小さな信頼
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5部分:第五章
第五章
ざわつきだ。それぞれ言うのだった。
「えっ、まさか」
「ゴリアテが倒れた!?」
「あの坊主の石でか」
「一撃でか」
「倒れたっていうのか」
「それだと」
ゴリアテが倒れた。つまりそれは。
「あの坊主が勝ったってのか」
「嘘だろ、石一つでゴリアテを倒したなんて」
「頭に当たっただけで」
「それだけで」
ヘブライの者達もペリシテの者達も唖然となっている。そしてだ。
ゴリアテ自身もだ。倒れながらだ。
唖然とした顔でだ。こう言うのだった。
「石一つで俺が倒されたのか」
「僕の勝ちだね」
その彼にだ。ダビデが告げた。
「そうだね」
「信じられない」
ゴリアテはそのダビデを前に言うのだった。
「俺がこんな小僧に負けるか」
「石だって当てる場所によれば巨人だって倒せるんだ」
ダビデはその彼にまた言った。
「こうしてね」
「糞っ、してやられたな」
「それでだけれど」
ダビデはゴリアテに対して言った。
「約束は覚えてるね」
「ああ、そうだな」
忌々しげに返す巨人だった。
「俺の負けだ。それだけじゃない」
「ヘブライの勝ちだって認めるね」
「認めるさ」
起き上がりながら応えるゴリアテだった。その厳しい顔が項垂れている。
「こうなったらな」
「じゃあここから引き下がるね」
「そうするさ」
また答えるゴリアテだった。
「こうなったらな。仕方ないさ」
「よし、じゃあそれでいいよ」
ダビデは満足した顔でゴリアテの言葉を受けた。
「僕もね」
「命があっただけでもよかったか」
ゴリアテはこんなことも言った。
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