フェアリーアイズ
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3部分:第三章
第三章
その小人を見てだ。思わず声をあげてジョンに突っ込まれたのだ。
「ちょっと。見間違いかしら」
「僕をスティーブ=マックイーンと見間違えたのかい?」
「ええ、デビット=ベッカムとね」
「おいおい、イギリスなのかい」
「じゃあ何がいいのかしら」
「だからマックイーンだよ」
そのアイルランド系アメリカ人の俳優をだとだ。あくまで言うジョンだった。
「それで頼むよ」
「また言ってくれるわね」
「言うだけは言うさ。とにかくね」
何を見たのかとだ。また問うジョンだった。
「それでだけれど」
「気のせいね」
結局はこう考えるエリザだった。
「やっぱり」
「気のせいって」
「何でもないわ」
また言う彼女だった。
「じゃあ。今はね」
「今は?」
「仕事しましょう」
コーヒーを飲んでからだ。こう言う彼女だった。
それでだ。この日はそれで済ませた。しかしである。
翌日はだ。大使館に行く途中にだった。
道の左側の壁にだ。猫がいた。白いマンチカンである。しかしその猫はだ。
長靴を履いてそのうえで壁の上を二本足で歩いている。明らかに普通の猫ではない。
しかもだ。その猫がだ。
右の前足を手の如くあげてエリザに挨拶してきてだ。こう言うのである。
「よお、おはよう」
「えっ、猫がって」
「驚いたっていうかおいらの姿見えてるんだね」
「見えてるも何も」
どうかとだ。エリザは引きながらその長靴を履いた猫に言い返す。
「猫が喋って二本足で立って」
「ははは、おいら普通の人間にはただの猫って思われてるんだ」
「ただの猫?」
「おいら妖精なんだよ」
それだと話す猫だった。
「ケット=シーっていうんだ。知ってるよな」
「ケット=シー。あああれね」
ここでだ。エリザもわかったのだった。
「そういえば貴方それね。童話とかに出て来る」
「あんたアイリッシュだね」
ケット=シーはそのことも見抜いて言う。
「大体わかるよ」
「わかるの」
「感じでわかるよ。それでね」
「それで?」
「まああんたがおいら達が見えるのなら」
それでだというのだ。ケット=シーは。
「おいら達の友達だな」
「姿が見えるだけで?」
「姿が見えて話ができるだろ」
妖怪は明るく笑って彼女に話していく。
「ちゃんと」
「今こうしてね」
「だからだよ。友達だよ」
それでだ。彼等はだというのだ。
「だから宜しくな」
「妖精のお友達ね」
「変わってていいだろ」
今度はこう言って笑う妖精だった。
「じゃあそれじゃあな」
「これからね」
「宜しくな。ああ、そうだ」
ここでだ。ケット=シーはさらにだった。
笑いつつ二本足で立ちながらだ。こう言ったのだった。
「おいら達の姿は普通の人には只の猫に見えるからな」
「普通の猫になのね」
「ああ、四本足の猫にな」
見えるというのだ。まさに普通の猫にだ。
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