極短編集
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短編11「ヤベジロウ」
「パパ~傘が壊れちゃったよ!」
と、3歳になる娘が、傘の骨が折れた事を言って来た時の話だ。
『おいおい、壊れたんじゃなくて、壊したんだろ~?』
と、思ってニヤリとしたが黙っていた。
てな、訳で直す事にした。太いクリップがあったのを思い出し、それを伸ばし、傘の骨の添え木にした。あとは、ラジオペンチでU字の溝をつぶして固定。一応セロテープで補強もした。
「パパ、すご~い!」
と、娘に言われ上機嫌の僕。さてさて修理も終わり片付けていると、ちょんぎって余ったクリップに目がついた。捨てるにはもったいない気がした。 まだ5センチぐらい残っていたので、手に持って考えていると、ふと息子が楽しめそうな物を思いついた。早速、ペンチを持ってクネクネとやっていると、6歳の息子がやって来た。
「パパ、何作ってるの?」
そう言う息子に、今出来た物を見せた。折り曲げて作った3センチ四方の……
「パパ、これ知ってる!ヤジロベーでしょ?」
息子は分かったようだ。それを見ていた娘も……
「何なに~?」
と、やって来た。さてその夜、夕食の時間に傘を直した話をした。すると娘が……
「パパ傘直して、あと作った!」
と、ママに報告。
「傘を直したあと、パパは何を作ったの?」
「うんとね、うんとね、ヤベジロウ!」
これには、みんな大笑いだった!
「ヤベジロウって誰だよ~!?」
と、息子。みんなが笑っているのを見た娘は……
「あっ!間違えちゃった~ヤベジロウだった」
と、また言ったから、またまたみんな大笑い。
「あっ!また、間違えちゃった~!!アハハハ」
と、みんなの大爆笑に、娘も大笑いだったのだった。
おしまい
後書き
そうそう書いてて思い出した!息子も3歳の時に同じ事を言っていたのだ。保育園で、ドングリのヤジロベーを作って持って帰って来た日、息子も……
「見て見て~!ヤベジロウだよ~」
と、言う息子に……
「ヤジロベーだろ!ヤベジロウじゃなくて~」
と、僕は言ったのだった。やっぱり兄妹だなあ。
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