『曹徳の奮闘記』改訂版
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第六十八話
まぁ、予想外な三人が袁術軍に入ってくれたのは有り難いけど………実質、二人分だな。
袁紹は………無理だからな。
それに、顔良―――斗詩(真名を預けてくれた。勿論俺も斗詩に真名を預けている)は少しばかりだが、文官の仕事も出来るみたいだ。
「フヒヒヒ、逃がしはしないぞ斗詩ぃ~」
「………ちょっと怖いです長門さん………」
それはサーせん。
「ところでさ斗詩」
「何ですか長門さん?」
「冀州の治安は一体どうなっていたんだ?」
今日の間者からの報告で、曹操は漸く冀州の治安維持に成功して今は旧袁紹軍の兵士を鍛えていた。
曹操の次なる標的は涼州の馬騰みたいだ。
「………一応は文官の皆さん達と頑張っていたんですが、姫と文ちゃんがあの性格ですから………それに田豊達もかなりの悪事をしていたみたいで」
「………納得したよ。悪かったな、いきなり聞いたりして」
「いえ、構いません」
斗詩は俺にそう言う。
ちなみに今いる場所は城の作戦室だな。
「ところで、そろそろ孫策軍が動きだしそうな気配をしておるのじゃが………防衛は完璧か?」
俺の膝に座っている美羽が俺に言う。
「あぁ。孫策軍は見張りの兵士を増やしているが、今のところ進撃する様子はない」
俺は地図に描かれてある孫策軍の場所をトントンと指で叩く。
「じゃが、早めに攻略せんと南陽が危なくなるのじゃ」
美羽は南陽を指指す。
「いや、南陽は最悪捨てるかもしれん」
「何じゃとッ!?」
俺の言葉に美羽が驚く。
「正直、曹操軍が南陽に侵攻したら防衛線は持たない。南陽にいる零には予め、防衛が困難になれば此処に撤退しても構わないと言ってあるからな。それに南陽にあった大砲の製造工場は合肥に移転してるし、職人達も集結している」
「………それなら構わないのじゃが、せめて妾に伝えて欲しいのじゃ」
プゥと美羽が頬を膨らませる。
「ゴメンな美羽。何時何処で間者が見張っているか分からんからな」
「………仕方無いのじゃ。罰として軍儀が終わるまで座らせるのじゃ」
「了解しました」
美羽の言葉に苦笑して美羽を俺の膝に座らせる。
「孫策軍の対策だが………真桜、どうなっているんだ?」
「はいなッ!!」
俺の言葉に真桜が勢いよく返事をする。
「工事は着々と進んでて、後もう少しで孫策軍の砦に近付けれるわ」
「近付けられる? どういう事なのじゃ長門?」
真桜の言葉に疑問を感じた美羽が俺に聞く。
「真桜の工作隊と一部の部隊に隠れた塹壕を掘らしているんだ」
俺は指揮棒を持って合肥城を叩く。
「城の中から外へ通じる穴を掘って、城から孫策軍の砦前まで通じる地下洞を掘っているんだ」
この塹壕は、深さは約二メートルで地上からは木の板等を組んで土を少量かけて建築している。
まぁ第一次世界大戦のような塹壕の上に少量の木の板や布を被せてその上に僅か砂をかけて擬装している。
「後一日あれば、砦前まで通じるわ」
「分かった。出来るだけ早めにな」
「分かったで」
真桜は頷いてから椅子に座る。
「なら孫策軍への総攻撃はその塹壕とやらが到達してからなのじゃ」
美羽はそう決定した。
「それと、荊州から抗議文の返事が来たのじゃ」
「どれどれ………うわぁ………見るか星?」
「読ましてもらいますぞ主………これは………」
星が返事の内容を見て顔を歪ませる。
まぁ簡単に言えば「私達は劉キを追い出してから荊州の治安維持に追われていたので暗殺部隊を出せる暇なんかありません。そんな濡れ衣を着せようとするなら私達も怒りますよ?」と書かれていた。
「劉備が書いたのか?」
紙を見ているクロエが言う。
「うんにゃ。多分、天の御遣いとやらだろうな。あのパッパラパーの劉備には出来ない事だ」
パッパラパーの言葉に星達は首を傾げるが、クロエ、ロッタは苦笑する。
「ま、今は孫策軍に集中しようや。劉備へは警戒しか出来ないけどな」
俺の言葉に皆は頷いた。
後書き
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