恋姫†袁紹♂伝
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第3話
剣の腕も上達し歳が10になった袁紹は―――
「フハハハハハ、付いて来い目的地はすぐそこである!」
「ほら斗詩、はやくこいよー」
「もう、二人とも速すぎますよー」
少女二人を連れて全速力で庭を駆けていた。 ………遊びでは無い
ことの始まりは時を少しさかのぼる―――
………
……
…
父上に呼ばれ、謁見の間に足を運ぶと中には父上と少女が二人側に控えていた。この二人は 今日から袁紹に側近として仕えるという、可愛らしい少女の口から出た二人の『顔良』と 『文醜』という名には驚いたものの、伯母上の件もあり、ある程度予想していたため特に慌てたりすることなく受け入れられた。
そして容姿を含め彼女等を 気に入った袁紹は(中の娘も気に入ったようである)その場で 真名を交換しあい主従として親睦を深めようと庭を散策しながら話をすることになった時。
『ところで二人は帯刀しているが、やはり得物は剣か?』
話しのとっかかりとしてまず側近兼護衛でもある二人の得物を確認しようとしたのだが―――
『はい、私は小回りの利く『いやーそれが聞いてくれよー麗覇さまー』ちょ、ちょっと文ちゃん!?』
斗詩(とし)の言葉をさえぎる形で猪々子(いいしぇ)が語りかけて来た。その顔はどこかうかない感じである。
話しの流れから自分の得物に対して何か悩みがあるのだろうと察した袁紹は―――
『かまわぬ、聞かせよ』
と、慌てる斗詩をなだめつつ続きをうながした『さっすが麗覇さま』と笑顔で口にしたあと また表情を少し暗くし
『いやー実はアタイにしっくりくる武器が無くて悩んでいるんですよー、とわいえ丸腰で護衛は出来ないからこうして一応帯刀してるんすよねー』
『フム…』
『ぶ、文ちゃん!!』
歯に衣着せぬ猪々子の物言いに斗詩が慌てて諌めている姿を見ながら――(肝心の猪々子は『え?アタイなんかまずい事言ったか?』と首をかしげているが)――思案した
(手になじむ武器が無いのは大きい、実際に我も槍や矛では実力の半分も出し切れぬ――― いまは護衛とはいえいずれ戦場で兵を率いる将になるのだからこの問題は無視できぬ…ならば!)
少し思案にくれ考えをまとめ終わると、尚も諌める斗詩の姿とそんな彼女に対し、頭の後ろで手を組み、唇を突き出してあさっての方向を見つつ『へいへーい』と気の無い返事をする 猪々子の姿が映った。
袁紹はそんな二人の姿に苦笑しつつ…
『では我が側近になった記念として二人に武器を授けようぞ!』
と提案した
『『え!?』』
これには二人も驚いたのか容姿は違うがまるで双子のような同じ挙動で口を開け呆けていた …フム、可愛らしい
『い、いいんですか?麗覇様』
『うむ!自分の得意な得物は早々に手にした方が良い、それに袁家の武器庫には色んな種類の武器が沢山あるのでな』
『やったぁ、さっすが麗覇様そこに痺れる憧れるー!!』
『そうであろう、そうであろうフハハハハハ! さあそうと決まれば膳は急げだ、二人とも 付いてまいれっ!』
『りょーかいっ!』
『わわわ、待ってくださいよー 文ちゃーん麗覇様ー!!』
そして冒頭に戻る
………
……
…
「ここだ」
重々しい武器庫の扉を開き二人を連れて中に入る
「「うわぁ…」」
中には袁家が代々にわたって集めてきた武器の山、 見た目重視な宝剣から無骨ながらも刃が鋭い光を放っている剣など 実用的なものから観賞用にいたるまで用途は違えど全て一級品である。
「なぁなぁ麗覇様、この中から武器もらえるん…ですかぁ?」
「フハハ、慣れぬなら無理して敬語で喋らずとも良い。うむ、好きなのを選ぶといい」
「えっ!?私達が選んでいいんですか?」
袁紹の言葉を聞いて「やったぁっ」と武器の山を見に行く猪々子に対し、斗詩はやはりどこか申し訳なさそうだ。
「うむ、自分で使う得物なのだから好きに選べ ここに眠らせ続けるのも勿体無い故な!」
そこまで聞くと遠慮しがちな斗詩も「ありがとうございます」と頭を下げ猪々子に続いて武器を吟味していく
………
……
…
「よーし、アタイはこれに決めた!!」
しばらくすると数百はあるであろう武器の中から大きな剣と槌を手にした猪々子が戻ってきた
「?二つあるが…」
「ああ、こっちの槌は斗詩のね」
「ええっ、ちょっと文ちゃん!?」
どちらかというと細身な剣を吟味していた斗詩に猪々子が渡そうとしたのは、とても女子には持てそうにないような大槌、ちなみに理由を聞くと「だってアタイが選んだ武器の次にこれが強そうじゃーん」と実に彼女らしい理由だった。
「む、無理だよ文ちゃん私、文ちゃんみたいに力持ちじゃないもん」
「ったく斗詩はー、麗覇様の前だからって清楚ぶっちゃって…ホレッ!!」
「えっ、きゃあ!?」
遠慮する斗詩にあろうことか大槌を放って投げる―――。これには流石に危険だと思ったが、
「もう、危ないじゃないっ!」
と可愛らしく頬をふくらませて憤慨しつつも斗詩はしっかり両手で大槌を受け取ってみせた。
これにはさすがの袁紹も顔を引きつらせてしまった。大人しい故に忘れがちだが彼女もまた英傑なのだ
「なぁ麗覇様この武器なんて名前なんだ?」
「フム…、猪々子のが大剣『斬山刀』斗詩のは大槌『金光鉄槌』だな、二つとも袁家に忠を誓い生涯を全うした将軍の得物だ。彼ら亡き後は重すぎて使い手が現れずここに保管されていたがな…」
「おおっ!、ならアタイ等にぴったりじゃんか、なっ斗詩!!」
「もう、文ちゃんは…しょうがないなぁ…」
そっけない言葉とは裏腹に斗詩も満更ではない感じで笑っている。小回りの利く得物では無いのだが問題無さそうだ。
「それにしてもこれだけの武器がある中でその名前が出てくるなんて…、さすがです!」
「う、うむこの袁本初にかかればこのくらいは造作も無い!」
「うぉー、麗覇様かっけぇ!最初会った時はアタイと同類だと思ってたよー」
「ぶっ、文ちゃん!!」
「そうであろう、そうであろうフハハハハハ!」
実は二人の武器の名と詳細を言えたのにはからくりがあった。 武の鍛練を始めた頃から袁紹はたびたびこの武器庫の中で数々の武器を鑑賞しており、その中でも一際目立つ二つの武器が気になり、目録を通して名前と詳細を知っていただけであったが―――
あまりに瞳を輝かしながら尊敬の眼差しを向けてくる猪々子に対し(斗詩は何故か慌てていた)いまさら本当のことが言えず。誤魔化すように高笑いするのだった…
こうして二人にとってその日は、生涯仕えることになる主と愛用する得物の両方を得た忘れられない日となり、以来三人でその日を記念日と称し祝い続けることとなる―――。
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