東方大冒録
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命蓮寺での軽いいざこざ。
前書き
さぁ命蓮寺に来ました。
ちなみに、ファンネルはスペル版と通常版があり、通常版は雑用が専門です。
「さぁ、着きました。ここが命蓮寺です」
「おー……、なんだろう、心が洗われるって言うのかなぁ……? 気分がすっきりするな……」
暗基一行はナズーリン、星、村沙の案内で、命蓮寺にやって来た。辺りには、妖怪寺というわりにはとても清らかな空気と雰囲気を放っていて、暗基は思わず深呼吸をした。そのあと暗基は薄くではあるが、とても強力な結界が張ってあることに気がついた。
「なぁ、皆がマガイモノになってない理由のひとつはこの結界か?」
「えっ、零君この結界感知できるの? この結界って普通の人間には絶対に感知できないんだよ!?」
暗基が命蓮寺に張ってある結界のことを指摘すると、村沙は顔をキラキラさせながら暗基をすごいと言った。それに続けて、ナズーリンと星も思わず声をあげてしまう。
「幻想郷の最後の希望なだけはあるみたいだね」
「そんな誉めるようなもんか? おれは感知っていうか、見えるんだけど?」
「すごいですよ! この結界は感知は出来ても目視は出来ないタイプの結界だというのに、それを見ることができるとは、あなたは侮れませんね……」
「へぇ~、そうなんだ……」
どうやら、暗基の言う『普通のもの』は、3人にとっては『すごいもの』のようである。そして星は突然思い出したかのように歩きながら声を出した。
「客人を立たせたままにするのはよろしくないですね。今日はもう夜も遅いので、客間に案内します。そこで一晩お休みになってください。時間の都合上、夕食は用意出来ませんが……」
「いや、さっきまで紅魔館でご飯食べてたから気にしなくていいよ。とりあえず今日は寝させてくれればそれでいいや」
「わかりました。それでは、こちらへどうぞ。ナズーリンと村沙は先に休んでいても構いませんよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて、休ませてもらうよ」
「お休み零君! また明日ね!」
「おう、明日な!」
ナズーリン、村沙と別れ、暗基は星に案内され、客間へと向かう。すると星がおもむろに後ろを向きながら言う。
「にしても、大変失礼ではありますが、とても、頼れる男という雰囲気を感じないのですが……。貴方は本当に幻想郷の最後の希望なのでしょうか……?」
「あんた本当に失礼だなオイ……。一応紫とかにはそう言われてるからまぁそうなんじゃねぇのか?」
「なんと、紫さんにですか……。あの方は胡散臭いですが的を得ていますからね……。まぁ信じることにしますね」
「はぁ、ちょっと失礼すぎてあんたを一発殴りたい」
「失礼しました。さすがに寺では殺生になりかねない事はやめてください……。寺を出たら、好きなだけお相手させてもらいますよ。さて、客間に着きましたので、今から布団を引きますね。そこで少しお待ちください」
「はいはい」
星と話をしているうちに、客間に着いたようだ。布団を引くから少し待っていてほしいとのことなので、お言葉に甘えて黙って待っていることにする。そして、今ファンネルの拘束用レーザーで吊るした状態になっている霊夢、魔理沙、咲夜を解放して、壁にもたれかけるように座らせた。
「ふぅ、ありがとうな、ファンネル」
そしてファンネルにお礼を言うと、ファンネルはそのまま消えていった。
「にしても、なんでまた淫乱になるようなものを使ったんだろうな……。さっぱりわかんねぇな」
「うぅ……、どこだここ……?」
「おっ、魔理沙起きたか。体とかは問題ないか?」
「いや、ちょっと気分は優れないかな……。で、ここはどこだ?」
待っているうちに魔理沙が目を覚ましたようだ。
「命蓮寺だ。ちょっといろいろあってな。今星が布団を用意してくれてる」
「星……、あぁ、毘沙門天の弟子だとかいうやつか。そういえばそんなやつもいたな。あの時はすごくめんどくさかったなぁ……」
魔理沙は目を閉じながら、しみじみとその「めんどくさかった」ときのことを語り始めた。その話を聞いていて、あぁ、星蓮船の話か、アレはプレイヤーとしてもめんどくさかったなぁ、と思いながら魔理沙の武勇伝を聞いていた。すると、星が申し訳なさそうな顔をしながら客間から出てきた。
「そのときは本当にご迷惑をおかけしましたよ、魔理沙さん」
「おっ、久しぶりだな星」
「そうですね。ちゃんと皆様の分も、お布団は用意してありますよ」
「やったぜ。ご飯はあるか?」
「申し訳ありません」
「う、うそだろ~!」
「仕方ないだろ時間的に。あきらめろ」
「くそー……」
魔理沙が明らかに悔しそうな顔をしながらすねている。かわいいものだが、実際にないものは仕方ない。
「さてと、おれはもう寝るけど、魔理沙はどうする?」
「いや、私も寝る……」
「ということみたいだし。星、ありがとう。いろいろと助けてもらって」
「いえいえ、それでは、また明日。おやすみなさい」
「おやすみだぜ……、Zzz……」
「ほらほら、寝るならちゃんと布団でな」
そして星は自分の部屋へと戻っていった。暗基はもうすでに眠ってしまった魔理沙と、まだ気絶したままの霊夢と咲夜をファンネルを使って布団へと運んでいった。そして暗基もふすまを閉じ、ファンネルを解除すると同時に床につこうと目を閉じた。が。
「寝付けねぇ……」
暗基はまったく寝付けなかった。眠いはずなのに目だけが冴えてしまって、どうしようもなかったのだ。
「ちくしょう……。おれ寝付けないのはほんとにいやなのに……。3人ともうらやましすぎる……」
と1人でぶつぶつとつぶやいていると、気のせいなのか、とても小さな声が聞こえてきた。
「さて、ここにまた客人がきたらしいわね」
「そうだね。わちきも楽しみだよ」
(……、予想が正しければ、おそらく小傘とぬえだな)
今そこでこそこそと何かを企てているのは、多々良小傘と封獣ぬえだろう。イタズラ大好物の2人のことだ。きっと寝起きドッキリをしようとでも考えているのだろう。だったら、
(驚かし返してやるか。あしたが楽しみだ)
そう思いながら、そして一気に安心したのか、そのまま暗基は眠った。
次の日。早朝。
「いい? 巫女、魔法使い、メイドは絶対驚かせたらだめだからね?」
「おっけい! それじゃ、手筈通りに」
ぬえと小傘はみんなが眠っている客間へと、寝起きドッキリをするためにやってきた。ぬえと小傘は、暗基が眠っていると思われる布団へと足を進め、布団が膨らんでいることを確認した。
「ほいじゃ」
「よし!」
ぬえと小傘は、2人で一気に布団を剥ぎ取り、そしてそのまま、
「「くらえ!!」」
顔に思いっきり張り手を打った。はずだったが、手に当たったものが、妙にやわらかかった。
「ん?」
「あれ?」
それを見ると、ただの布がぐるぐる巻きになっていただけだった。そしてそこには、
「上を見てみな? おバカなお嬢さん方?」
とかかれている紙が貼ってあった。
「上……?」
「わちきが、バカ?」
紙のとおりに、2人は上を見上げると、そこには、
「Let's! Party Morning!! わるいごはいねが~!!!」
と叫びながら、天井から棍棒のようななにかを持ちながら落ちてくる暗基がいた。そしてその顔には、なまはげのお面をつけていた。そのため、その見た目に堪えられなかったのか、
「「キャァァァァァァアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!??」」
全力で泣き叫ぶ二人の妖怪少女が完成した。
「……」
腕を組みながら、額に青筋を浮かべる霊夢。そして、
「……」
「……」
「……」
黙って正座をさせられる、暗基、ぬえ、小傘。その3人に対し、霊夢は一言言う。
「……、何かいうことは?」
問題。ここから導かれる、3人の返事は、
「……、どうもすみませんでした……」
答え。謝るしかない。
今なにが起きているのかというと、霊夢に怒られていた。
小傘とぬえが泣き叫んだ影響で、霊夢が目を覚ましてしまったのだ。そして、暗基と小傘とぬえが朝っぱらから騒いでいたと理解すると同時に3人に対して無言の威圧をたたきつけたのだった。ちなみに威圧のその強さは、どれだけ騒いでいてもまったく目を覚まさなかった魔理沙と咲夜が、あまりの恐怖心から目を覚ましてしまったほどであった。
そして今、暗基と小傘とぬえはでっかいたんこぶを作るハメになってしまっていたのだ。
「あんた達さぁ、なんで朝っぱらから騒ぐわけ? 意味わかんないんだけど?」
「こっ、これは、その……」
小傘がびくびくしながら答えようとするが、
「なによ? はっきり喋りなさい?」
霊夢の威圧感が半端ではないため、何も話すことが出来ないでいた。その横でぬえもびくびくしていた。
「ぅぉ-、こえぇ……」
「……、なにか?」
「なんでもないから、お札をしまってくれませんかさすがにシャレにならないから」
霊夢がにっこり笑顔で、額に青筋を浮かべながらお札を取り出す。それを必死になって暗基がしまわせようとする。
「あんたもあんたよ零。なんでそいつらのイタズラにイタズラで返すわけ?」
「それはあれだ。おれ、人間であれ妖怪であれ、子供と戯れるのが好きだからさ……」
「それとイタズラ、なにがどう関係ある? 1から説明してもらえないかしらねぇ?」
「うっ……、胸倉掴まないでくれ……」
暗基が必死になって言葉を選びつつ話すものの、張りぼては脆いとはよく言ったもので、まるで口を返すことが出来なくなる。そこで助け舟を出してくれた者がいた。
「霊夢、その辺にしとけよ」
「そうよ。悪気があったわけではないのだし」
魔理沙と咲夜だ。さすがに暗基や小傘、ぬえがあまりにも不憫に思ったのだろうか、霊夢をなだめようとする。すると霊夢は魔理沙と咲夜の方に首だけをぐりんと回転させ、イライラMAXの顔を向ける。
「あんた達、私が睡眠を妨害されることが一番いやなことだと分かっていて、零たちをフォローしようとしてるのかしら?」
「ちがうさ。ここでいつまでも説教してたって、何一つ話が進まないじゃないか。だから、お前にはここらでやめてもらわないと困るんだ」
「魔理沙と同意見よ。何より見苦しいわ」
うん。全くもって勘違いだった。魔理沙と咲夜は暗基たちを心配しているのではなく、ただ単にこの場に耐えられなくなっただけだったのだ。
そして咲夜のその言葉を聞いたとき、霊夢の頭から面白い音が聞こえたような気がしたが、それも勘違いではなかった。霊夢はふるふると震えながら立ち上がり、咲夜をにらみつける。
「なんですって? もう一回言ってみなさいよ?」
「ずいぶんと耳が悪いのね? 博霊の巫女というのは」
「あー、なんでこうなるんだよ……」
霊夢と咲夜がすさまじい霊力を身体にまといながら、戦闘の構えを取る。魔理沙はそれをみて、本当にあきれたように頭を抱える。暗基は自分の能力の関係もあり、すさまじい吐き気を覚えた。
「霧の異変の時みたいに、あんたをズタズタにしてもいいんだけど?」
「あの時のように、そう上手くいくかしらね?」
どんどん周りの空気が悪くなっていく。それに比例するかのように暗基の顔色も悪くなっていく。
「ちょっ、2人ともやめてくれ……。能力の関係で吐きそうだ……」
「そこにぶちまければいいじゃない。邪魔しないでもらえる?」
「れ、霊夢……。魔理沙、この状況何とかできないか?」
「そういわれてもなぁ……。こうなっちまったら、もうこいつらは止まらない……。ケンカさせとこうぜ」
「うぅ、まじでおれ吐きそうなん、うっぷ……」
暗基はもう限界だった。そこに、本当に救世主が現れた。
「いい加減にしたらどうですか? お2人とも?」
その場にいる全員が、声のしたほうを向く。そこには、茶色へのグラデーションがかかった赤紫色の髪の女性がその場に立っていた。
「うっ、白蓮……」
「ぐっ……」
聖白蓮だった。聖の姿を見ると同時に、冷や汗を滝のように流しながら霊夢と咲夜は構えを下ろしてしまった。どうやら、あれだけぶち切れていた霊夢と咲夜が顔を真っ青にして構えを下ろしたあたり、聖を怒らせるのは、本当によろしくないらしい。実際、聖の顔からは全く怒りを感じなかったが、聖をまとっていた霊力が、明らかに下手をすると2人を殺しかねない霊力を発していたからだ。だがそれが、今このときだけは暗基の吐き気を抑えてくれた。本当に助かった。
すると聖が暗基の方を向き、先ほどと同じ笑顔をむけて話しかけてきた。
「貴方が暗基零さんですね? 私は聖白蓮と申します。この命蓮寺の住職をしております」
「あぁ、どうも……」
なぜだろう。聖の霊力が、暗基の心をどんどん癒してくれている。それこそ、この場でまた眠れそうなほどに。そして聖がまた声を出した。
「さぁ、ここで話すのもなんですし、一緒に朝食でもどうですか。ほら、皆さんも」
聖の一声が、その場にいた全員を動かした。困り果てた顔をしていた魔理沙も、聖の事を警戒しつつも睨み合っていた霊夢と咲夜も、最後まで恐怖でビクビクしていた小傘もぬえも、一斉に立ち上がって、部屋から出て行く。
「ほら、零さんも」
「あ、あぁ……」
そして聖に声をかけてもらい、暗基も朝食を取るために聖の後ろをついていった。
後書き
ということで命蓮寺での軽いいざこざでした。
そして、超個人的なアレですけど、聖さんのCVはS.F.さんがいいと思うんだ。
イニシャルはこの書き方であってんのかな?
ということで、次回、聖とお話をします。
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