いに箸を伸ばして食べていく。すると、「はやて達、その指環どうしたの?」とアリシアが小首を傾げた。
「あ、色は違うけど、みんな同じ指環してる~」
「ザフィーラは耳飾りかい。似合ってるじゃないか」
「ホントだ、可愛い♪」
なのはやアルフやすずか、みんなにも見えるように手の甲を向ける。リインが「ルシル君にプレゼントしてもらったですよ~♪」と言うと、「ずるい! はやて達にだけなんてず~る~い~!」シャルが騒ぎだす。
「ルシル、ルシル。わたしも何か欲しい!」
「そういう約束だもんな。花火を見終わったら買いに行こうな」
「やったー!」
両手を振り上げて喜ぶアリシアの頭を撫でる。なんかもう妹のシエルを見ているようだ、この喜びよう。俺へのイタズラ心が無くなれば良いんだけどなぁ。
「シャルにも何か買うから、今は大人しく食べよう。オーケー?」
「オッケー! 指環、指環♪ 婚約指環❤」
「マスター! 私にも婚約指環をください!」
「ただの指環だ、馬鹿2人!」
そう怒鳴った直後、ドーン!と腹に響く音と一緒に夜空に花火が咲いた。約1万5千発の花火に、俺たちは見惚れた。花火の打ち上げが終わった後は、シャルやアリシア達に指環やガラスのオブジェを購入(計6千円)。思い思いにゲームや食べ物を買い、人が疎らになってきたところで景品の花火をして、俺たちの夏祭りは終わった。
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