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エターナルトラベラー

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第十四話

さらにしばらく時間が経ち、ついに建設中だったハンティング要素の濃い隠しクエストが完成した。

そう、俺が冗談で言ったモンハンの事である。

「じゃあ俺らはまだ他にやる事あるから、テストプレイよろしくな」

「え?」

「バグなんかはドゥーンに言ってくれ」

そう言うと俺とソラを孤島にある隠し村に置いてさっさと帰ってしまうジン。

「どうしようか?」

「うーん…やるしかないんだろうねぇ」

最近修行の成果が出てきたのか、少しずつ強くなっているのを実感しているから腕試しには丁度いいか。

一通り村の内部を確認したから俺たちはクエストが受注できるハンター専用の酒場に足を向けた。

「いらっしゃいませ」

出迎えてくれたのはギルドの受付嬢。

「はじめての方ですね?此方でギルド登録をお願いします」

登録の仕方は一度このゲームのセーブ媒体である指輪を受付嬢が持ってきた機械にかざすだけ。

それで登録完了。

登録完了した俺とソラはまず、ハンターランク1のクエストから依頼内容を確認。

先ずは様子見と、『生肉10個の納品』を選ぶ。

仲間を募集する場合、クエストを選ぶとクエストボードに張り出される。

クエストボードに張り出されたカードを受け取ると、そのクエストに同行できるようになる。

ソラがクエストボードから受注して、俺が待つ酒場の奥の転移方陣へと歩み来る。

「じゃ、しゅっぱーーーつ」

方陣が輝き俺たちは狩場へと転送された。

転送されたのはフィールド名『森と丘』

深々とした木々が生い茂る山野とこう配のある丘で形成されている。

転送されて来たこのフィールド。

この場所自体は念で作られた仮想世界のようなものらしい。

なぜ念空間にしたのかと言えば、一度に複数人がプレイできる環境を整える事を優先したからだ。

事前の説明でモンスターを倒し、その死体から支給された剥ぎ取り用ナイフで削りだすとその部位がカード化される仕様らしい。

今回の目当ては生肉。

俺達は『絶』を使用して気配を絶ち、前方に居る草食竜『アプトノス』へと近づく。

ソルを握り締めて、一気に距離を詰めて一閃。

アプトノスの斬られた傷口から大量の血液が飛び散る。

「え?」
「あ?」

その様子に俺もソラも動揺する。

俺の方は以前の経験から直ぐに立ち直る事が出来たが、ソラの方が微妙だ。

今までのこの世界のモンスターは血は流さず、倒すと直ぐにカード化されていた。

そこに来て今回の出来事。

アプトノスは血を噴出し倒れこんでいるものの絶命には至らず、懸命に起き上がり逃げ出そうとしている。

俺はソルを構えなおし連撃。完全にアプトノスの息の根を止める。

死んでいるのを確認してから俺は剥ぎ取り用ナイフを抜き放ち、その体に突き刺す。

切り取ると『生肉』のカードがその手に現れる。

それをバインダーにしまい、ソラの方へと急いで向かった。

「大丈夫?」

「…う…ん。大丈夫、平気」

そうは言うが少々顔色が悪いようだ。

トリステインに居た時も戦う事は多々あったけれど、こう言ったスプラッタな場面は今まで運良く見舞われてこなかったために耐性が無いのだろう。

とは言え、俺の時みたいに胃の中のものをリバースしないだけマシだ。

「少し休むか?」

「いい、大丈夫。アオ、次は私がやるね」

「大丈夫なのか?」

「うん。こういう事にも慣れないといけないから」

慣れていいものなのかどうか。

俺は考えてみたがその答えは出せそうに無かった。

ソラはルナを握ると改めて発見したアプトノスにその刃を振り下ろした。


生肉十個を手に入れるとベースキャンプに戻って納品。無事にクエストがクリアされると一分して俺達の体は酒場へと転送された。

今日のところはソラを気遣ってこれ以上のクエストを受注せず街にある宿屋へと赴いた。

フロントに案内されたのは馬小屋かと見まごうようなボロイ部屋、あちらこちらにホコリが降り積もり、ベッドのシーツもひどく汚れている。

フロントに抗議するも、ここでの待遇を上げるためにはハンターランクを上げろと言われた。

ランクと待遇が直結するらしい。

この馬小屋のような待遇は一番ランクの低いハンターのものだとか。

それゆえに無料で提供しているとのこと。

ランクが上がればそれに応じた部屋を案内する裸子。勿論お金は取られるが。

部屋の中にあるアイテムボックス。これはバインダー以外にアイテムを保管できる場所だ。

ここで手に入るアイテムは膨大でゆえに、一時保管場所として利用できる。

まあ、入るのはここのハンティングでゲットしたカードに限るみたいだが。それでも便利に活用できるだろう。

俺は無いよりはマシと言った感じのスプリングすらないベッド…寝台に寝転がっていると、俺の部屋のドアを開けてソラが中に入ってきた。

「アオ…一緒に寝ても良い?」

今日の出来事が衝撃的だったのか、部屋に入るなりそう俺に尋ねた。

「……今日だけだよ」

「…ありがとう」

その日以来、ソラは現場では取り乱す事は無くなった。

あくまで現場では…

帰ってきてその表情を曇らせるのを俺は知っている。



先ずは採取クエストでフィールドの地形を覚えつつ、クエストをこなしている。

採取クエストと言って侮る事無かれ。

『凝』で注意深く探さないと目当てのものが見つからないようになっているのだ。

そろそろ慣れてきたので、俺たちは狩猟クエストを受けてみる事にする。

クエスト内容は『ランポス10頭の狩猟』

クエストを受け、俺たちは森と丘に降り立った。

気配を消してフィールドを移動。

フィールドにある大きめの鳥のような足跡を追いかけるとそこには数匹の青色の鳥獣。ランポスだ。

茂みを移動して十分にランポスたちに近づくと纏でオーラを纏い振り上げたソルを振り下ろす。

先ずは一匹。

真っ二つにされて絶命するランポス。

しかし、俺はまだ一匹目だと言うのに倒した事に油断したようだ。

「アオ!危ない!」

反対側から距離を詰めていたために出遅れたソラが俺に叫んだ。

その声に気が付いて、俺はすばやく後ろを向くとそこには二匹目のランポスが大きく口を開いて噛み付いてきた。

やばい、やられると思った瞬間『流』を行使。噛み付かれた場所のダメージを減少させる。

「ぐうっ!」

噛み付かれた左腕。その攻撃のダメージをいくら流を使ったとは言っても0には出来なかった。

「つっ」

鈍い痛みが襲う。幸いにして身体の欠損は見当たらない。

今度は油断無く『円』を使用。前後左右、すべての方向からの攻撃に備える。

そう、ランポスは単体では其処まで脅威ではないかもしれないが、その真髄は集団戦。

一対多で戦う事の難しさをこのとき俺は始めて知ったのだった。

何とか見える限りのランポスを殲滅し、ソラと合流する。

ソラの方もどうやらランポスをしとめ終えたようだ。

「大丈夫?」

俺の左手を心配そうに見つめている。

「大丈夫だ。咄嗟に流で防御力を上げたから」

「そっか」

「しかし、これで勉強になった。目の前の一体だけを気に掛けていて、その他をおろそかにしてはだめだって事だね」

その後何度かランポスやその亜種のイーオスの狩猟クエストを受注。イーオスの麻痺毒にはてこずったが、対多数戦の初歩と言うべきそれを何とか物にする事ができた。



さて、モンハンと言ったら素材を集めての武器防具の生産と強化。

これもここではかなり忠実に再現されている。

なので、集めた素材で簡易防具を作成した。

俺はゲネポスの素材を使った上下一式。

ソラはランポスで統一されている。



狩猟クエストにも慣れてきた俺たちはついに飛竜の討伐を依頼されるまでになった。

とは言っても皆知ってるクック先生だけど。

怪鳥イャンクック大きな襟巻き状の大きな耳が特徴のピンク色の体色をした小型のワイバーンだ。

小型とは言ってもその全長は8メートルはくだらない。

俺は自分の所持アイテムを確認する。

薬草と回復薬が数個、後は剥ぎ取り用ナイフ。

この世界の薬草などを代表する回復アイテムは、一体どういった原理が働いているのかこのフィールド内で傷ついた傷を効果に見合った分だけ回復してくれる。

防具を揃えられれば切断系の攻撃に耐性が出来るから、実際は打ち身や軽い切り傷を治す程度だが。

息を潜めつつ、フィールドを索敵する。

バサッバサッバサッ

羽が風を掴む音が聞こえてくる。

「あそこ!」

ソラの声に視線を向けるとそこには空から今まさに地上へと降り立った怪鳥の姿が。

どうやら食事のようで、巨大な昆虫(カンタロス)をその嘴で掴み一気に丸呑み。

「うぇ…」

その光景に少し気分が悪くなる。

しかし、気を取り直してソルを構える。

「先ずは翼をつぶして機動力を殺ぐ。ソラ、バインドお願いできる?」

「任せて!ルナ」

『リングバインド』

いきなり空間に現れた束縛の魔法がイャンクックに絡みつく。

クァーーーーッ

大声を上げてもがき、ソラの束縛から抜け出そうと暴れる。

「そんなに保たないから!」

「分かってる!ソル、行くよ!」

『サイズフォーム』

そるに纏わせたブレードが先端から伸びて鎌の形に変形する。

俺は念で四肢を強化して、大地を蹴った。

狙うのはその翼。

「はぁっ!」

気合一閃。イャンクックの翼膜を切り裂いた。

グルァーーーーっ

悲鳴のような泣き声をあげたかと思うと、力の限り暴れだし、ソラのバインドを振りほどこうともがく。

「アオ!持たない!」

その言葉をきっかけに、バインドが振りほどかれて自由になるイャンクック。

クルァーーー

羽を切り裂いて着地した俺は今、丁度イャンクックの足元あたりに方膝を着いて着地している。

それを俺の頭上から怒りに任せてその大きな嘴で突付く。

「うおっ!」

何とか攻撃を食らう寸前で前方に転げ周り、その攻撃をかわす。

すると、何かを体内から吐き出すようなモーション。

ゴオッ

突き出された嘴、その中から吐き出された炎弾。

「なっ!」

吐き出された炎弾は放物線を描き、俺目掛けて飛んでくる。

『ディフェンサー』

ソルが寸前でシールドを展開、防御する。

クルアアアアっ

突進してくるイャンクック。

俺は直ぐにその突進を避けようとするが、それよりも早くソラからの援護が入る。

『フォトンランサー』

「ファイヤ!」

ズドドドドーーーン

着弾と同時に悲鳴を上げて悶絶する。

俺は動きが止まったその隙にイャンクックから距離を取る。

予想以上に俺たちが強敵だったのか、その身を翻して空へと飛んで逃げようとその翼をはためかせる。

しかし、最初の俺の攻撃で切り裂かれた翼膜ではうまく風を捕まえられない。

俺はその隙を見逃さずに魔法を発動する。

『サンダースマッシャー』

「サンダーーーースマッシャーーーーーーーっ!」

ソルの刃先から放たれる雷の凶光。その光は真っ直ぐとイャンクックに走り着弾。

クルアアアアアッ

イャンクックは絶叫の後、絶命して倒れこんだ。

「はぁ、はぁ、はぁ」

「やったの?」

「ああ、倒したんだ」


その後何回かクック先生を繰り返す。

何回も繰り返していると、モンスターの癖や弱点などが見えてくる。

『凝』でよく相手を見てみると、オーラの濃いところと薄いところが見て取れる。

薄いところを攻撃すると、割と簡単にダメージを与えられる。

つまりはそう言う訓練。

相手の攻撃のパターンを読み、オーラの薄い弱点へ攻撃する。

それが完璧とは言わないまでも、何とか板についてきてから俺たちは大地の女王リオレイア狩猟のクエストを受注した。


装備はそれぞれクック装備に変わっている。

クエストを受注してフィールドに降り立って数日。

俺たちは発見したリオレイアに攻撃は仕掛けずに、ずっと絶をしたまま相手を観察する。

フィールドの回遊パターン、獲物を取るときの攻撃方法。

注意すべきはその尻尾に含まれる毒攻撃。

一応毒消しは持ってきているけれど、一歩間違えば命が無い。

綿密に調べた結果、リオレイアの巣で待ち構える事にする。

作戦は罠を仕掛け、リオレイアを待ち、トラップに引っかかり、拘束されている間に一番危険な尻尾を切断してしまう。

後は攻撃を避けつつ翼膜を切断できれば空を飛べるこちらが有利。

作戦が決まると痺れ罠を仕掛けてリオレイアが来るのを待ち決戦を挑んだ。



さて、作戦がうまくいったため、比較的軽傷で戦闘を終える事が出来た。

俺はいま切断したリオレイアの尻尾に剥ぎ取りようナイフを構えて差し込んだ。

「お?逆鱗だ」

「逆鱗?」

「これはラッキー。前世では何度これのためにリタマラしたことか…」

「うん?」

その後のタイトルでは確率の大幅の上昇やサブクエストなどで割りと簡単に手に入るようになったけれどね。

PSP版なぞ言わずもがな。

俺は無印版でドラゴンマサクゥルを所持していたつわものだ。

あの逆鱗雄雌五枚に泣いたのは俺だけではあるまい。

とと、話がそれた。

「カードランクを見てごらん。これはかなりのレアだよ」

「そうなんだ」


街に帰り、持ち帰ったリオレイアの素材で防具を一新。

レイア防具と言ったら先ずは腰から。全てを揃えるには素材は足りなかったが、先ずはソラに腰防具を作成した。

うむうむ。その他の防具はクックなのでかなり不恰好だが、それでもそのスカートは似合っている。

ゲットした逆鱗もソラの防具に使用して防御力を上げてリオレイアを狩ること数回。

ソラのリオレイア装備が完成する。

がちゃ、がちゃ

と、ゆれる金属音。これも一つの醍醐味だよね。

さて、今度は空の王者リオレウスの番。

こいつは空の王者と言われるだけ有って、その飛行能力は高い。

空中からの強襲で此方に大ダメージを与える厄介な相手だ。

しかし、空を飛べるのは何も相手だけではない。

今回は俺たちも空を飛んでのドッグファイト。

しかし、なんだね…リオレウスの姿を見た瞬間、あの大火竜の姿がダブって見えてしまい、思い出されたマルクスへの怒りから全くの自重をせずに大威力魔法の連発でKOさせていたよ。

怒りの感情は時として大きな力を与えてくれるようだ。

俺たちの防具も着実に強化して行く。

俺はレウス装備からリオソウル装備、それからシルバーソルへ。

ソラはレイアからリオハート、そしてゴールドルナ。

ここに至って杖であるはずのソルとルナに念能力が発現した。

この防具、いわゆる具現化系能力の応用であるのだが、相手の攻撃に対して、その威力を削減してくれると言う効果がある…が、今特筆すべきは念能力である事。

そう、ソル達がこの具現化したシルバーソルとゴールドルナシリーズをそのオーラごと取り込んで再現してしまった。

ソルとルナの念能力。

その名も『バリアジャケット(愛する主人の最終防御)』

俺達からオーラを貰い具現化する。その防御能力やスキルは基にした防具に由来しする。

まさかの嬉しい誤算だった。

ここに来てようやくバリアジャケットの再現が出来た事に狂喜乱舞した。

シルバーソルとゴールドルナ、しかしその見た目はZシリーズのような装丁だ。

そう言えば俺とソラのドラゴン形態も銀と金。

まあ、ワイバーンでは無く俺達はドラゴンだけれども。

名前やら何やらでシンパシー的な何かが念能力の開花に結びついたのだろうか?

と言うか、念能力すら行使できる物を造ったドクターに脱帽。

その後、その能力で他の武器も再現できないかと四苦八苦。

しかし武器の再現は出来ない。これはソル達のアイデンティティーに関わるものだしね。

しかし、テスターとしては作らなければならず、そのたびにソル達の機嫌が下降する。

何とか機嫌を直してもらおうといつも四苦八苦だ。

さて、そんなこんなでHRも最高値、ようやくこのイベントもクリアした。

とは言え、最後の黒いトカゲの黒紅白の三段活用には少々てこずったけれど。

頼みの綱の雷魔法が余り効果が無かったからね。

どうにか倒して、全クエストクリア報酬のカード『モンスターハンター』をゲットしたときは涙が出てきたよ。


その後も指定カードのイベントをこなしつつ、念の修行をして、時がすぎる。

そんなこんなで指定カードをコンプリート。

最後の指定カードにまつわる問題100問等は、全部のイベントをクリアした俺たちには容易なものだ。

まあ、これは誰かが99個そのバインダーに納めたときプレイヤー全員に平等に参加できるクエストの様だったが、今は俺とソラしか居なかった。

支配者からの招待をゲットして、王城へ。

本来ならば一人のはずの招待に今回はソラも同行する。

城門が開き、中に入ると出迎えてくれたのドューンさんだった。

「おう、ようやく終わったか」

「ドューンさん?」

その姿を見止め、ソラが聞いた。

「おうよ。テストプレイ終了お疲れさん」

「あ、はい」

「テストプレイを終えたお前らにご褒美だ」

そう言ってドゥーンさんが投げ渡したのは一つの小箱。

開いてみると丁度カードが3枚分入れられるようだ。

「ここでのカードがここ以外では使えないようになっているのは聞いているな?それはよ、このゲームをクリアした奴へのご褒美だ。島の外でも指定カードの効果が使えるようになる。まあ、島の外への持ち出しには指定100種コンプリートさせると言うある種の制約が必要なんだが」

そう言えば主人公も島の外でカードを使っていたような。

何を持ち出せるようにするかが問題だ。

カードの中には因果律を歪める様な強力な物が多々あるしな。

リスキーダイスとか。

「まあ、今すぐに選べってわけじゃねぇ。取り合えずはこの後のエンディングを楽しんでこいや」


その後盛大に開かれたパレード。

一体どのくらいのオーラを使えばこれだけの人数の念獣を顕現できるのかとつい突っ込みを入れてしまうほどに多くのモブと共に盛大な一夜は過ぎていく。


その後数日して、今は主要アイテムの最終チェック中。

色々なアイテムを試し終わり、散らかしたアイテムを片付けようとしていた時に事故が起こった。

「ジン、こんな石なんてアイテムにあったっけ?」

そう言って俺がつかんだのは石の真ん中に何か文字のような物が彫られた手のひらサイズの石。

「あ、ああ、それか。それは俺がこの前遺跡調査に行ったときに持ち帰った物だ」

「いいのかよ勝手に持ち帰ったりして!」

「いいんじゃないか?その付近の先住民族の奴らが言うにはそれは生まれ変わりの宝玉と言うらしい。何でもそれを手にしたものは別人に生まれ変わるらしい」

「危険じゃないか!?」

「まあ、俺が触ったり持ち歩いたりしても何も起きなかったし、大丈夫だろう」

ジンのそんな言葉を聞きながら、右手でつかんでいたその石を左手に持ち替えたのがいけなかったんだ。

左に持ち替えた石が突如光り出す。

「へ?」

「え?」
「ああ?」
「何だ!?」

左手のガンダールヴ(偽)のルーンがドンドン輝き、それに伴ってその石から放たれる光もどんどん強くなる。

「手を離せ!」

ジンが大声で叫んだ。

俺も手を離そうと試みるが、俺の意思に反してその手は石を離してくれない。

「だ、ダメだ!」

その光が俺の体を包み込み、俺の体…というか存在が揺らいだ。

「ち、ちょっと強引に行くぜ!」

ジンがオーラを解き放ち俺の手をつかもうと近づく。

しかしそれよりも早く俺に抱きつく存在があった。

ソラである。

「ソラ!?」

ソラが光に包まれる俺の体をその身で抱きしめたかと思うと、ソラの体も光が包み込み、

そこで俺の意識は暗転した。 
 

 
後書き
H×H編は一旦終了。回収は後ほどになります。ひとまず次の世界へのクロスです。 
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