| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

エターナルトラベラー

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十七話

当主とのひと悶着の後、俺とソラは手に入れた永遠の万華鏡写輪眼を使いこなすべく訓練に入った。

二つ以上の能力が宿った事によって発動する三つ目の能力。

そう、須佐能乎(スサノオ)だ。

これは今、俺達が行使できる力の中で最大の術だろう。

チャクラで出来た益荒男を操る技術。

その能力は計り知れない。

その力は俺達をはるか高みに上らせるには十分だろう。

…ただしそのチャクラで出来た益荒男が遠隔で操作できれば…

今の俺達ではその身を中心にオーラで具現化しているような状態だ。

念で言うところの具現化系+変化系+操作系の複合能力である須佐能乎は俺達自身の練度の未熟さから、放出系、つまりオーラの切り離しが出来ない状態だ。

具現化されたオーラの衣を纏っているようなものだ。

しかもかなり燃費悪いし…

今のところ、スサノオだけの使用でも10分でオーラが飛ぶ。

これはオーラの絶対量を増やさなければ問題の解決にはならない。

しかしこのスサノオ、隠を使うとその姿を限りなく見えなくする事が可能なため、相手の意表をつく事が出来るかも知れない。

後は万華鏡写輪眼の使用時に出る血涙を何とかしたいところだ。

使い続けるごとに段々出血の量は減っていっているので訓練次第では可能だろう。

がんばろう。



最近ヒナタと当主の確執が深まってきたように思う。

優しいヒナタには人を傷つける柔術の修行は苦痛なようだ。

その所為で伸び悩む技術に父親の期待に答えられないと悩み、悪循環。

そしてついにヒナタは跡目として見限られ、アカデミーに途中編入する事となった。

ヒナタ8歳のことである。

それに伴い俺とソラもアカデミーに通うことになる。

本当は原作に関わるようなタイミングでアカデミーなんかに関わる気は無かったのだが、当主自らヒナタを影ながら守って欲しいと言われれば使用人見習いの俺達に断る事など出来ない。

心配ならそう言って欲しい物なのに、間接的にでもヒナタを守ろうとする親の愛情を感じる。

もうちょっと素直になれない物か…

そんなこんなでアカデミーに編入した俺達。

いや、参った。

孤児であり、使用人見習いの身分は結構低いらしく、両親が現役の忍者の子供から馬鹿にされる馬鹿にされる。

俺一人だったらぽっきりと心が折れていたよ。

おれが心を保つ事が出来たのはひとえにソラという半身が居ればこそ。

かくも人の心は醜いものか。


アカデミーに編入してから数年。

最近ヒナタが落ちこぼれと名高いうずまきナルトを目で追う姿を目にする事が多くなってきた。

ヒナタが主人公であるナルトに好意を持つ事は原作知識にあったような気がする。

原作知識といえば、ストーリーの大まかな、本当に大まかな事しか思い出せていない。

簡単に言えば、ナルト、サスケ、サクラの3人を中心とした物語だったなあと言う程度。

仕方ないとも思う。

なんせ読んだのはもう20年以上前だしね。

ゼロ魔で過ごした17年の内に、本当に好きだった作品以外は殆ど忘れてしまった。

だからハンター×ハンターの世界にトリップした時も最初は思い出せなかったのだ。


そして俺達が11歳になった時の事。

最近俺達は修練場に篭るようになったヒナタと共に修行している。

「やあ!はあ!」

一生懸命丸太に向かい柔拳の訓練をしているヒナタ。

どうやらナルトの諦めない姿勢に感化されてヒナタ自身も自分を見つめ直し、もう一度頑張ってみる事にしたらしい。

しかし当主に師事するのは気が引けるのか、こうして一人丸太に向っている。

俺達は護衛の意味も含めて側でクナイの投擲練習などをしている。

と言ってもそれだけでは芸がないので纏と練の訓練をやりつつなのだが。

地道に纏と練の修行をしてきた成果は着実に現れ、最近では『堅』の維持時間が6時間を越える勢いだ。

纏に至っては意識しなくても常時展開中だ。

これだけで命の危険がだいぶ減る。

それにオーラの絶対量がかなり増えてきた。

まじめに修行したかいがあると言うもの。

…というか他にする事が無かったってこともあるんだけどね。

まあ、この世界にも漫画や小説なんかはあるからそれなりに読んではいるんだけど、やはり厳格な日向家に居候している身としてはそんなに大っぴらに出来ない趣味だ。

そんなこんなで今日も『堅』の維持をしつつクナイの練習をしていた所、ヒナタから声が掛かった。

「ねえ、アオ。聞いてもいいかな?」

「何?」

俺は丸太に向かいクナイを投げながら答えた。

「あの…その、ね」

「うん」

俺はヒナタに向き直るが視線はわずかに外しながらあいづちを打つ。

ヒナタと話すのは根気がいる。

引っ込みじあんなヒナタに対して、いかに聞き入れる体制を作るかがポイントだ。

「アオ達がいつもやっているチャクラを外側に放出して留める方法を教えて欲しいんだけど…」

なるほど、そうきたか。

ばれないと思って『流』を使った組み手をソラとしていたのだけど、白眼を開眼したヒナタには見えていたのか。

「ダメ…かな?」

ヒナタの精一杯の勇気。

うーん。

実は数年前、丁度俺が当主にボコボコにやられた日からしばらく経ったある日、当主に呼び出されてお願いされていたのだ。

「ヒナタが自分で君達が使うチャクラを外側で操る技術を習いたいと言って来たらその技術を教えてやってはくれないか?勿論忍術は門外秘だということも承知の上でのお願いなのだが」

「それは構いませんが、宜しいので?」

柔拳以外の事を教えてしまっても良いのかと聞き返した。

「ああ、我ら日向の柔拳は、チャクラを放出する技術に長けていると自負している。しかし君の操るチャクラ技術は私達の数倍上を行く」

そりゃね。

体内で練ったチャクラを掌から放出している柔拳と、細胞から一気に外側に放出し、回転を加える事により絶対防御とかす八卦掌回天。

どちらもチャクラを体外に放出する技術の応用だ。

しかし念はそもそも外側に放出したオーラ=チャクラをその身に纏わせ操る技術。

外に放出するという点では似ているかもしれない。

それに俺達を拾ってくれた恩もある。

「お願いしてもいいだろうか」

まあ、この技術をヒナタに習得させ、この先日向本家に口伝で伝えさせようと言う意図もあるかも知れないが…

「かしこまりまして」

そういって俺は当主の申し入れを受け入れたんだ。

まあ、ヒナタが自発的に習得を申し出るのが条件だったのだが。

「おねがい」

今目の前にはヒナタが俺に念を教えてくれと頭を下げている。

俺はソラに視線を送る。

コクリとソラも頷いた。

「わかったよ。でも最初に言っておくけど、これは忍術じゃないから」

「う…うん?」

俺は忍術におけるチャクラと念におけるオーラの説明をする。

「えっと…つまり、生命エネルギーを体内で循環させて、内側に練り上げるのがチャクラで、外側に放出されたエネルギーを留めるのが念(オーラ)?」

「そう」

「そうなんだ…それで先ずはどうしたら良いの?」

「そうだね。先ずはチャクラ=オーラを外側に向けて放出する訓練から。柔拳の修行でチャクラの放出の感覚は出来てると思うけど、それを掌からだけじゃなく、全身から外側へ放つ感じで」

「う、うん」

自然体で立ち、ヒナタはチャクラを外側に放出しようと集中する。



数分後。

「はぁ、はぁ、出来ないよ」

「内側に練る事は出来ているんだ。後はコツさえ掴めば直ぐさ」

「はい」

そしてヒナタはもう一度集中する。

その表情は真剣そのものだ。


それから一週間後。

「で、出来ました!」

「おお、頑張ったな」

「うん」

嬉しそうに返事をするヒナタ。

この1週間で『纏』をヒナタはマスターしていた。

俺達のように、何か他の原因で精孔が開いたケースとは違い、自力で精孔をこじ開けたにしては驚くべきスピードだ。

次に『絶』

これは腐っても忍かどうか解らないが、割と直ぐに習得した。

そして『練』

これは結構辛そうだ。

「まず体内にエネルギーを溜めるイメージ。細胞の一つ一つからパワーを集め、それを一気に外へ」

俺は『練』をヒナタにやって見せた。

「ま、こんな感じ」

「凄い…」

「通常より遥かに多いオーラを生み出す技術だからね」

「細胞からエネルギーを集めて、一気に外へ!」

瞬間大量のオーラをヒナタの身を包んだ。

「できたな」

「はい」

「喜んでいるところ悪いが…」

俺が注意しようとしたところ。

「あ、あれ?」

足元がふらつきながら、体重を支えきれなくなって尻餅をつくヒナタ。

「通常より多いオーラを生み出すと言う事は、通常よりも疲労すると言う事。まあ、これも慣れだね」

「慣れですか?」

「そ、慣れれば『練』を何時間か持続させる事も可能」

まあ、それは『堅』だけどね。

いまは教えなくていいか。

先ずは四大行から。

「まあ、しばらくは 纏 絶 それに加え 練 の修行だね」

「は、はい!」

勢い良く返事をして練の修行に入るヒナタ。


「ヒナタなんか変わったね」

ソラがヒナタに聞こえないようにこっそり話しかけてきた。

「うん?」

「昔はあんなひたむきさは感じなかった」

「そうだね」

「それに当主は妹のハナビ様に劣るとおっしゃっているけど、念の習得スピードは凄く早い」

「潜在能力は有ったのだろうよ、ただその性格で成長を妨げていただけで」

「そっか、そうだね」


一ヶ月もすると纏 絶 練 は完璧にマスターしたようだ。

やはり成長速度が速い。

「それじゃ今日は発の訓練。これができれば四大行は総て終りだ」

「はい」

グラスに水を注ぎ木の葉を浮かべる。

それをヒナタに差し出す。

「まずこいつを両手で挟んで練をする。そして起きる変化でヒナタの系統を調べる」

「系統?」

「念は大きく分けて6系統に分類される。強化系、変化系、具現化系、操作系、放出系、そして特質系の6系統」

「それで?」

「今からやる水見式と言われる方法で、自分の系統が解るというわけだ。水が増えたら強化系、水の色が変わったら放出系と言った感じで」

「なるほど」

納得の表情のヒナタ。

「それじゃやってみて。まあ、恐らく放出系だろうとは思うけれど」

「なぜ?」

「日向の柔拳の基本は掌からのチャクラ放出だろ?」

「そういえば」

なんて話をしつつ、準備を整えたヒナタはグラスを両手で挟み込むように構え練をする。

「あ、あれ?変化しない?何で?」

その光景にショックを隠しきれないヒナタ。

「あ、あれ?なんでだ?」

するとソラからの助けの声が。

「水を舐めてみて」

「え、うん」

言われたとおり指の先で水を一滴からませて舐めてみるヒナタ。

「甘い…かな」

「水の味が変わるのは変化系」

「そうか、そうだったな」

ヒナタは変化系か。

「変化系ってどんな系統?」

「オーラを色々な物に変化させる事が得意って事だな」

「火遁や水遁みたいな?」

「そうとも限らないだろう。念は忍術と違って割りと訳の分からないところがあるからな。ソラの念能力なんて本だよ本」

「本?」

ヒナタはソラの方を向き問いかけた。

「これ」

するとソラは自身の念能力を発動する。

「それが」

「『欲張りな知識の蔵(アンリミテッド・ディクショナリー)』戦闘能力は皆無だがその口に書物を食わせる事でその知識を溜め込む魔本だな」

俺は簡単にヒナタに説明してやる。

「それってどの系統の能力なの?」

「ああ、俺とソラは特質系。こればっかりは他の系統以上に訳がわからない系統らしいから参考にはならないかもな」

「そうなんだ」

「まあ、今日からは纏、絶、練に加えてこの発の修行。その変化が顕著になるまで頑張れ」

「はい!」


四大行が終わったら次は応用技だ。

だがその前に。

「今日から応用技の訓練になるわけだがその前に忍術を1つ覚えて欲しいんだけど」

「忍術?」

キョトンとするヒナタ。

「そ、印はこう」

そう言って俺はゆっくりヒナタの前で印を組む。

「影分身の術」

ボワンと現れるのは俺の分身。

「影分身?」

「一応禁術なんだけど、凄く便利だから」

主に経験値稼ぎとかね。

ヒナタは印を組み、影分身を発動させようとする。

「影分身の術」

ボワンと煙が出たが、そこに分身は居ない。

「失敗…」

「応用編はこれを覚えてからだから頑張って」

「うん、頑張る」

そしてまた印を組み影分身の訓練。

まあ、数日もすれば2,3体なら創れるようになるだろ。


影分身を覚えてからの念の修行はその習得速度を上げた。

『堅』と『円』だけは未だに辛そうにしているが、その他の応用技に至っては及第点といってもいい。

まあ、白眼の使えるヒナタに凝や円は必要ないのかもしれないが…

更に半年の間にヒナタは自分の念能力を作り上げてしまっていた。

『総てを包み込む不思議な風船(バブルバルーン)』

・ゴム風船とシャボン玉のような性質を併せ持つ。

・ゴム風船のような変質したオーラで触れた物を弾くことが出来る。

・弾くだけではなくて、触れた物をその中に閉じ込める事が出来る。

・閉じ込めた物を外に出すのはヒナタの意思に任せられる。

・泡のように複数浮かばせてトラップとしての使用も可能。

『快適空間(ジャグジー)』
・オーラをシャボン玉状にしてそのシャボン玉のに包まれる事によって治癒能力が促進される。
・極度の疲労もその中でゆっくり休めばたちどころに回復する。

と、応用次第で幾らでもその可能性が増えていく念能力だ。


そして今俺とヒナタで摸擬戦中。

俺はヒナタに向かってクナイを投擲する。

「はぁっ」

「バブルバルーン」

しかしヒナタは自分を中心に念で出来た風船の膜を展開する。

すると投擲されたクナイはオーラの膜に触れた瞬間取り込まれ、隔離される。

「火遁・炎弾の術」

俺は口から幾つ物炎の玉をヒナタに向って放射する。

「はっ」

今度は幾つかの風船を俺の炎弾の軌道上に出現される。

するとその風船に取り込まれる炎弾。

俺はヒナタとの間合いを詰めるとその拳で攻撃する。

ぐにゃ

しかし展開されている風船の膜にその拳をそらされてヒナタにその拳は当たらない。

しかもその風船はヒナタのオーラで出来ているので、瞬間的にその身1ミリまで戻し、すかさず日向お得意の柔拳が俺に襲い掛かる。

しばらくヒナタと戦い、俺は戦闘態勢を解く。

「やっぱダメだわ」

「はい?」

キョトンとした顔で聞き返すヒナタ。

「いや、忍術や体術ではヒナタを傷つけることが困難だと」

「そ、そんな事ないよ」

いや、実際効いてないし。

あの風船の膜を突破するには相応の威力の攻撃が必要だ。

もしくは同じ念によって威力を上げだ攻撃。

今回は使わなかったが『流』や『硬』による攻撃ならその防御を破る事は可能だろう。

「いや実際この能力は半端なく厄介、取り込まれた火遁なんかの忍術は解かれた瞬間その場で爆発して即席の機雷になってしまうしな」


そう言えば、写輪眼についてもヒナタには打ち明けてある。

流石に黙っている事ができなかったからだ。

だって凝をするとどうしても写輪眼が発動してしまうのだもの…


「アオ、ヒナタ。お疲れ、はいタオル」

「おう」
「ありがとうソラ」

そういってタオルを持ってきてくれたソラに礼を述べる。

「今日で3人で修行するのもお終いかな」

「え?」

俺の呟きに驚きの声を上げるヒナタ。

「だって明日はアカデミーの卒業試験だろ?無事卒業できれば小隊を組まされ、その後は小隊を基本として行動するだろうから時間も取れないよ」

「そっか…そうだね。でもこの3人で組まれるといいね」

「…そうだな」

ヒナタの言葉にそう返しはしたものの、原作通りならそれは無いだろうとその時の俺は思っていた。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧