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万華鏡の連鎖

作者:fw187
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宇宙戦艦ヤマト異伝
  絶望の悪夢

 
前書き
BGM~フリー・ザ・ラブ(by『ダライアス2』オリジナル・サウンドトラック) 

 
 硬い鱗を纏う重火力機械魚介類と異なり、初見参の敵は透明な珠に封じられた超巨大魔胎児。
 原初なるもの《バイオ・ストロング》の嘲笑、悪意が精神を掻き乱す。

 瞬間物質移動装置の如く、数多の魔珠が実体化。
 無数の珠が更なる巨大化を遂げ、爬虫類を連想させる異形の魔胎児が視野を覆う。
 巨大魔胎児は悪夢の如く増殖、宇宙空間を埋め尽くし侵入者(インベーダー)に殺到。
 ヤマト艦載砲の総動員、全砲門解放射撃(オール・ウエポンズ・フリー)を呑み込むかと見えた。

 エネルギー奪取弾、波動爆雷を撒き散らし真田志郎特製の魔鏡も展開示。
 空間磁力メッキ発生装置は膨大な電力消費を伴うが、背に腹は変えられぬ。
 ドメル率いる戦闘班は衝撃波砲(ショック・カノン)15門、断続的破壊光線(パルス・レーザー)砲24門を駆使。
 的確に魔珠を貫くが、分身の増殖速度は遙か上を行く。

 球形レーダー担当サーシャ航法士、重力波スクリーン表示装置も混乱。
 スターシャ通信班長、タラン工作班長にも敵の弱点を見出す天啓は訪れない。
 永遠に続くかとも思える執拗な連続攻撃に曝され、絶望の2文字が皆の心を浸蝕。
 雲霞の如く湧き出る無限艦隊《タナトス》の映像が脳裏に甦り、巨大な胎児の嘲笑が響く。


「怯むな、ガミラスの勇者達!
 我々は女神の恩恵を受け、何物にも換え難い大切な事を学んだ筈だぞ!!
 最後の最後まで諦めず、希望を棄てず絶体絶命の窮地を覆した勇者達を見習え!
 偉大なる宇宙戦艦ヤマトに敗北の汚名、挫折の2文字を冠する事は断じて許さん!!

 ガミラス星人は如何なる強敵にも背を向けぬ勇者、大宇宙屈指の戦闘民族《ファイター》である!
 己の裡なる恐怖、不安に屈する者は我が軍に不要だ!!
 逃れる術は無い、肚を据えろ!
 ダライアスの人々を、絶滅の運命から解放せよ!!」

「波動エンジン、過負荷モードへ移行!
 出力、200パーセント!!
 短距離の遷移(ワープ)を繰り返しても、問題は無い《ノー・プロブレム》!
 ただし、この均衡は、保って、360秒です!!」

 真っ先に反応を見せたのは機関長代理、元冥王星前線基地司令官シュルツ。
 流石に『我等の前に勇者無く、我等の後に勇者無し』の至言を遺した漢だ。
 『戦って、死ねと伝えい』等と暴言を吐いた事が悔やまれる。
 機関室で奮闘する部下、ガンツ達が常識を無視した達人技を駆使している事も間違い無い。


「主砲と副砲を総て、第1次ビーム仕様に変更しました!
 千倍の効果を発揮しますが、一瞬で回路が焼き切れます!!
 過負荷に耐え得る砲身、砲員防護装置の交換用予備は皆無!
 射撃の機会(チャンス)は、1度きりです!!」

 元太陽系方面作戦司令長官、ヤマト戦闘班長代理ドメル将軍も呼応。
 私も副総統ヒス同様、絶大なる人気に嫉妬した者の一人。
 己の地位を脅かされる危惧を抱き、彼の足を引っ張った。
 七色星団に援軍を送れば、我が母星が滅ぶ事も無かったであろう。

 改めて、反省せねばなるまい。
 彼等の様に素晴らしい部下達を省みず、冷酷に切り捨てる驕慢な心の在り様が。
 栄光ある大ガミラスの滅亡を招いた、真の理由であった事を。


「短距離遷移だ、目標は最初に現れた敵の本体!
 座標の重複は大爆発と相場は決まっているが、心配は無用だ!!
 瞬間移動能力者が物質重複の事態に備え、予防措置を講じておらぬ筈は無い!
 ワープ中の戦闘と同じ要領だ、至近距離(クロス・レンジ)から必殺の一撃を加えるぞ!!」

「了解《ラジャー》!」
 ヤマト消失と同時に、空間が無数の分身に埋め尽くされた。
 異次元空間を経て、大群のド真ん中に出現。
 上下左右、天地、前後の全方向から敵分身が押し寄せる。

 『逃げるのは自殺だ!』の名言を遺し、フラグメント船団へ果敢に斬り込んだ超重族の逸話を想起。
 地球人(テラナー)を盟友と認めた族長も、我々と同じ光景を眼に焼き付けたのだろうか。


「反物質爆弾《ネガスフィア》、発射!」
 テレサ謹製の切札を艦首、煙突、艦尾の発射孔から投擲。
 銀河パトロール隊の用いた負の球体、秘密兵器に類似の爆弾が数多の影武者を消滅させる。

「短距離遷移を続ける、本体を探せ!
 座標、NWA1941!」
 小ワープの際に生じる波紋、次元衝撃波が周囲に殺到する多数の分身を粉砕。
 3次元空間に復帰と同時に波動爆雷、エネルギー奪取弾、反物質爆弾を撒き散らす。
 分身の大群が瞬く間に凍結《フリーズ》するが、肝心の本体は見当たらぬ。

「次!
 WWF1936!!」
 常識を無視した暴挙、超短距離の遷移を繰り返す。
 3次元空間を離脱の際に生じる置き土産、宇宙空間を薙ぎ払う衝撃波前線も有効活用。
 エネルギー奪取弾の槍衾、凍気《コールド》の波動が更に多数の分身《オプション》を捕捉する。

「敵から入電!
『貴艦の安全を保障し、本拠次元界への帰還に協力する。
 ヤマトに告ぐ、直ちに自爆攻撃を中止せよ』
 以上です!」
 通信班長を務める地球人類の恩人、サーシャの絶叫が艦橋に響く。

「馬鹿め!」
 搦め手から仕掛けて来た、と言う事は。
 選択は、間違っておらぬ。
 敵は捨て身の攻撃に脅威を感じ、焦りの色を隠せずにいる。


 超3次元レーダー、ヤマト装備の探知機も捕捉不可能。
 本体を発見出来れば、確実に仕留められるのだが。
 懐柔策が効かぬ、と悟った敵は奥の手を投入。
 強烈な衝撃が精神平面を襲い、何も見えぬ。

「サーシャ、頑張って!」
 高音の絶叫が響き、強烈な閃光と化して混濁する意識を照射。
 満月の光を浴びた狼男、長命族の主を護る戦士達の様に無限の活力(エナジー)が漲った。
 ダライアス星系の最高指導者(ファイナル・マスター)、大帝と精神接触(コンタクト)が成立。
 第5惑星は暗黒星団帝国の本拠と同様、空洞惑星であった。

 地底世界(ペルシダー)の沈まぬ太陽、或いは要塞(デザリアム)と同じ惑星の(コア)
 ダライアス最後の砦、巨大水晶(クリスタル)の中枢に敵の本体が在る。
 スターシャ・サーシャ姉妹の念波が共鳴、数千倍に強化され精神融合現象を励起。
 私の意識内容と思考が操縦手《パイロット》、狙撃手《スナイパー》達に届く。

 紅玉《ルビー》を鏤めた徽章が輝き、ゲットー率いる軽火器操作班は断続的破壊光線(パルス・レーザー)砲24門を駆使。
 碧玉《サファイア》を嵌め込んだ腕章が煌き、バーガー率いる爆雷操作班も僥倖に頼る連続射撃を偽装する。
 金剛石《ダイヤモンド》を埋めた認識章が閃き、クロイツ率いる魚雷型ミサイル操作班は極力多数を連射。
 ハイデルン率いる重火器操作班が衝撃波砲(ショック・カノン)、波動砲の制御装置を調整する。


 ドメル戦闘班長と勇者達の意を受け、ヒス航海班長は勝算を秘めた短距離遷移を敢行。
 敵本体の真横に現れ、逃げる隙を与えず第一次ビーム仕様の破壊光線15条を叩き込む。
 重力場推進装置で艦首を惑星の核に向け、一点集束モード設定の波動砲を発射。
 三重の星形魔法陣が輝き同調相乗効果、共鳴現象を励起した。

 光の渦は瞬き世界破壊者(ワールド・デストロイヤー)の代名詞、中央銀河帝国の秘密兵器《ディスラプター》を再現。
 重巡洋艦『コルドバ』を破壊した銀河系最後の秘宝、重力崩壊を思わせる闇黒の渦に姿を変える。
 空間破砕爆弾《スペース・スマッシャー》の暴走と同様、究極の一撃(クリティカル・ヒット)は無敵。
 宇宙規模の極大消滅呪文《メドローア》、破砕力場《クラッシュ・フィールド》が最悪の敵を捕えた。

 ヨグ=ソトート眷属とも噂される異様に巨大な魔性の胎児、神の種子《フモール》も逃さぬ奇蹟(ミラクル)の罠。
 4次元時空連続体を強引に捻じ曲げ、消滅させる超絶の力場(ハイパー・フィールド)は瞬間移動の魔術(マジック)も許さぬ。
 第1次ビーム仕様の転換装置《コンヴァーター》が焼き切れ、闇黒の渦は消滅。
 爬虫類の貌を備える驚異の試作型生体兵器(バイオ・ストロング)、人類絶滅を企む悪夢が虚空に失せた。 
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