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剣を捨てて

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第四章

「紳士だし非常に心優しくもある」
「どの者にも公平でな」
「領地でも学校を建てて平民達の子供達にも教育を受けさせているという」
「若いがかなりの出来物だ」
「あれだけの方はそうはおられない」
「そうか、卿達から見てもか」
 ライズは同僚達の話を聞いてこう述べた。
「立派な方か」
「最近卿はあの方と時折話をしているが」
「友人になったのか」
「そうなのか」
「そうなるだろうか」
 友人なのかと問われてだ、ライズはこう返した。
「言うならば」
「いい友人になると思うな、子爵は」
「あの御仁とはな」
 そうだというのだ、同僚達も。
「卿はいい友人を得た」
「このことは間違いない」
「しかしだ」
「それでもな」
 ここでだ、、同僚達はこうも言った。
「卿もそろそろな」
「我々もそうだが」
「身を固めるべきだが」
「そのことはどう思う」
「結婚か、そのことについては」
 ライズは真面目な顔で返す、その顔は軍人のそれだった。
「やがてはな」
「そうだ、軍人は家庭を持つことも務めだ」
「そして子を軍人にすることもな」
「そのことも務めだ」
「ましてや貴族ならばな」
 尚更というのだ、貴族は家でなるものでありその家を続けさせることは軍人として以上に絶対のことなのだ。
 それでだ、同僚達も言うのだ。
「だから卿もな」
「そろそろだ」
「身を固めるべきだ」
「伴侶を迎えてな」
「そのことはわかっている」 
 ライズもこう答えはした。
「既に兄上達は結婚されている、後は私だけだ」
「いい殿方を迎えるのだな」
「是非な」
「例えばだ」
 ここで同僚の一人はこう言った、彼は何でもない口調だがだ。
 ライズにだ、こう言ったのである。
「そのアイスブルグ子爵の様な」
「グレゴール殿か」
「あの方はいい方だ」
 伴侶としても、というのだ。
「温厚で真面目で気配りも出来る」
「人格者だからか」
「伴侶はやはり人柄だ」
 それが第一だというのだ。
「そのことから考えるとだ」
「あの方の様な御仁がいいか」
「その通りだ、とにかく結婚はすることだ」
 軍人として、それ以上に貴族としてというのだ。
「そのことはな」
「わかっている」
 ライズはこの時はこう答えただけだった、だが。
 その同僚の言葉を受けてだ、ライズはグレゴールを伴侶としてはどうなのかという考えも持つ様になった。その何気ない言葉から。
 そのうえで彼と会い話を続けた、そして。
 その彼にだ、ライズは仕事の後で宮廷の外のレストランで彼と共に夕食を摂っている時にだ、向かい側に座っている彼に問うた。 
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