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ドリトル先生と二本尻尾の猫

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第三幕その八

 教授さんは先生にです、こう言いました。
「そろそろ」
「では前向きにということで」
「いや、そのお言葉は」
「ありませんか」
「あまりにも日本人的ではないですか」
「日本人はよくこう言いますか」
「はい、ですから」
 それでというのです。
「そうしたことを仰ることなく」
「ここはですか」
「実践です」
 あくまでそうしなければならないというのです。
「試しに日笠さんにお返しをされては」
「お抹茶の」
「はい、それを勧めさせて頂きます」
 こう先生にお話したところで、です。教授さんはふと研究室の壁の時計を見てです。それから先生に言いました。
「では私は」
「これからですね」
「講義がありますので」
 それで、というのです。
「退散させて頂きます」
「わかりました、今日は色々と有り難うございます」
「何かありましたらいらして下さい」
 教授さんの研究室にというのです。
「お待ちしています」
「ではお茶を飲みながら」
「お話しましょう」
 こう最後に言ってでした、教授さんは席を立って先生とお互いにお別れの挨拶をしてです。そのうえでなのでした。
 先生の研究室を後にしました、先生は一人になったところでふとこうしたことを言いました。
「お返しの品は何がいいかな」
「それは紅茶でいいんじゃないかしら」
 ここで何処からか声がしてきました。
「お茶にはお茶よ」
「その声は」
「こんにちは、先生」
 こう言ってでした、そのうえで。
 先生の前の場所にです、お静さんが出て来ました。人間の姿でそのうえで。
 桃色で赤い桃の花の花びら達で彩られている奇麗な振袖にです、黒い袴を穿いています。そしてその足はくるぶしを完全に隠した長靴です。
 その格好をしてです、先生にこう言ってきました。
「来させてもらったわよ」
「ああ、今日来てくれたんだ」
「そうなの、今日はお店を抜けて来たのよ」
「お店を開けて大丈夫なのかな」
「奥さんがいてくれるから」
 だからというのです。
「いいのよ」
「そうなんだね」
「そう、それでだけれど」
「うん、先日言ってたけれどね」
「あのことだね」
「そうなの、実はうちのお嬢さんだけれど」
 お静さんは困ったお顔になって先生にお話するのでした。
「この人のことで相談があるの」
「何処か悪いのかな」
「言っておくけれどお身体は健康よ」
「じゃあ心のことだね」
「先生そっちの方は」
「うん、精神科の方もいけるよ」
「精神科かっていうとまた違うのよ」
 お静さんはこのことは断りました。
「まあ病ではあるけれど」
「病って」
「だから。恋の病よ」
「恋愛なんだ」
「そうなの、そのことだけれど」
「ううん、困ったね」
 恋愛と聞いてです、先生は困ったお顔になりました。そのうえでこうお静さんに返すのでした。
「さっきのお話は聞いてたから」
「お返しのところからは聞いていたわよ」
「僕が一人になった」
「その時からよ」
「じゃあ知らないんだ」
「何のお話してたの?」
「僕の結婚のことだけれど」
 先生はその困ったお顔でお静さんにお話しました。 
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