創られたもの
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3部分:第三章
第三章
「違うわね」
「そうだよね」
「じゃあ今言ったのは」
「誰なんだろう」
「ううん、まずいなあ」
ここでまた声がした。
「まさかパパとママが出て来るなんてね」
「パパにママ?」
「僕達のことかな」
ここでまた首を傾げさせる夫婦だった。
「ひょっとして」
「これって」
「けれど子供達は」
「まだ寝てるし」
二人にも子供達がいる。男女の双子の兄妹である。
しかしその子供達はというとである。
「赤ちゃんだし」
「とても言葉なんて」
出すような歳ではなかった。産まれてまだ一年である。赤ん坊そのものである。それ以外の何でもない。ましてや今の言葉なぞとてもであった。
二人はこのことも思い出してだ。そうしてだった。
「あれっ、じゃあやっぱり」
「今の言葉は子供達じゃない」
これは言うまでもなかった。少しだけ考えれみればだ。
しかしだ。それでもだった。
それが誰かだ。それが大きな問題だった。
「ええと、じゃあ今の言葉は」
「誰なのかな」
「パパとママって呼んだけれど」
「それも僕達も」
「ううん、どう言えばいいのかな」
「そうだよね」
今度の言葉は一つではなかった。複数だった。
「まさかここで会うなんてね」
「思いも寄らなかったし」
「どうかな」
「これって」
「今度は言葉が幾つも聞こえてきたけれど」
妻はまたしても首を傾げさせた。
「何なのかしら」
「とりあえずだけれど」
夫はだ。現実を話に出してきた。
「灯りを点けようか」
「そうね。それじゃあ」
馬も夫の言葉に頷いてだ。灯りを点けた。するとだ。
そこにいたのはだ。幽霊達だった。あの二人が共同で創り出して童話に出しているあの幽霊達がだ。部屋の真ん中に揃っていた。
そしてそのうえでだ。夫婦に対して言うのであった。
「ええと、僕達ね」
「こうしてね。出て来たんだ、こっちの世界に」
「そうだったんだよ」
「嘘だろ、それって」
夫がまずそれを否定した。
「何でそうなるんだよ」
「そうよ。貴方達はあくまで童話の登場人物なのに」
妻も眉を顰めさせて話す。
「それで何で出て来たのよ」
「だから。僕達はパパとママに創り出されてね」
最初に創り出されたその幽霊が話す。
「意志を持ったんだよ」
「意志?」
「意志って」
「そう、意志を持ってね」
そうなったと。二人に話すのである。
「それでこっちの世界にもね」
「出て来れるようになったの?」
妻のいぶかしむ言葉であった。彼等に言わせればママのだ。
「つまりは」
「そうなんだ」
「パパとママの前だけだけれど」
「創り出した人達の前にね」
出て来れるようになったというのである。
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