戦国異伝
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第二百三話 蛟龍と獅子その十一
「それではな」
「ですか、では」
「このままではですか」
「我等は敗れますか」
「織田家に」
「そうなる、しかしただ敗れるつもりはない」
氏康は確かな声と顔で言った。
「戦うぞ、まだ」
「はい、最後の最後まで」
「戦いましょうぞ」
「この城はわしが守る」
小田原、この城をというのだ。
「だから何としてもな」
「はい、我等も」
「殿と共にあります」
「そして何があろうとも」
「織田になびきませぬ」
「その風下に立つこともしませぬ」
「頼むぞ、若し和を乱す者がおれば」
そうした者がいてもだとだ。また言う彼だった、
「斬る」
「殿が、ですか」
「ご自身で、ですか」
「そうした輩も」
「奇麗ごとや体裁は言わぬ」
今は、というのだ。
「そうした者は容赦せぬ」
「では」
「織田家が何を仕掛けようとも」
「そうしてもですな」
「断じて」
「謀も防ぐ」
信長のそれもというのだ。
「必ずな」
「殿が」
「ご自身で」
「そうじゃ」
まさに、と言うのだった。
「そうする」
「織田は何をしてくるか」
「そのことも」
「読んでおる」
読んでいる、だからだというのだ。
「わしが防いでみせる」
「では我等は」
「殿と共に」
家臣達はその氏康に頭を垂れた、そしてだった。
彼等は次の日櫓から信長が築かせている城が完成したのを観た。氏康はここでもこう言ったのであった。
「ではな」
「次、ですな」
「次の戦ですな」
「そうじゃ、それに入った」
今まさにというのだ。
「そしてじゃ」
「最後まで戦い」
「そのうえで」
「家を守る」
必ず、というのだ。
「そうしてみせよう」
「織田信長から」
「うむ、ただな」
ここでだ、こうも言った氏康だった。
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