創られたもの
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2部分:第二章
第二章
そのグッズを一つ一ついとおしげに見ながら話すのであった。その内容は。
「この子、人気者になれてよかったわね」
「全くだな。今は一人じゃないしな」
「そうね。お兄さんもお姉さんもできてね」
「両親もできたし友達もできた」
こうしたキャラクターの常で愛されるとどんどんそうした相手も出て来る。この幽霊にしてもだ。このことは同じであったのである。
「いいことだよな」
「本当にね。お金よりもね」
「そっちの方がずっとな」
いいという二人だった。
そして周りを見てだ。自分が創り出したそのキャラに言うのだった。
「じゃあな。これからもな」
「愛されてね、皆に」
こうしてその幽霊と他の面々に愛情を注ぐのだった。しかしだった。
暫くしてだ。こんな話が巷で囁かれるようになった。
「あれっ、遊園地で?」
「着ぐるみじゃなくて?」
「本物?」
「本物が出たの?」
幽霊達についてこんな話がされるようになっていた。
「まさか。そんなことが」
「ある訳ないよ」
「だって。幽霊は幽霊だけれどさ」
皆それでもだと話す。
「あれってキャラクターだし」
「そんなの出る筈がね」
「そうそう、ないって」
「絶対にね」
しかしだった。幽霊達が実際にいるという都市伝説が出てしまった。これが本当のことなのかはたまた見間違いやそうした類なのかはわからない。しかしであった。
このことは夫婦の耳にも当然入った。それでいぶかしみながら言うのであった。
「何か変なことになったよな」
「そうね」
妻は夫の言葉に首を捻りながら返した。
「あの子が実際にいるなんて」
「それは幾ら何でもね」
「ないわよ」
妻は笑ってその可能性を否定した。
「絶対にね」
「何か家族もいるけれどね」
「それでもね。そんなことはね」
「有り得ないさ。確かにあの子達は僕達の子供さ」
自分達が創り出したという意味での言葉である。
「けれどそれでも」
「現実世界のことじゃないから」
「どうしてそんな話が出たんだろうね」
「都市伝説ってわからないものよ」
ここでこう言う妻だった。
「それってね」
「わからないものなんだ」
「そうよ、こういうものはね」
そうだというのである。
「ほら、人面犬とかああいうのも」
「実際に見た人はいないしね」
「それに。この子達」
相変わらず周りに溢れている幽霊達のグッズを見る。どれもコミカルで愛らしい表情のままでだ。二人を囲んでいるのであった。
「そこでも悪いことしていないし」
「ただ出ているだけだしね」
「だから。気にすることはね」
「ないっていうんだね」
「ええ、そう思うわ」
こう話をしていたある日のことだった。そしてである。
次の日の朝仕事に向かおうとした。それで家の中の仕事場に入った。
しかし部屋に入るとだ。彼がいたのだった。
「あっ、しまった」
「しまったって」
「えっ、今のって」
「あなたが言った?」
「君が言った?」
お互いに言い合う。
「まさかと思うけれど」
「違うの?」
この言い合いでだ。お互いわかってしまった。
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