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『ひとつ』

作者:零那
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『何故』


あの時、僕が君の手を離したのは理由があったんだ。
でも其れは、君の為じゃなく僕の為だった。
僕はもう、疲れ過ぎてたんだ。
君から逃げたんだ。

子供のまま居られなくて、でも大人にもなりきれてなくて。
曖昧なまま、此のまま流されたくなかったんだ。
何より大事なもの、二度と失いたくなかったんだ。

なのに何故か心の何処かで君を大事に想う僕が居て。
何故か妙に心が痛くて。
そして何故か少し淋しくなったりして。

どうしてこんなに切ないんだろうと、考えて解った。
君にも、ちゃんと愛が在ったんだと、恐ろしく最低な僕だと。

僕の感情ってのは、愛情ってのは、何故こうも簡単に波が立つのだろう。
何故あの時、放っとけなかったんだろう。
あの一瞬だけでも、やり直せたなら今をリセットできる。

僕は何故また心乱されてるんだろう。
あの時、僕が君の手を離したのは理由があったんだ。
でも其れは、君の為じゃなく僕の為だった。

僕はもう、疲れ過ぎてたんだ。
君から逃げたんだ。

 
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