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転生赤龍帝のマフィアな生活

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番外編:パラレルワールドに行きます ~その二~

 
前書き
結構続く平行世界編。
作者はただひたすらにカオスを追い求めて行く。 

 

切っ掛けは些細な物だったと彼―――ドライグは考える。少しの間でもいいから平行世界(パラレルワールド)の自分と入れ替わっておっぱいドラゴンの汚名から逃げたかった。きっと、平行世界(パラレルワールド)の自分は今の自分よりもマシな生活を送っているとそう思っていた。だが―――それは間違いだった。


「小猫たんはどの世界でも可愛いよ! 小猫たん、マジでprprしたい」

「二人のゼノヴィアたん…だと!? この夢の状況に現界して二人同時にhshsせずに何が変態かぁっ!」

「くっ! 黒歌様がこの場にいらっしゃれば…っ! 仕方がありません。ここは一誠様に全身の骨を粉砕してもらうことでこの荒ぶる魂を静めなければ」

「ふふふ、この世界のドライグもどうですか? ご主人様にいたぶられる快感に目覚めれば新たな扉が開けますよ」



『我! 目覚めるは変態の理を神より奪いし変態龍なり! 鞭を受け入れ! 足を受け入れ! 我! 変態龍の覇王となりて汝を混沌(胃薬)へと誘わん! 変態の理想像!』



一言で言えばカオスな状況にドライグは声が出なかった。平行世界(パラレルワールド)の自分が提案した、同じ自分だから神器(セイクリッドギア)の中にも入れるのではないかという案に賛同して、そのまましばらくの間、居候させてもらおうかと考えていた五分前の自分を消し炭にしてしまいたい。そんな事を茫然としながらも考えている所に平行世界(パラレルワールド)の自分が狂ったように笑いながら話しかけて来る。


「はっはっは! どうだ、もう一人の俺!? このカオスな現象が怖いか? そうだろうな。未だにドライグなどと呼ばれている甘ちゃんな貴様には耐えられないだろうな」

「なに!? 貴様こそ、誇り高い二天龍が乳龍帝や、おっぱいドラゴンと呼ばれる苦しみが分かるのか!」


平行世界(パラレルワールド)の自分の言い草に怒り心頭になりながら、聞くものすべてが畏怖する様な唸り声を上げるドライグ。しかし、その内容からは一部たりとも威厳は感じられない。だが、平行世界(パラレルワールド)の“ドライグ”はその台詞を一蹴する。


「乳龍帝? おっぱいドラゴン? いいではないか。名前にしっかりと龍やドラゴンがついているではないか。その程度で苦しみとは笑わせてくれるな」

「では、貴様はなんと呼ばれているというのだ!」


「カストカゲだが、何か?」


その言葉を聞いた瞬間ドライグは己の敗北を悟った。もはや、拒むことすら忘れてしまったかのような堂々とした物言いに涙すら流れて来る。彼も初めの内は拒んだのだろう。だが、努力という言葉をあざ笑うかのような圧倒的な力の前に屈してしまった。そこまで察して今まで感じなかったが自分の境遇に感謝の念を覚えてしまう。


「ははは、笑えばいい。二天龍が今では地に落ちたトカゲ扱いだ。相棒にとってはドラゴンなど皆、等しく爬虫類扱いだ」

「もういい……もう何も言うな!」

「お前も見ただろう? かつて戦場を共に戦ってきた勇ましい友の変わり果てた姿を。あれはもう二度と元には戻らないのだ」


涙ながらに、ドライグは平行世界(パラレルワールド)の自分にこれ以上の発言をするのを止めようとするがもう、“ドライグ”は止まらない。乾いた笑いを上げながらうわ言のように呟き続ける。そして、その異様な光景にも全く気にすることなく、歴代赤龍帝は狂気の宴を行う。


「もう二度と戻らないのなら……せめて、勇ましく散らしてやろう!」

「やめておけ、もう一人の俺」


ドライグはいっそのこと自分が始末した方が情けになるのではないのかと思い、その力を持って歴代赤龍帝を滅せようとする。正直に言うと、自分の所もおかしい状態ではあるのだが、これはレベルが違いすぎる。しかし、平行世界(パラレルワールド)の“ドライグ”はそれを諦め顔で制止しようとする。だが、すでにドライグの口からは赤い閃光が放たれていた。それを受けた歴代赤龍帝(マゾヒスト・ヴァーサーカーズ)は―――


「荒ぶるッ! 昂るッ! この魂ィィィーーッ!」

「混沌も! 変態も! 貴方の前には等しく同じ! しからば、しからば! 鞭打ち、鞭打ち! フォォォォー! すこぶるぞーー! 高まるぞーー!」

「体が物理的にとろけるような、この熱い攻撃…っ! ああ、もう一人のドライグ。私の体をもっと、もっと溶かしてください!」


さらに活性化していた。ドライグは直ぐに考えることを放棄して、自らの暖かな家に帰ろうとする。しかし、その願いは叶わなかった。がっしりと“ドライグ”に掴まれてしまっていたのだ。ドライグはゆっくりと振り返る。すると、掴んだ相手の顔は醜く歪んでいた。まるで―――ようやく道連れを見つけたかのように。


「まあ、もう少しゆっくりしていけ。それと、後でそちらに俺達(・・)も行こう」

「や、やめろぉぉぉおおおっ!!」

「安心しろ。すぐに、落ちるさ、くっくっく」


「「「「カオスは加速する!」」」」


その後、その精神世界には一匹の龍の悲鳴が響き渡った。





「なあ、ドライグが帰ってきてから黙ったままなんだけど、あんた何か知ってるか?」

「……覚えとけ、カス。この世界には知らない方がいいことの方が多い」


俺はこの世界の俺の質問に対してため息をはきながらそう返す。あの地獄絵図を見たことがないというのは何とも羨ましい限りだが、まあ、今回はカストカゲも道連れを見つけたせいか、張り切ってやがるからすぐに知ることになるだろうがな。


「は? ドライグどうしたんだ。急に笑いだして。お、おい、しっかりしろ、ドライグ! ドライグ!」


どうやら赤トカゲは変態達のせいで完全に狂ったらしいな。ついでだ。そのまま、歴代赤龍帝もこっちと同じになりゃいい。そうすりゃ、俺と同じ苦しみが味わえるだろうぜ。……10年近くその苦しみを味わってきた俺はよく耐えたもんだ。


「で、俺達はいつまでこの世界に居りゃいいんだアザゼル? こっちも暇じゃねえんだ。とっとと帰らせろ」

「あー……それがな」


気まずそうに目を逸らして、何やら怪しげな機器の残骸を見つめるアザゼル。おい、もしかしなくてもあれが俺達をこの世界に呼び寄せた機械か? それがぶっ壊れているってことは……考えるまでもねえな。俺達はあれを直るのを待つか、新しいやつが出来るかまでは帰れねえってことだ。

いっそのこと設計図をかっぱらって俺が作るか? いや、何で俺がこんなやつらの尻を拭う真似をしねえといけねえんだ。アザゼルのやつなら、無駄に技術力はあるんだ。しばらく待ってりゃ、勝手に直すだろ。


「けっ……まあいい。今日の所はどっか適当な場所に泊まるから、てめえはさっさとその機械直せ」

「待って、えっと……もう一人のイッセー。あなた、お金はあるの? 多分だけどカードはこの世界では使えないわよ」


そう言って、この世界のリアス・グレモリーが俺に声をかける。確かに、俺の口座はこの世界にはねえだろうな。だとしても、俺が金に困ることは無い。ある程度の現金は常に持ち歩いている。俺は懐から、札束を二つほど取り出し軽くめくる。


「二百万か……まあ、しばらくは問題はねえな」

「はあ!? なんで、お前そんな額を軽く持ち歩いてるんだよ! 同じ俺だろ!?」

「カスが俺を同類に見るんじゃねえよ。俺とてめえは違う。そんな当たり前のことも分からねえのか、カス馬鹿」


何やら、俺が金を持っていることに驚愕するこの世界の俺に苛立ってそう吐き捨てる。そして、同じ顔をしていようが、同じ性格をしていようが、違うもんは違う。と続けると、罵倒された怒りも失い、まるで目から鱗が落ちたという顔をして俺を見つめる、カス。

その顔が気に入らないのでふん、と鼻を鳴らしてそのまま外に出て行く。その後ろにユニ達が続く。そういや、“イリナ”と“ゼノヴィア”を回収しねえとな。俺は消えていったあいつらを回収するべく声を掛ける。


「おい、イリナ、ゼノヴィア行くぞ」


「「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」」


「あ、うん。ちょっと待っててね、ダーリン。すぐ終わらせるから」


俺が見た光景は、誠心誠意の見事なまでにシンクロした土下座をする二人のゼノヴィアと、今まさにトンファーを振りかぶった状態で俺の方を見てニッコリと可愛らしい笑顔を浮かべているイリナだった。正直に言って、何を終わらせるのかが非常に気になるが聞かない方が安全だと超直感が告げているので俺は黙って頷いてその場を後にする。

因みに、俺についてきたこの世界のグレモリー眷属共も、何も言わずにサーっとこの世界のイリナから離れて近づこうとしない。『酷い! 私はこんなことしないのに!』などと叫んでいるが、まったく効果はないようだ。……いっそ、哀れだな。その後、二つの断末魔の悲鳴が聞こえてきたが“イリナ”がとてもいい笑顔で二人を引きずって帰って来たので取りあえず、生存はしているようだ。





「中々、面白いことが起きてるじゃないか。兵藤一誠」

「げっ、ヴァーリ!」


この世界のイッセー一行と、平行世界(パラレルワールド)の“イッセー”一行の前に現れたのはこの世界の白龍皇である、ヴァーリ・ルシファーであった。その姿を見た瞬間この世界のイッセーはあからさまに嫌そうな顔をする。別にヴァーリのことが心底嫌いというわけではないのだが、この状況で現れたという事は十中八九、平行世界(パラレルワールド)の自分か、“ヴァーリ”と戦う為だろうと察したからである。

そもそも、どうして一緒に移動していたのかというとこれ以上迷惑をかけるのは悪いという理由でせめてこの世界にいる間だけでも世話をしようと思ったからである。それに対して悪態を吐いていた“イッセー”だったが、不思議なことに同行事態は拒否しなかった。

そのため、イッセーは何だかんだいって優しい人間なのだと彼の事を分析していた。そして、同時に常に先頭に歩き続けるその背中に自分とは違う、気高さを感じて少しのあこがれも抱いていた。だからこそ、彼の為に面倒事を引き寄せたくなかったのだが、三人もの二天龍がいるという異常事態ではそんな願いは無意味だった。


「君だな、もう一人の赤龍帝は。どうして二人いるのかは分からないが、大方アザゼルのせいだろう」

「……俺達の周囲にはクロームが幻覚を張ってたはずだが?」

「それは私にゃ。結構強力だけど、まだまだ私を騙すには力が足りないにゃ」


ヴァーリの言葉に答えることもなく、“イッセー”は自分の疑問をヴァーリにぶつける。そんな“イッセー”の問いにこの世界の黒歌が答える。それを聞いたクロームは少し悔しそうに顔を歪める。恐らくは自分の術が破られたことが悔しかったのだろう。


「ちっ、どっちのカス猫も気に入らねえことばかりしやがる」

「にゃ? 私ってそんな酷い呼ばれ方してるの?」


“イッセー”の余りの言い草に黒歌が若干慄くがそこは持ち前の軽さか、スルーする方向で受け流した。そんな姿にこの世界の小猫は平行世界(パラレルワールド)の自分達姉妹はどうなっているのだろうかと複雑そうな顔を浮かべる。だが、そんな空気も読まずにヴァーリがブツブツと呟く。


「やはり、戦うなら赤龍帝の方か。だが、同じ白龍皇と戦う機会など二度と来ない……そうなるとやはり白龍皇か……いや、だが」


そんなことを呟く間にそのまま去ってしまおうかと考えるイッセー達だったが一人だけは違った。可愛らしい童顔でヴァーリを見つめたのちにヴァーリへと話しかける。


「ねえ―――お兄ちゃん」

「お、お兄ちゃん…だと? 俺が?」

「うん、同じヴァーリだと呼びづらいでしょ」


そう言ってヴァーリの所まで飛んでいく“ヴァーリ”。ヴァーリの方は普段は無表情しか浮かべない顔に珍しく困惑の色を覗かせていた。そして“ヴァーリ”が到着したと思った瞬間に―――“ヴァーリ”はこけた。何故か、空中で。その事に若干パニくりながらもヴァーリはそれを受け止める。


「ありがとう、お兄ちゃん!」


そして、顔を上げて天使のような微笑みでヴァーリにお礼を言う。その瞬間、ヴァーリの中の何かに雷が落ちた。


「アルビオン、目的は異なる赤龍帝ただ一人だ。俺には妹を傷つけることなどできない」

『ヴァーリ……たったあれだけでシスコンになったのか』


お兄ちゃんと呼ばれたことが効いたのか、“ヴァーリ”を実の妹だと判断したヴァーリに対してアルビオンが呆れた声で呟く。そんなところに平行世界(パラレルワールド)の“アルビオン”が何やら嬉しそうに話しかけて来る。


『聞いてくれ、もう一人の俺! 今日は“ヴァーリ”が初めて目覚ましが鳴って五分後に起きたんだ!』

『まて、既に五分寝坊しているのではないか?』

『細かいことを言うな! いつもなら俺が起きろと言っても『うーん……あと五時間』と言って三十分は目を醒まさないのだぞ! それが初めてこんなにも早く……ううっ。今までの努力が報われた気分だ』

『……苦労しているのだな、お前も』


感涙するもう一人の自分に対してアルビオンは哀愁の漂う声でそう返す事しか出来ない。そんな様子を見つめる、他の者からは呆れた目線と暖かな目線が向けられる。因みに暖かな視線は一緒に住んでいる“イッセー”達だったりする。


「さて、唐突で悪いんだが、もう一人の赤龍帝。俺と戦ってくれないか?」

「誰が、そんな面倒くせえことするか」

「だとしても、俺は君と戦いたいんだ。もし君が戦わないのなら、君の家族を……まあ、これは冗談―――」


冗談だと言おうとした、ヴァーリが突如として地面へと急降下―――いや、落下していく。そして、凄まじい衝撃音と共に地面に叩きつけられる。そして、なおも地面にのめり込む様に押しつぶされていく。その事に“イリナ”以外の人物が驚くが誰一人として声を発することをしない。

いや、出来ないのだ。ヴァーリを地に伏せさせた男の発する殺気によって。男の放つ殺気は、相手の恐怖を呼び起こし、背筋を冷たくする類のものではない。絶対的な王者が放つ殺気は彼等の本能に王者の前では話してはいけないと、身じろぎ一つしてはいけないと教えているのだ。その王者は炎を灯した赤いマントをはおり、手にはグローブをはめている。その王者(暴君)の名前は―――



「冗談だろうが、なんだろうが……俺のファミリーに手を出すと言った奴は―――カッ消す!」



平行世界(パラレルワールド)の“兵藤一誠”またの名を―――最恐の赤龍帝。

 
 

 
後書き
シリアスが来ると思うだろう? だがな、そんなものはすぐに消える。これが真理だ!
多分、次回は追加で原作に来るキャラがいます。まあ、誰かは分かるよね(白目) 
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