真の贅沢
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第四章
「昔から」
「それでは」
「はい、是非先生に美味なものを味わって頂きたいと思い」
「こうして呼んで下さったのですね」
「左様です」
まさにその通りだというのだ。
「そうなのです」
「そうですか、それでは」
「これよりです」
「宴をはじめるのですね」
「どうぞ」
その宴の場にというのだ。
「入られて下さい」
「ではお言葉に甘えまして」
「それでは」
「では皆さん」
住職が祝田の他の檀家の者達に声をかけた。
「これより」
「はい、はじめましょう」
「皆で」
これが檀家の者達の返事だった。
「そして、です」
「今日も楽しくやりましょう」
「はい、それでは」
こうしてだった、薬師寺もその中に入ってだった。その宴がはじまった。その宴に出ている料理はというと。
「鶏の唐揚げ、ハンバーグ、ゆで卵、えだ豆、筑前煮、冷奴ですか」
「はい」
「あとは魚のあらを煮たものですね」
「質素ですね」
こう薬師寺に言うのだった。
「どれも」
「それは」
「ごく普通の料理です」
その全てがというのだ。
「ゆで卵にしてもハンバーグにしても」
「はい、しかし」
「しかしとは」
「どれも美味しそうですね」
ここでだ、薬師寺は祝田にこう言ったのだった。
「先生は質素だと言われますが」
「美味しそうだと」
「はい、見ているだけで」
「どれも家内が作ったものです」
住職は笑顔でだ、その薬師寺に話した。
「本当に質素なものです」
「わし等のお供えだよ」
「あとお布施で買ったものもあるかな」
車座になっている男達も言ってきた。
「住職さんにはいつもお世話になってるからね」
「お供えやお布施にって思ってね」
「それをこうして料理してくれてな」
「わし等にご馳走してくれてるんだよ」
「お礼にはお礼で返さないと」
住職は優しい、それも極めてそうである笑顔で言うのだった。
「そう思っていまして」
「私もです」
祝田はまた薬師寺に言ってきた。
「お供え、お布施をさせてもらっています」
「住職さんに」
「はい、ですから」
「それで今回ですか」
「こうして皆さんと共にご馳走になるのです」
住職の奥さんが作ったその料理をというのだ。
「料亭や高級レストランの料理ではありませんが」
「この料理がですね」
「絶品です。これから如何でしょうか」
「先程の言葉ですが」
薬師寺は自分自身の言葉から祝田に答えた。
「美味しそうですね」
「それではですね」
「僕も宜しければ」
「はい、是非」
祝田はその彼を笑顔で迎え入れた、そしてだった。
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