極短編集
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短編27「二本足の馬」
仲間は悲しそうに鳴いた。
しかしその馬は、鳴いている仲間を一瞥(いちべつ)すると……
スタスタと歩きだたかと思うと、駆け出したのだった
◇◇◇
遊園地のバイトをしていた時の話だ。深夜の警備が僕の仕事だった
ガンガン、ガンガン!
何かが揺れる音が響く。見に行くと、そこはメリーゴーランドで……
「僕はもういやだ!」
と、一匹の馬が叫んでいた。馬はメリーゴーランドの中で激しく暴れていた。馬の体は、天井から突き刺さるポールによって貫かれている。その馬が激しく暴れるから、ガンガンと音がしていたのだ。
「いつもいつも、グルグル回っているだけの馬になりたくない!」
と、馬は叫んだ!!
「落ち着けよ、落ち着けって!」
と、僕は制止するが、激しさは増すばかりだった。そのうち……
バチン!
と、千切れる音がした。見ると、馬の体は突き刺さった下半身を残して、千切れていた。馬は、二本足で立ちながら、凛と背筋を伸ばし立って、こちらを見ていた。
「残った体には、今までの思い出。そして、僕はここから出て行く!」
と、馬は言うと、悲しそうに鳴いている仲間を一瞥(いちべつ)すると、スタスタと歩きだし、僕を振り返る……
「君もどうだい?」
と、言ったと思うと……
風のように駆け出したのだった。
おしまい
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