静かな勇者
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4部分:第四章
第四章
「そしてだ」
「さらにですね」
「生き残っている村人達も。この村もだ」
「そのどちらもですね」
「救わなければならないからだ」
「だからこそですか」
「待っていた」
ランスロットは言った。
「では攻める」
「今ここで」
こうしてだった。彼等は。
馬に乗り夜の闇からだ。村の中央で宴の末に酔い潰れている彼等を襲ったのだった。
「な、何っ!?」
「何だ!?」
「誰が来たんだ!」
「覚悟しろ!」
「成敗する!」
ランスロットとヴェインはそれぞれ槍を掲げてだ。
馬上から叫びだ。彼等を攻めるのである。
その槍を繰り出し次から次に山賊達を貫きだ。倒していく。相手は五十人といえども酔い潰れ夜の闇に戸惑う彼等は二人の敵ではなかった。
二人は山賊達を瞬く間に倒してだ。村を救ったのだった。
生き残った村人達の感謝の言葉を受けつつだ。二人は村を後にした。それからだ。
ヴェインはアーサー王のいるキャメロットにランスロットと向かう途中でだ。彼に言ったのだった。
「見させてもらいました」
「何をだ?」
「ランスロット卿をです」
他ならぬだ。彼自身をだというのだ。
「そうさせてもらいました」
「私をか」
「はい、そうです」
そのだ。青い炎をだ。見たというのである。
「そういうことなのですか」
「私とて人間だ」
ランスロットはヴェインが何を言っているのかわかっていた。そのうえでだ。
彼に対してだ。こう答えるのである。
二人は今は緑の道を進んでいる。平原で周囲にあるのは緑の草原、それに赤や白の花々が咲いている。その中を進んでだった。
ランスロットはだ。こう言うのだった。
「怒りもある」
「そうですね。しかしですね」
「それに耐えなければならない時もあるのだ」
そうだというのだ。それがあの時だったのだ。
「わかってくれたか」
「はい、そのこともまた」
「では行こう」
ランスロットは自分の背を、マントに覆われている背を見ているヴェインに言った。
「王の御前に」
「山賊を退治したことを報告に」
「行くとしよう」
「わかりました」
ヴェインはランスロットのその言葉にすぐに頷いた。そうしてだ。
彼の背を見ながら前に進む。今その背は静かな水をたたえていた。
静かな勇者 完
2011・7・30
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