破壊神の恵み
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2部分:第二章
第二章
「宜しいでしょうか」
「一体何処だ」
「河です」
そこだというのだ。
「河に来て頂けますか」
「河か」
「ガンジス河です」
神々にとっても人間達にとっても他の生命にとってもだ。聖なる河だ。その清らかな水はあらゆるものを清めると言われている偉大な河だ。
その河にだ。妻は夫を誘うのだった。
「そこに行かれます」
「わかった」
シヴァはパールヴァティーのその言葉に頷いた。これで決まった。
二人は一瞬のうちにガンジス河に来た。そのたゆまなく流れる大河のほとりにだ。二人で来たのである。
来てからだ。その流れを見ながらだ。パールヴァティーは話した。
「この河は清らかですね」
「この世界で最も清らかな河だ」
シヴァもだ。その清らかさについて話したのだった。
「この河に来たが」
「それでなのです」
夫に顔を向けて微笑んでいた。
「この河は時として暴れますね」
「氾濫もするな」
「その時多くの者が死にます」
河の流れに飲み込まれてだ。そうなってしまうのだ。
「多くのものも流されてしまいます」
「失われるな。実に多くのものが」
「はい、しかしです」
「しかしなのか」
「その氾濫の後にあるものはです」
ただ氾濫が起こるだけではないというのだ。
「ガンジス河は多くの恵み、豊かな土壌を持って来ます」
「水も」
「そうです。ただ何もかもを流してしまうだけではないのです」
「恵みももたらすか」
「そして流すのはよいものだけではありません」
その他のものもだというのだ。パールヴァティーは話していく。
「悪いものもです」
「悪いものか」
「貴方もです」
そのシヴァへの言葉だ。
「多くの悪しきものを破壊されていますね」
「私は悪を好まぬ」
「そうですね」
「そうだ。私は悪を討つ」
彼は言うのであった。確かな声で。
「それもまた務めだからだ」
「それは河も同じです」
「このガンジスもか」
「ガンジスは何故このうえなく清らかなのか」
そのことも話すパールヴァティーだった。
「それはあらゆる穢れを流すからです」
「穢れをか」
「そうなのです。穢れを清めるものだからです」
「では私は」
「貴方も同じです」
そのだ。ガンジス河もだというのだ。
「全てを破壊し、清められているのです」
「私はそうしているのか」
「清め、そして」
「そしてか」
「そこからまた全てがはじまるのです」
破壊だけではないというのだ。それで終わりではとだ。
「創造がです」
「創造。ブラフマーだな」
創造の神だ。そこからまたはじまるのだ。
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